歯科医師会に入会するメリット・デメリット・費用を徹底解説!【2020年保存版】

みなさんは「歯科医師会」と聞いて、何を思い浮かべますか?

歯科医院を開業している院長先生であれば、歯科医師会に入会しているという方も多いのではと思います。その一方で、勤務している方々にとっては、歯科医師会を身近に感じる機会は、開業医ほど多くないかもしれません。

そもそも歯科医師会とは、歯科医師にとって、また国民や社会にとってどのような存在なのでしょうか。

今回は、歯科医師会の設立目的や事業内容、また歯科医師会が災害などの非常時においてどのような対策を行っているのかなど、歯科医師会にまつわるさまざまなことをお調べしました。

[目次]
1.歯科医師会の種類
2.日本歯科医師会に入会するには?
3.歯科医師会の入会にかかる費用
4.日本歯科医師会に入会するメリットは?
5.都道府県歯科医師会や郡市区歯科医師会に入会するメリットは?
6.歯科医師国保とは?
7.歯科医師会に入ってない歯科医院はどうなるの?
8.災害時における歯科医師会の役割

1.歯科医師会の種類

歯科医師会には「日本歯科医師会」と呼ばれる統括団体、都道府県ごとの団体、都市区ごとの団体といった3種類の組織が存在します。

歯科医師会の種類

日本歯科医師会は、1903年に歯科医師の身分や業務を確立する歯科医師法の制定を目指し「大日本歯科医会」として設立された、会員数64,788名の歴史ある団体です。
(参照:日本歯科医師会の紹介-日本歯科医師会

発足当時は法律により強制設立・強制加入の団体でしたが、戦後の1947年に任意設立・任意加入の社団法人となりました。その後2013年に公益社団法人に移行し、現在にいたります。

日本歯科医師会の事業には、会員を対象とした事業と国民を対象とした事業の2種類があります。

会員を対象とした事業には、最新の歯科知識や技術を得るための学術関係事業に加え、クリニックに掲示する資料や、歯科検診などの具体的な指針を作成するといった公衆・産業歯科衛生関係の事業があります。

ほかにも、FDI世界歯科連盟に加盟して国際歯科社会との緊密な交流を行ったり、診療報酬などの医療保険制度や社会保険診療にかかわることも、日本歯科医師会の事業のひとつです。

そして、国民を対象とした事業には、「8020運動」や「歯と口の健康週間」など、国民の健康と福祉の増進を目的とした事業があります。

さらに国民に良質な歯科医療を円滑に提供するために、中央社会保険医療協議会(中医協)や社会保障審議会部会などで、診療報酬についての意見発表や財源に関する提案を行っています。

そして、それらの結果を迅速かつ正確に情報を取りまとめて周知を行っています。また、厚生労働省の求めに応じて行政指導に立ち会い、教育的指導になるよう当局と意見交換も行っています。

ほかにも日本歯科医師会ホームページにおける「テーマパーク8020」や「日歯8020テレビ」を通して、国民が求める歯科関連情報を継続的に発信しています。加えて、テレビやCMなどでも歯と口の健康の重要性についてのPR活動を行っています。

これらの活動に加えて、現在、大規模災害時に必要となる救急歯科保健医療および身元不明遺体の確認作業のための人的資源の確保とネットワークの整備も進めています。

また、より多くの歯科医師が身元不明遺体の確認を行う警察歯科医として社会に貢献できるよう、専門性を高めるための研修会も行っています。

2.日本歯科医師会に入会するには?

