みなさんこんにちは。予防審美専門歯科衛生士の井上ゆうです。
最近よく耳にする、「パウダークリーニング」や「ジェットクリーニング」。みなさんのクリニックでは、すでに行われていますか?
私たちが細心の注意を払っていても、ロビンソンブラシやラバーカップ、研磨剤を使用するPMTCでは、どうしてもエナメル質にダメージを与えてしまいます。
健全なエナメル質を守り抜くためにも、私たちはこれからより低侵略なメインテナンスを患者さんに提供していく必要があるのではないでしょうか。
この連載では、エナメル質へのダメージを減らすことができる「パウダークリーニング」の魅力について解説していきたいと思います♪
パウダークリーニングのマイナスイメージ
私がパウダーを使用する機器に出会ったのは、約10年前。その当時はタービンホースに接続する、いわゆる「ハンディータイプ」とよばれている機器でした。
当時使用していたのは、「炭酸水素ナトリウムのパウダーを歯面に吹きつけて着色を落とす」というもの。
このようなタイプのパウダーを体験したことがある方はご存じかと思いますが、 本音を言ってしまうと、これがかなりの曲者でした。
その理由は、以下の通りです。
- パウダーが口腔内だけにとどまらず、顔全体に飛び散ってしまう
- 炭酸水素ナトリウムの主成分は「塩」なので、顔に当たると痛い
- パウダーが粘膜に少しでも当たってしまうとさらに痛い上、一瞬で粘膜が切れて流血するため危険
- 粉詰まりが多い
- 補綴物や着色がつきやすい歯頸部付近に使えない
したがって私たち歯科衛生士からすると、ロビンソンブラシと研磨剤を使う方が操作性も良く、かつ安全に着色を除去することができました。
そのため、今でもパウダークリーニングに対して、あまり良いイメージをもっていない方も多いのではないかと思います。
パウダークリーニングのイメージを変えた「エリスリトール」
しかし!技術はどんどん進歩しています。
私の個人的な見解ですが、パウダークリーニングのイメージが大きく変わったのは2017年頃。その年は、EMSのアジア会議が東京で開催されました。
このアジア会議で、「エリスリトール」というパウダーが日本に初上陸したのです!
エリスリトールとは糖アルコールの一種で、キシリトールの仲間です。日本では食品添加物にも使用されており、コンビニのお弁当などでよく目にする成分です。
エリスリトールは粒子が小さくて硬いため、エナメル質や粘膜に対してより低侵襲かつ効率の良いアプローチが可能。歯面に付着した着色だけでなく、バイオフィルムも除去できるようになりました。
ちなみに、スイスデンタルアカデミーJAPAN代表の竹内素子先生によると、予防歯科の最先端をいく国スイスでは、メインテナンス時にロビンソンブラシやラバーカップを使用することは「禁止・禁忌」とされているそうです。驚きですよね。
これからの予防歯科において、「人体にとって低侵襲であること」が重要視されていると感じられる事例ではないでしょうか。
さまざまなパウダーの種類について解説!
それでは、現在日本で使用できるパウダーの種類について解説していきたいと思います。
メインテナンス時に使用できる主なパウダーは、以下の4つです。
- 炭酸水素ナトリウム
- 炭酸カルシウム
- グリシン
- エリスリトール
現在炭酸カルシウムのパウダーを使用する歯科医院は少なくなってきましたが、製品の販売は継続しているため、項目に入れています。
また、上記以外にも「酸化アルミニウム」というパウダーがありますが、こちらは切削専用のパウダーで、メインテナンスには使用できません。
簡単かつ大まかではありますが、それぞれのパウダーの用途は、以下のようなイメージです。
- 炭酸水素ナトリウム:強固な着色除去
- 炭酸カルシウム:中程度の着色除去
- グリシン:中程度の着色とバイオフィルムの除去
- エリスリトール:強固な着色からバイオフィルムまで除去可能
パウダーの種類だけでなく、粒径や形、パウダーを使う機器によっても、推奨する当て方や角度などがそれぞれ違います。
そのため、実際にパウダーや機器を使用する際は、取扱説明書と添付文書をかならず読み、各メーカーの指示にしたがって使いましょう。
いかがでしたか?
私は、これから日本でもパウダークリーニングが主流となる時代がくるのではないかと思っています。
この連載を読んで、低侵襲なメインテナンスを提案、提供したいと思う歯科衛生士の方が少しでも増えてくれると嬉しいです。
次回は、ハンディタイプの機器について詳しく解説します!お楽しみに♪