dStyleではじめるインプラント基礎講座 第2回 インプラントの構造と仕組み

こんにちは!歯科医師の遠藤眞次です。

インプラント治療に関するあなたのモヤモヤを解消する、dStyleではじめるインプラント基礎講座。第2回は「インプラントの構造と仕組み」についてお届けします。

前回の記事はこちら

第1回 インプラント治療への第一歩

第2回の前半では、インプラントの構造や、何百種類もあるインプラント体の違いについて詳しく解説。さらに後半では、インプラント体がどのように骨と結合するのかについてわかりやすくお伝えします。

患者さんから質問されることが多い内容なので、覚えておいて損はありません!

[目次]

1.なぜインプラント体は何種類もあるの?
① メーカーの違い
② 長さの違い
③ 直径の違い
④ 表面性状の違い
⑤ アバットメントとの接合様式の違い

2.インプラント体はどうやって骨とくっつくの?

なぜインプラント体は何種類もあるの?

前回の「インプラント治療への第一歩」では、インプラントは「インプラント体」「アバットメント」「上部構造」の3つのパーツからなることをお話しました。
(参照:dStyleではじめるインプラント基礎講座 第1回 インプラント治療への第一歩)

今回はその中の「インプラント体」と「アバットメント」について解説したいと思います。もう一つの「上部構造」については次回に詳しくお話しますね。

さて、世の中には何百種類というインプラント体があります。その違いはどこにあるのでしょうか?

主な違いは以下の5つです。

  1. メーカーの違い
  2. 長さの違い
  3. 直径の違い
  4. 表面性状の違い
  5. アバットメントとの接合様式の違い

① メーカーの違い

メーカーが違えば、もちろんインプラント体も違います。

インプラント体の2大メーカーは「ストローマン」と「ノーベルバイオケア」であるといわれていますが、まずは院内で使用しているメーカーのことだけ覚えれば十分です。

自院で使用しているメーカーが何かを把握することからはじめましょう。

② 長さの違い

現在、一般的に使用されているインプラント体の長さは6〜12mm程度です。長さを決定する時は、インプラント体を埋入する部位の骨の高さや硬さを参考にします。

長さによって、手術中に使用するドリルが異なる場合があるため、手術前に使用するインプラント体の長さを確認しておくと安心です。

③ 直径の違い

ここはすごく重要なので、ぜひ英語も含めて覚えてください

インプラント体の直径は、大きく分けて3つのタイプがあります。

インプラント体のタイプ 直径の太さ
ナロー(Narrow) 3mm程度
レギュラー(Regular) 4mm程度
ワイド(Wide) 5mm程度

インプラント体の直径は、主にインプラント体を埋入するスペースと咬合力によって決定されます。

たとえば、下顎前歯はスペースも狭く咬合力も比較的弱いので、ナロータイプを選択することが多いです。一方で、大臼歯はスペースも広く咬合力も強くかかるので、レギュラー〜ワイドタイプが多く使われます。

なぜ直径が重要かというと、インプラントのパーツを準備する際に、インプラント体の直径に合ったパーツを準備しなければいけないためです。

下の図は、実際にインプラント体に添付されているシールです。手術が終わったからといって捨てずに、どのインプラントを使用したか忘れないよう、カルテなどに貼って保管しましょう。

実際にインプラント体に添付されているシール。ストローマンのもの(左)と、ノーベルバイオケアのもの(右)

左のシールには「RC」という記載があります。これは「Regular CorossFit」の略で、レギュラーサイズのインプラント体であることを示しています。

右のシールには「NP」という記載があります。これは「Narrow Platform」の略で、ナローサイズのインプラント体であることを示しています。

ストローマンでは、RCにNCのパーツは使えません。ノーベルでもNPにRPのパーツは使えないため、注意が必要です。

④ 表面性状

「表面性状」とは、インプラント体表面がどのような構造になっているかということです。表面性状は各メーカーでさまざまですが、大きな違いが2つあります。

その違いとは、表面がザラザラしているかツルツルしているかです。

マシーンド・インプラント・サーフェイス(上段)とラフ・サーフェイス(下段)(画像は『Clinical oral implants research』*1より引用)