所属する歯科医師だけでなく、国民や社会に対してさまざまな事業を行っている日本歯科医師会ですが、実際に会員になるにはどうすればよいのでしょうか。

現在、日本歯科医師会の会員は正会員と準会員に大きく分けられ、就業形態に応じた会員種別があります。そして会員種別によって入会手続きは異なります。

歯科診療所などの医療機関に就業している歯科医師は、正会員(第1種または第2種)として入会することができます。ただし、第2種として入会する場合は、同一診療所内に第1種の会員が1名以上在籍していることが要件となります。
(参照:入会案内-日本歯科医師会

次に、公務員の歯科医師、大学病院などの医育機関・病院・介護老人保健施設などに就業しており、診療所を開業していない歯科医師は、正会員(第2種)として入会できます。

第1種または第2種のどちらの場合も、まずは就業している歯科医療機関所在地の都道府県歯科医師会および郡市区歯科医師会に正会員として入会し、そのうえで都道府県歯科医師会を通じて日本歯科医師会への入会手続きを行います。

そのため日本歯科医師会の入会金、年会費とは別に、都道府県歯科医師会および郡市区歯科医師会の入会金・会費やその他の費用が必要となります。

また、公務員の歯科医師、大学病院などの医育機関・病院・介護老人保健施設などに就業し開業していない歯科医師のうち、正会員(第2種)としての入会を希望しない方や、研究機関に勤務し、診療に従事していない歯科医師は、準会員(第3種)として入会することができます。

ただし準会員(第3種)は日本歯科医師会直轄の扱いになるため、入会を希望する場合、日本歯科医師会から入会申込書を直接取り寄せる必要があります。

なお、臨床研修中の歯科医師は、準会員(第6種)として入会することも可能です。

この場合、入会金のみが必要で年会費は不要であるうえ、翌々年度まで会員籍を継続できるところがメリットです。ただし第6種の準会員は、入会期間が臨床研修に入った年度に限定される点には注意が必要です。

日本歯科医師会の会員種別ごとの入会金、年会費は以下の通りです。

正会員 準会員
第1種 第2種 第3種 第6種
入会金 10,000円 10,000円 10,000円 5,000円
年会費 38,000円 19,000円 12,500円

会員種別ごとの入会金、年会費(引用:日本歯科医師会 公式HP)

3.歯科医師会の入会にかかる費用

先ほど、日本歯科医師会に正会員(第1種または第2種)として入会するには、あらかじめ都道府県歯科医師会と郡市区歯科医師会にも入会しておかなければならないと説明しました。

では、都道府県歯科医師会と郡市区歯科医師会の入会にかかる費用はいくらでしょうか?

例として、東京都歯科医師会と東京都文京区小石川歯科医師会のホームページを見てみましょう。

都道府県歯科医師会と郡市区歯科医師会の入会にかかる費用

東京都歯科医師会の会員種別ごとの入会金、年会費は以下の通りです。
(参照:入会のご案内-公益社団法人 東京都歯科医師会

第1種 第2種
入会金 150,000円 10,000円
年会費 56,000円 30,000円

東京都文京区小石川歯科医師会の会員種別ごとの入会金、年会費は以下の通りです。
(参照:入会のおすすめ-小石川歯科医師会

第1種 第2種
入会金 200,000円
年会費 115,600円 57,800円

東京都文京区小石川で開業する歯科医師が、正会員(第1種)として日本歯科医師会、東京都歯科医師会、東京都文京区小石川歯科医師会に入会する場合、入会金と年会費で合計569,600円が必要です。

さらに、所属する歯科医師会によっては、各歯科医師会への入会金、年会費に加えて、事務処理負担金、医事処理負担金、任意で加入する各種共済や年金の保険料など、さまざまな名目の費用が必要となることがあります。

4.日本歯科医師会に入会するメリットは?

