お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編

こんにちは、お砂糖博士®︎です。おさトーークの時間がやってまいりました。

このコラムでは、皆さんの身近な「お砂糖」について、お砂糖博士®︎が自由に語ります。

お砂糖をとり過ぎ→ムシ歯は小さな子どもだって知っていますが、

「お砂糖の摂り過ぎ→むし歯」は小さな子どもだって知っていますが、もう一歩二歩深いお砂糖のお話をお伝えしたいと思います。

明日の臨床に直接役に立つかは分かりませんが、お昼休みの雑談くらいには役に立つでしょう(笑)。

砂糖摂取量を減らす鍵

前回のお話では、WHOが推奨する一日の砂糖摂取量が25gであるものの、現在の日本では38.6gと、まだまだ多い状況だとお伝えしました。

前回の記事はこちら:No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?

今回は、砂糖について学びながら「う蝕の多い患者さんの砂糖摂取量をどのように減らせば良いのか?」について考えていきたいと思います。

その前に、まず第一に押さえておきたいポイントは「砂糖は、砂糖だけをそのまま食べる人はほとんどいない」ということです。

だって、あなたの家族の誰かが、キッチンで調味料ケースから直接砂糖を食べていたら…?迷わず止めますよね(笑)。

それでは、私たちは砂糖をどのように消費しているのでしょうか?

国内の砂糖の用途別消費量を見てみましょう。
(参照:令和2砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し-農林水産省 

まず注目していただきたいのは、「家庭用」。すなわち、家に置いてある調理用の砂糖消費量は全体の10.8%というところです。

逆に考えると、残りの89.2%の砂糖は「加工食品」で消費されているということになります。

ここで、さらに注目していただきたいのは加工食品である「菓子類26.2%・清涼飲料18.1%・パン類10.8%」。合計して、55.1%の砂糖が消費されているということになります。

結論を言いますと、砂糖摂取量を減らすためには、家庭内で作った食事を食べ、加工食品の摂取を減らすことが重要なポイントです。

そこで今回から3回にわたり、加工食品の特集を組みたいと思います。

砂糖消費量の55.1%を占める菓子類・清涼飲料・パン類について、それぞれ思うことをお話ししていきます!

菓子界で大人気のチョコレート

さて今回は、砂糖消費量26.2%と堂々第一位の「菓子類」について。そして、その中でも大人気の「チョコレート」を特集します。

「ドキッ!チョコレート?私も大好き」という読者の方も多いのではないでしょうか?

 それでは、日本の菓子類の内訳をみてみましょう。

日本チョコレート・ココア協会より引用
引用:日本チョコレート・ココア協会HP

菓子類は、飴菓子、チョコレート、チューインガム、せんべい、ビスケット、米菓、和生菓子、洋生菓子、スナック菓子、油菓子、その他の11種類に分けられます。

注目していただきたいのは、2019年。戦後の統計以来、永らくトップだった「生和菓子」が、近年では生産数量も金額もすべての項目でチョコレートが追い上げています。

チョコレートは、1960年以降に国内市場に登場し、そこから60年間、猛烈な勢いで人気が高まった歴史があります。 

企業にとっては、一度ヒットすれば「ドル箱」となるチョコレート。

コンビニに行けば、チョコレート売場だけでも一棚を丸々占領している状態ですよね。いかにチョコレートが企業にとっても、消費者にとっても、魅力的なお菓子であることがわかると思います。

女性は男性の3倍チョコレートを食べる?!

ところで、日本人はどのくらいの量のチョコレートを食べているのでしょうか?

こちらを見てみましょう。

日本人一人当たりの年間チョコレート消費量(日本チョコレート・ココア協会HPより引用)
日本人一人あたりの年間チョコレート消費量(引用:日本チョコレート・ココア協会HP)

2018年の日本人一人当たりの年間チョコレート消費量は、2.19kg。一日約6g(板チョコ一枚の1/10程度)のチョコレートを摂取していることになります。

また、予想通りではありますが、女性は男性の3倍ものチョコレートを食べるという統計もでています。

総務省統計局『チョコレートの季節』より引用
チョコレート消費量の男女差(引用:総務省統計局『チョコレートの季節』)

そして興味深いことに、厚生労働省の調査によると、週3回以上飲酒する習慣飲酒者は、男性が33.9%、女性が8.8%。女性より男性の方が約3.8倍お酒を飲む習慣があるようです。
(参照:わが国の飲酒パターンとアルコール関連問題の推移-厚生労働省

あくまで推測ですが、お酒・タバコ・甘いものを嗜好品(心の栄養)と考えると、「男性のお酒」と「女性のチョコレート」は同じ役割を果たしているのではないか?と想像できます。