ツルツルしている表面を「マシーンド・インプラント・サーフェイス」(図上段)といい、ザラザラしている表面を「ラフ・サーフェイス」(図下段)といいます。

上段と下段の右の画像を見比べると、表面性状の違いがよくわかります。

初期のインプラント体はツルツルでしたが、表面がザラザラしている方が骨とくっつきやすいことが発見され、現在ではラフ・サーフェイスのインプラント体が主流になってきました

ただ、骨とくっつきやすい分、汚れもよくくっつきます。一度歯槽骨の外にラフ・サーフェイスの部分が出てしまうと清掃性が悪く、インプラント周囲炎になってしまった場合にはリカバリーが大変です。

そのため、ラフ・サーフェイスとマシーンド・インプラント・サーフェイスを組み合わせた製品も存在します。

そのような製品では、汚染されやすい歯肉側(インプラント体の上の方)がマシーンド・インプラント・サーフェイス、根尖側(インプラント体の下の方)はラフ・サーフェイスになっています。

また、表面性状の違いにより、インプラントを埋入する深さも変わります。すべてラフ・サーフェイスのものは、インプラント体全体を骨の中に埋入します。このようなインプラント体を「ボーンレベル」といいます。

一方でマシーンド・インプラント・サーフェイスを有するインプラント体は、インプラント体の一部を骨の外に位置するように埋入します。このようなインプラント体を「ティッシュレベル」といいます。

ティッシュレベル(左)とボーンレベル(右)

⑤ アバットメントとの接合様式

上部構造を装着する際は、インプラント体にアバットメントがはまります。そのはまり方を「接合様式」といいます。

接合様式は、主に以下の3つに分けられます。

  • エクスターナルジョイント
  • インターナルバットジョイント
  • コニカルコネクション
左から順にエクスターナルジョイント、インターナルバットジョイント、コニカルコネクション(図は『The International journal of oral & maxillofacial implants』*2より引用)

画像の左端がエクスターナルジョイント、左から2番目がインターナルバットジョイント、左から3番目がコニカルコネクションです(今回右端については省略します)。

接合様式の異なるパーツを用意してしまうと、インプラント体にはまりません。手術に使用するインプラント体の接合様式を事前に調べ、準備したパーツが正しいか確認すると良いでしょう。

インプラント体はどうやって骨とくっつくの?

埋入したインプラント体がどうなっているのか、疑問をもった方はいませんか?その答えは「オッセオインテグレーション」にあります。

オッセオインテグレーションとは「光学顕微鏡レベルで骨とインプラント体表面が軟組織を介在せずに接触維持する様相」と定義されています。

ここでは単純に「インプラント体と骨が直接結合する」と考えても差し支えありません。インプラント体は生体親和性が高い材料で作られているため、身体がインプラント体を受け入れ、骨と直接結合するのです。

ちなみに「生体親和性が高い」とは、身体に優しく、体内に入れたとしても身体となじむ材料のこと。インプラント治療では、チタンやハイドロキシアパタイト(HA)が代表的です。

インプラント体(黒い部分)と骨(紫の部分)が結合していく様子(画像は『Periodontology 2000』*3より引用)

上の画像は、インプラント体(黒い部分)と骨(紫の部分)が結合していく様子を表したものです。

左から右へ時間が経つにつれて、骨の量が増え、インプラント体としっかりと結合していくのがわかります。

インプラント体を埋入した直後は、インプラント体のスレッド(ネジ山)が骨に食い込むことで固定されます。その後、時間が経つにつれて周囲の骨が成熟し、オッセオインテグレーションを獲得していくのです。

まだまだ続きます!

今回はインプラント体の種類についてとオッセオインテグレーションについて解説しました。

次回は「インプラントの固定方法とそれぞれのメリットデメリット」についてお送りします。お楽しみに!

参考文献:
*1 Enrico C, Maria M, Giambattista R, et al. The role of surface implant treatments on the biological behavior of SaOS-2 osteoblast-like cells. An in vitro comparative study. Clinical oral implants research. 2013 Aug;24(8):880-9.
*2 Yuya S, David LC. Implant-Abutment Connections: A Review of Biologic Consequences and Peri-implantitis Implications. The International journal of oral & maxillofacial implants. 2017 Nov/Dec;32(6):1296-1307.
*3 Dieter DB, Vivianne C, Daniel B. Osseointegration of titanium, titanium alloy and zirconia dental implants: current knowledge and open questions. Periodontology 2000. 2017 Feb;73(1):22-40.

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