会費こそかかりますが、歯科医師会の会員になることには大きなメリットや価値があります。

それでは、日本歯科医師会が行っている活動や会員に対するサポートについて見ていきましょう。

日本歯科医師会では、会員が知識や技術の向上を図れるよう、日歯生涯研修事業を実施し、学術的なサポートを行っています。内容としては、会員向け生涯研修セミナーの実施、日歯生涯研修ライブラリーの制作、日本歯科医師会雑誌の発行などがあります。

そして会員は生涯研修登録システム(Eシステム)から、バックナンバーも含めてこれらすべての情報を、オンラインで閲覧、受講できます。

このオンラインシステムにより、育児や家事、介護などで研修会に足を運ぶことが困難な会員も、日歯生涯研修事業の単位取得が可能です。

なお、この日歯生涯研修事業では、所定の単位を取得し、認定条件を満たした会員に対して、生涯研修事業「修了書」または「認定証」および「院内掲示用ステッカー」を交付しています。

これにより、会員本人に歯科医療に対する知識と技術の向上をもたらすだけでなく、そのことを自らのクリニックの患者さんや地域住民の方々にアピールできることも、日本歯科医師会の魅力といえるかもしれません。

さらに、都道府県歯科医師会の協力のもと、感染症予防講習会や産業歯科医研修会、産業医学講習会などを毎年開催しています。そのため、最新の保険診療や歯科医療関係の法令、歯科医療全般にかかわる正確な情報を、いち早く入手することができます。

これらの情報を日本歯科医師会雑誌、日歯広報、メールマガジン、会員向けホームページ、Eシステムなど、さまざまな媒体を通して入手できることも魅力のひとつです。

また、会員のための福利厚生事業として、「日歯福祉共済保険制度」や「日歯年金保険制度」を設けています。日歯福祉共済保険制度は、災害や火災により会員の歯科医院などが全壊、流失、全焼した場合に給付金によって復旧を支援する制度です。

そして、会員が死亡または重度の障害により歯科医師免許を返納して退会する場合にも、保険金が給付されます。そのため、現在日本歯科医師会会員のほとんどを占める、約60,000人以上の会員がこの制度に加入しています。

日歯年金保険制度は、会員と家族の生活を安定させることを目的とした制度です。65歳から受給が開始される終身年金であり、現在約30,000人以上の会員が加入しています。

このように、日本歯科医師会は、日歯生涯研修事業や研修会・講習会だけでなく、日歯広報やEシステムなど自らのメディアを通して、さまざまな角度から会員の医学研鑽を支えています。

なおかつ福利厚生事業を通じて、会員の歯科医院経営者としての生活をもサポートしており、もはや開業している歯科医師にとっては、日本歯科医師会は生涯のパートナーになり得るといっても過言ではないでしょう。

日本歯科医師会に入会するメリットまとめ

● 日歯生涯研修事業などのセミナーに参加できる
● 同会の研修のオンラインシステムが利用できる
● 最新の保険診療に関する正確な情報を受けられる
● 歯科に関する法令等を学べる
● 日歯福祉共済保険制度や日歯年金保険制度に加入できる

5.都道府県歯科医師会や郡市区歯科医師会に入会するメリットは?

都道府県歯科医師会や郡市区歯科医師会のもっとも重要な事業として、地域保健医療活動への積極的な参加を行っています。

会員は、区市町村の保健センターまたは保健所において実施される各種歯科健康診査への参加や歯科相談への対応を行います。具体的には、妊婦歯科健診や歯周疾患検診、1歳6ヶ月児・3歳児歯科健診などです。

また地域の保育園や企業・事業所、さらに幼稚園や小・中・高等学校では、学校歯科医として、歯科健診や口腔保健指導を行います。

ほかにも後期高齢者を対象とした歯科健診や在宅療養者に対する訪問歯科健診、当番制による休日や夜間の歯科応急診療なども、歯科医師会会員の活動のひとつです。

加えて、歯や口の健康に関連した、住民参加型のおまつりや教室などの色々なイベントを開催するのも、都道府県歯科医師会や郡市区歯科医師会の大切な仕事です。

もちろんこれらの活動はボランティアではなく、それぞれの活動に対して一定の手当てを受け取ることができます。とはいえ、会員として地域の歯科健診や休日・夜間診療に従事することで、いくらかの時間的拘束を受け、自身の歯科医院の診療時間に多少の影響が出てしまう点は否めません。