以上のことを考えると、う蝕の多い、甘いもの好きな患者さん(特に女性)に「もしかしてチョコレートにハマっていませんか?」と訊ねれば、かなりの確率で当たるわけです。

チョコレートに含まれる砂糖量

つぎに「チョコレートには、どのくらいの砂糖が入っているの?」という疑問にお答えします。

みなさん、チョコレートに砂糖が多く含まれていることはお分かりかと思います。ですが、具体的に何gほど入っているのかは意外と知られていません。

チョコレート商品のパッケージに記載される成分表には、「炭水化物〇〇g」という表示しかなく、食物繊維、糖質、糖類の内訳が明記されていないため、砂糖の量は分からないようになっているのです。

でも大丈夫。今回はお砂糖博士®︎が「チョコレートの砂糖量」を解説します。

まずは、一般的なミルクチョコレートの成分のイメージをつかみましょう。

チョコレートの成分表示

チョコレートの成分の特徴は、砂糖と脂肪がとても多いことです。

成分表示をみると、ショ糖(砂糖)の分量は38%、脂質(脂肪)は37%。つまり、板チョコ一枚50gの中には約19g(スティックシュガー約6本分)の砂糖と18.5gの脂肪が入っていると予測されます。

予想通りですが、チョコレートは砂糖量が多いですね。チョコレート総量の40%弱が砂糖です。

また、一般的なチョコレート100gにはカフェインが約25mg含まれています。

コーヒー1杯(180ml)にカフェインが100mg含まれていることを考えると、チョコレートのカフェイン含有量は少ないように思われます。

ですが、カフェインは向精神薬の中の「興奮剤」に分類される薬物であり、習慣性を引き起こすには十分な量です。

このカフェインの向精神作用により、チョコレートを食べると、「気持ちがリフレッシュする」「気分転換になる」という感覚を高めているわけですね。

ここまで知ると、お子さんのおやつをチョコレートにすることに気がひけるのは私だけでしょうか?

特にカフェインを含むチョコレートは、特別なお菓子として考える必要があると思います。

頑張ったご褒美に、ここぞという時を乗り越えるために、ひとかけら口にする。チョコレートの食べ方は、「気付け薬」のように利用するのが、良いのではないでしょうか?というのがお砂糖博士®︎の提案です。

今回は、砂糖をついつい取り過ぎてしまう加工食品、中でも砂糖消費量No1.の菓子類であるチョコレートを取り上げました。

「砂糖+脂肪+カフェイン」の組み合わせにより、強烈な依存を引き起こすチョコレート。

チョコレート依存症を防ぐためには、タバコとお酒のように、なるべく低年齢のうちは食べさせないということも有効です。

しかし、強烈なチョコレートファンである大人の患者さんの食習慣を変えることは、至難の業であります。

かくいうお砂糖博士®︎も、診療室で「チョコレートはチョコっとにして下さいね」とダジャレを言うくらいしか、打つ手がないわけです。

教えて!お砂糖博士®︎Questionコーナー

保健指導の際、チョコレート摂取後に歯みがきが難しい場合は、洗口をおすすめしています。う蝕予防に効果はありますか?

本文中にもありますが、チョコレートは40%弱が砂糖です。

これだけの高い濃度の砂糖が口腔内に入れば、う蝕原因菌やグルカンの増加によるプラークがしっかり形成されます。

そのため、本来は洗口では不十分であり、歯ブラシが必須です。

以上のことを説明した上で、どうしても時間がない時などは“心がけとして”洗口をおすすめするのは良いかもしれません。

しかし、チョコレートは嗜好品(心の栄養)であり、後味も楽しみの一つですので、食べたらすぐ洗口というのは少し趣がないような気もしますが…(笑)。

チョコレートの代わりにキシリトールチョコをおすすめすることは、指導方法として正しいですか?

深い質問です。指導が正しいかどうかは、その患者さんにもよるので判断が難しいですね。

キシリトールは糖アルコールの一種であり、う蝕になる可能性はほとんどありません。しかも、糖アルコールの中では砂糖の味に近く、比較的美味しいことが特徴です。

キシリトールチョコを食べた方は、その味の良さに驚いた経験もあると思います。

お砂糖博士®︎の目線から、あえてデメリットを上げてみます。

  1. たくさん食べると、お腹が緩くなる
  2. 値段が普通のお菓子より割高(甘味料としてのキシリトール自体は、砂糖の10倍以上の価格)
  3. キシリトールはキレの良い甘さなので、砂糖の後引く甘さの魅力には負ける
  4. チョコレートを食べる習慣は続くため、やがて普通の砂糖入りのチョコレートに戻る可能性がある

意識している患者さんは少ないかもしれませんが、チョコレートは心の栄養です。

ですので、少量のキシリトールチョコで心の潤いを満たせるような方は、指導法として正しいと思います。

デメリット③で述べたように、キシリトールは味の質で砂糖には勝てません。

長年、頻繁に食べ続けているチョコレート依存症に近いような方には、「やっぱり物足りない…」と切り替えが上手くいかないことが想像されます。普通のビールとノンアルビールの関係に近いかもしれません。

指導は何が奏功するか分かりませんので、患者さんに興味がある場合は「キシリトールチョコというものがある」と一度は紹介してみる価値はあると思います。

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次回は、清涼飲料編をテーマに、おさトーークしたいと思います。

お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」

No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編