アニメ「はたらく細胞」で体のしくみを学ぼう

こんにちは。歯科衛生士の長内です。

みなさんは「はたらく細胞」というアニメをご存じですか。

私たちの体は、当たり前のように息を吸ったら吐き、食事をしたら排泄します。傷ができたら、いつの間にか治癒し、髪もムダ毛も抜けては生えてきますよね。

これらは、私たちの体内で約37兆個(体重によって異なる)の細胞たちが、昼夜問わずそれぞれの役割を担って働いてくれているからなのです。

そんな細胞たちの働きを擬人化し、コミカルに描いている人気のアニメ、「はたらく細胞」。

今回は劇場版『「はたらく細胞!!」最強の敵、再び。体の中は“腸”大騒ぎ!』を、歯科衛生士目線で見てとても勉強になったので、みなさんにもご紹介したいと思います。

映画の詳細はこちら:「はたらく細胞!!」最強の敵、再び。体の中は“腸”大騒ぎ!-映画.com

● 腸内フローラの世界
● がん細胞と戦う免疫系細胞の役割

腸内フローラの世界

映画では、胃から大腸が舞台になっています。

ある日、白血球(好中球)は、迷子になった乳酸菌を保護した一般細胞と出会います。

乳酸菌を仲間の元へ届けるために、一般細胞と白血球(好中球)が共に大腸まで旅をするロードムービーになっています。

活性化する前の乳酸菌とそれを助ける一般細胞(引用:MOVIE WALKER PRESS)
活性化する前の乳酸菌とそれを助ける一般細胞(引用:MOVIE WALKER PRESS)

ご存じの通り、「善玉菌」とは人体の健康に有益な働きをする菌の俗称で、乳酸菌やビフィズス菌などが有名です。

乳酸菌の一部には胃酸に強く、ピロリ菌の活性を抑える性質を持つものもいれば、プリン体を人間が吸収しにくい形に分解してくれる性質のものもいます。

健康な人の場合、腸内では善玉菌が20%、悪玉菌10%、日和見菌が70%程度の割合で存在するといわれています。

いつもこのバランスが保たれていれば体は快調なのですが、実は腸内フローラ(腸内細菌叢)では、いつも陣取り合戦が行われているのです。

特に興味深い場面は、日和見菌には悪玉菌と善玉菌の優勢な方に味方をする特性があり、状況によってころころ態度を変える日和見菌の八方美人さが描かれているところです。

腸内環境を善玉菌優位に整えるには、サステナブルな乳酸菌の摂取が大切ということの意味が理解できます。

工場に見立てられた大腸(引用:月刊少年シリウス編集部の投稿-Twitter)
工場に見立てられた大腸(引用:月刊少年シリウス編集部の投稿-Twitter)

映画でも再開!がん細胞と戦う免疫系細胞の役割

旅の途中、白血球(好中球)は望まない敵と再開します。

アニメでもしばしば登場する「がん細胞」です。

白血球は、がん細胞やウイルスを駆除するためにパトロール中のNK細胞とキラーT細胞と力を合わせ戦います。

ところが、腸内の悪玉菌から出る毒素を栄養とし、がん細胞の力はどんどん強くなっていきます。

最終的には、一般細胞が腸内まで届けた乳酸菌がきっかけとなり、善玉菌が優勢になります。

その結果、日和見菌たちが善玉菌側につくと、栄養の供給が少なくなったガン細胞の勢力が弱くなり、免疫細胞たちが力を合わせて戦うシーンが見せ場です。

免疫細胞の中でも、白血球、NK細胞、メモリーT細胞と、細胞によって仕事内容は細かく分かれており、白血球だけではがん細胞には勝てないのです。

そのため、免疫細胞は、一緒に力を合わせて細菌やウイルスと戦い、私たちを救ってくれるのです。そして、腸内環境の影響が、免疫にも関係することがわかります。

左から、NK細胞、白血球(好中球)、メモリーT細胞(引用:MOVIE WALKER PRESS)
左から、NK細胞、白血球(好中球)、メモリーT細胞(引用:MOVIE WALKER PRESS)

まとめ

歯科においても、「マクロファージ」や「サイトカイン」などの言葉をよく耳にします。

ちょっと難しくてわかりにくいなと感じている方には、“はたらく細胞”を一度読んでみることをおすすめします。

この作品では、他にもさまざまな細胞やウイルス、細菌たちが登場し、体の中で何が起こっているのかが、とてもわかりやすく学べます。

私はこの作品を知るまで、歯周病は歯科衛生士の力で治るものだと思っていました。

SRPやデブライドメントで口腔環境を綺麗にし、プラークコントロールを患者さん自身に頑張ってもらえばいいのだと。

でも、実際には細菌が体内に悪影響を及ぼさないように、常に細胞たちが戦ってくれている。破れた血管は血小板たちが必死に治癒してくれている。

その細胞たちが働きやすい環境にするために、私たち歯科衛生士は歯石を取り、プラークを減少させる。あとは、その人自身の細胞たちの出番になるということを知りました。

歯周治療でも、歯石はしっかり除去できたのに、なかなか出血が治らない症例や、プラークコントロールは良好なのに、炎症が治りにくい症例に出くわしたことはないでしょうか。

もちろん、全身疾患や薬の服用、咬合なども考えなければいけません。しかし今回、乳酸菌の力で強敵のがん細胞に打ち勝てたように、口内フローラの観点からアプローチしてみることも大切です。

口腔内の善玉菌を増やす方法として、ロイテリ菌やL8020などのヨーグルトやタブレットがあります。

プロバイオティクスで体内の環境を整え、自身の体の声を聞くことが、健康のためには重要です。

私は、患者さんにも自身の体のことを理解してもらうために、以前からこの「はたらく細胞」を読んでもらうことをすすめてきました。

子どもから大人まで楽しめる漫画なので、読んでもらえた方には指導が容易に行えるようになりました。

また、はたらく細胞には、医療監修も入っていて、著書監修のスピンオフ作品も出ているので、多岐にわたって楽しめます。

いつかPg菌やミュータンス菌が、口腔内でどんな風にキャラクターを演じてくれるのか観てみたいと期待しています。

「はたらく細胞!!」最強の敵、再び。体の中は“腸”大騒ぎ!(引用:映画.com)
引用:映画.com