しかしながら、これらの仕事は、地域の住民や子どもたちと接する貴重な機会であり、会員である歯科医師自身、そして自身の経営する歯科医院に対する、地域からの認知と信頼が得られるのは最大のメリットといえます。

なお、都道府県歯科医師会の正会員が所属する歯科医院は、地域住民が安心して口腔健康管理を任せられる歯科医院として各都道府県歯科医師会のホームページの一覧に掲載されており、一般の人々が検索することができます。

次なるメリットとしては、都道府県歯科医師会や郡市区歯科医師会が主催するさまざまな講習会、研修会に参加できることが挙げられます。これにより、臨床現場や歯科医院経営で直面する問題について理解を深めることができます。

具体的には、医療保険制度や診療報酬改定、行政指導などについての保険講習会、地域の大学歯学部と共催の学術研修会、税務講習会や医事処理講習会など、開業医としての必須スキルが学べる研修会が随時開かれています。

さらに、歯科医院経営において税務的、法律的なトラブルに遭遇しないよう、都道府県歯科医師会嘱託の税理士、弁護士によるサポートを受けることも可能です。

また、障害がある患者さん、介護が必要な患者さんなどが来院され、一般的な歯科診療を行うのが困難な場合、都道府県歯科医師会や郡市区歯科医師会が運営している口腔保健センターなどに紹介することができます。

口腔保健センターとは、各地域において、障害者や要介護者など特別なサポートが必要な患者さんへの歯科治療、口腔衛生管理を主に行っている施設です。

なお歯科医師会が設立、運営しているのは、口腔保健センターだけではありません。地域によって異なりますが、歯科衛生士や歯科技工士のための専門学校を運営している歯科医師会もあり、歯科医療従事者の育成、輩出という重要な役割を担っています。

これにより、歯科医師会に所属する歯科医院が優秀な人材を得られるだけでなく、専門学校に通う学生自身にとってもさまざまなメリットがあります。

たとえば、入学金や授業料などの学費が安いことや、歯科医師会会員である歯科医師の直接指導が受けられること、就職率がほぼ100%であることなどが挙げられます。

さらに、都道府県歯科医師会や郡市区歯科医師会が設けているさまざまな福利厚生制度の恩恵を受けられることも、メリットとして挙げられます。

たとえば、取り扱いされている保険会社の生命保険や医療保険、歯科医師賠償責任保険や所得補償保険などに加入すると、団体割引が適用されます。また融資制度があり、歯科医院の開業や経営、医療機器購入や改装などで資金が必要な時は、各種融資を受けることができます。

加えて、都道府県歯科医師会会員であることによって所定の条件を満たしていれば、歯科医師国保に加入することも可能です。

都道府県歯科医師会や郡市区歯科医師会に入会するメリットまとめ

● 地域の公衆衛生事業に参加できる
● 税務や保険講習会、学術講習会に参加できる
● 障害者診療の連携・研修ができる
● 経営や法律について相談に乗ってもらえる
● 福祉総合保険や所得補償などの福利厚生が受けられる

6.歯科医師国保とは?

歯科医師国民健康保険制度のことであり、歯科医院で働く歯科医師や歯科衛生士、歯科技工士、歯科助手などのスタッフやその家族が、被保険者として加入できる医療保険制度のことです。

歯科医師国保は、栃木県、山梨県などの計20府県の支部からなる「全国歯科医師国民健康保険組合」、または前述の20府県以外の各都道府県の「歯科医師国民健康保険組合」が保険者となり、運営を行っています。
(参照:歯科医師国保徹底解説!保険の比較・もらえる給付金一覧

歯科医師として歯科医師国保に加入するには、都道府県歯科医師会の会員であり、なおかつ住所が規約に定められた地区内にあること、もしくはそれらの条件を満たす歯科医師が開設または管理する診療所に勤務し、住所が規約に定められた地区内にあることが求められます。

歯科医師国保に加入すると、病気・ケガ・出産・死亡の場合に必要な保険給付を受けられるだけでなく、保健事業として行われている節目健診やがん検診、予防接種費用の補助、また医療費通知の送付などを受けることができます。

歯科医院の所在地により、その地域を管轄する歯科医師国民健康保険組合が異なるうえ、歯科医師国保加入の条件や保険の内容も変わります。

そのため就職・転職などで新たに歯科医師国保加入を検討される場合は、就職先の歯科医院に直接問い合わせて確認することをおすすめします。

7.歯科医師会に入ってない歯科医院はどうなるの?

ここまで日本歯科医師会、都道府県歯科医師会、郡市区歯科医師会それぞれの事業内容や費用、入会するメリットについて説明しました。

しかしながら、最近はさまざまな事情から、歯科医師会に入っていない歯科医師が増えているのも事実です。

それでは、歯科医師会に入ってないとどのような問題が生じるのでしょうか。

最大のデメリットは、地域における医療ネットワークにアクセスしづらくなることです。

たとえば、歯科医師会会員である場合は、自院の患者に必要な歯科治療が自分の持っている知識もしくは技術の範囲を超えていた場合に、同じく歯科医師会会員である知り合いの歯科医師に、大きな抵抗なく紹介、治療依頼をすることができます。

しかし、自分が歯科医師会会員でない場合は、歯科医師会を通じた歯科医師同士のつながりがないため、診断、治療に難渋している自分の患者をどの歯科医院に紹介すべきか判断するのは容易ではありません。

このことは会員でない歯科医師だけでなく、結果的にその患者さん自身が最適な歯科治療をスムーズに受けられず、不利益をこうむる可能性が高くなります。

ほかにも、歯科医師会が行っている各種歯科健診や活動を通じた地域医療への貢献ができず、地域住民や地域の歯科医院とのつながりが希薄になることや、医療保険制度や税務、地域のネットワークにおける最新情報を入手し、適切なアドバイスやサポートを受ける機会を失ってしまうことが挙げられます。

8.災害時における歯科医師会の役割

1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災をはじめ、日本は古くから絶えず地震や台風、豪雨災害など多くの天災に見舞われています。

そんな中、日頃の患者さんに対する歯科治療・口腔管理だけでなく、災害時にこそ歯科医師が歯科医師会の会員として社会に役立てることが数多くあります。

まず、災害時における被災者の口腔ケアが、歯科医師会会員が果たすべき重要な仕事として挙げられます。
(参照:災害歯科医療対策について-日本歯科医師会

被災者は水などのライフラインが切断され、避難所で不自由な集団生活を強いられる中で、うがいや歯磨き、入れ歯の洗浄がしたくてもできない状況となり、結果的に口腔ケアが後回しになってしまいます。

しかしながら、適切な口腔ケアができないとむし歯や歯周病が悪化するだけでなく、口腔内が不潔になることにより誤嚥性肺炎という命の危険にもつながります。

また紛失や破損により入れ歯を使えない場合や、むし歯や歯周病がひどく悪化した場合は、通常通り噛めないことから限られたものしか食べられず、栄養が偏ってしまいます。

そのため、災害時にいかに口腔ケアができるかが、被災者の口腔だけでなく全身の健康を保てるか否かを左右するといえます。

次に、甚大な災害が発生した場合は、歯科医師会が口腔顎顔面外傷に対する応急処置や病院搬送を行います。

また、多数の死者を生じた場合は、身元不明遺体に対して歯科所見と生前の歯科診療情報を照合・鑑定することで身元確認を行います。

実際に、2011年の東日本大震災では、のべ約2,600名の歯科医師が過酷な身元確認作業に従事し、約8,750体ものご遺体の身元確認に貢献しました。
(参照:歯科医師の仕事 警察歯科医-日本歯科医師会 テーマパーク8020

また、近年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防対策においても、各歯科医師会団体はさまざまな取り組みを行っています。

具体的には、日本国民に対して、歯科医療現場では感染防御対策を徹底しており、2020年4月末時点では新型コロナウイルス感染は報告されていないこと、不要な歯科治療は存在せず、歯科治療の緊急性については患者自身で判断せず歯科医に相談すべきであること、高齢者や要介護者に適切な口腔管理がなされないと誤嚥性肺炎のリスクが高まること、などを日本歯科医師会としてテレビのニュース番組と新聞を通じて訴えました。
(参照:歯科医師のみなさま 新型コロナウイルス感染症について-日本歯科医師会

また歯科医師に対しては、日本歯科医師会ホームページに、新型コロナウイルス感染症についての特設ページを設け、歯科医師が正確な情報をいち早く共有できるよう、歯科医療機関としてとるべき体制や対応、また厚生労働省からの各種通知など最新の情報を見やすくまとめて掲載しています。

ほかにも、神奈川県歯科医師会では2020年5月に、ホームページや新聞、YouTubeにおいて、県民に向けた「7つのお願い」を発表しました。
(参照:人々に「正しい情報」を、歯科医院に「新しい診療様式」を 神奈川県歯科医師会-WHITE CROSS

具体的には、以下の内容です。

  1. マスクをしてください
  2. 手を洗ってください
  3. 無理をせず、家で休んでください
  4. うがい・歯みがきをしてください
  5. むし歯を放っておかないでください
  6. メインテナンスは継続してください
  7. かかりつけ歯科医に相談してください

①から④は政府が発表している「新しい生活様式」に沿った内容で、⑤から⑦は歯科医療従事者として発信するべき内容といえます。

この「7つのお願い」は、これら一般市民に伝えるべき内容がシンプルかつわかりやすい言葉で、7つの項目にまとめられている点が大変意義深いといえるでしょう。

さらに神奈川県歯科医師会は、歯科医療従事者に向けた「歯科医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応指針」を作成しており、2020年7月現在、最新版であるVer.5が配信されています。

そこには歯科の「新しい診療様式」が定められており、次の内容で構成されています。

  1. 歯科医療従事者一人ひとりの基本的感染対策
  2. 歯科診療を行う上での基本的診療様式
  3. 歯科診療の各場面の診療様式
  4. 働き方の新しいスタイル
  5. 県民へのメッセージ

この配信では、写真や図表も多く用いられており、これを読んだ歯科医療従事者が、間違えることなく適切な感染対策を行えるように配慮されています。

出典_歯科医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応指針 Ver. 5(別冊)
出典:歯科医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応指針 Ver. 5(別冊)

また来院患者対応チャートも掲載されており、これを導入することで、どの歯科医療機関でも適切な患者対応と診療内容に応じた感染防止策を行えるように工夫されています。

これら「7つのお願い」と「歯科医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応指針」は、新型コロナウイルス感染症を「正しく恐れること」について、一般の患者と歯科医療従事者の双方に示したものであり、革新的かつ社会的価値が大きい取り組みといえます。

出典:事業案内-日本歯科医師会
入会のご案内-東京都歯科医師会

***

今回は、各歯科医師会の具体的な事業内容や費用だけでなく、地震や豪雨などの災害時、そして現在のコロナ禍において各歯科医師会が行っている取り組みについて紹介しました。

このように、歯科医師会は歯科医師のためだけの団体ではありません。

歯科医師会は、日本国民に対して、口腔の健康にかかわる正しい情報をわかりやすく提供し、良質な歯科医療を適切な形でスムーズに届けることにこそ、最大の意義があります。

個々の歯科医師や歯科医院で社会に情報発信するには限りがあります。

歯科医師会という大きな団体として活動に取り組み、歯科医療を通じて、社会全体により大きな価値を提供してみませんか?