多職種連携で防ぐオーラルフレイル #01 歯科衛生士として行う口腔機能改善とは?

こんにちは。歯科衛生士の梅谷有未です。

私はオーラルフレイル予防を行う『一般社団法人グッドネイバーズカンパニー』に所属し、口腔機能改善を目的としたさまざまな活動を行っています。

本連載では、この活動を通した想いや、取り組みについてみなさんにシェアできたらと思います。

口腔機能改善に興味をもったきっかけ

以前、私が勤めていた歯科医院には、摂食嚥下専門のドクターがいました。

そのドクターは主に、先天的疾患による口腔機能障害がある方のトレーニングや、口腔がんによって舌の一部を切除した方へのリハビリを行っていました。

そして私は、その患者さんへのメインテナンスを担当していました。

思い返すと、15年以上ある歯科衛生士人生の中で、さまざまな障害のある方を担当しましたが、口腔機能そのものに障害のある方を担当するのは初めての経験でした。

そこで学んだことは、障害の度合いに応じたケアの大切さと、根気よくリハビリすることの大切さ、そのために患者さんの生活背景をしっかり理解することでした。

また、院長は矯正専門医であり、小児期から行う口腔機能トレーニングの必要性を重要視していました。小児期からの正しい呼吸方法、そのために口腔機能が重要といつもおっしゃっていました。

そうして私は、近年医療業界全体で関心の高まる「口腔機能」に興味をもつようになりました。

ある団体との出会いが転期に

歯科衛生士として口腔機能改善に携わりたい!と想いがつのる私でしたが、実際に具体的にどのように関わり、何をしたら良いのか?何ができるのか?答えのでない日々。

その一方で、「なんとかしたい」「知識がほしい」「メインテナンス時に一緒に楽しくリハビリや口腔機能訓練がしたい」という思いはずっとありました。

私は、そんな想いを叶えるために、さまざま勉強会やセミナーを探しました。

その中で、一瞬で心を奪われたものがありました。それは、『一般社団法人グッドネイバーズカンパニー』が開催する、お口を使ったスポーツ競技“くちビルディング選手権”でした。

特に惹かれたのは、ホームページに掲載されている、子どもたちと高齢者がとても楽しそうにくちビルディング選手権を行う写真。

私は、こども食堂や地域包括支援センターに関わる機会があり、そこで孤独を抱える子どもや高齢者を目にする機会が多くありました。

そんな私にとって、みんなが笑顔でいる光景はまさに、これからの地域のあり方の理想形でした。

また、どの競技の内容も楽しく競い合いながら口腔機能トレーニングができるものばかり。

主な目的は、“楽しく笑顔でできる高齢者の口腔機能トレーニング”とのことでしたが、年齢関係なく参加できそうなものばかりで、絶対歯科で使える!と確信しました。

ホームページをくまなく読みあさり、見つけたのは「くちビルディング認定トレーナー養成講座」というもの。

認定トレーナーになると、自分でくちビルディング選手権を開催できると知り、即行で応募しました。

2日間の講座受講と認定試験をクリアし、晴れて認定トレーナーになることができました!

講座内容は以下の通りでした。

  科目 内容
1日目 座学 摂食嚥下や口腔機能に関する勉強
2日目 チーム競技の開催 チーム対抗で競技ルール、開催方法、内容などの正確さが審査される実践トレーニング

さらにこの講座には、常に笑顔でいかに楽しく盛り上げられるかというルール付きでした。(笑)

受講して分かったことは、すべての競技において専門家が関わっており、しっかりとしたエビデンスの下で行われているということ。

また、講座には多職種の方が参加されており、職種関係なく話をすることで他職種連携の大切さや面白さの発見もありました。

実際に言語聴覚士やケアマネージャー、介護福祉士、医師、看護師などさまざまな視点が学べるとても良い機会となりました。

競技の実践トレーニング中の様子

認定トレーナーとしての挑戦のはじまり

認定トレーナーとなった私は、早速勤務先の医院でデモンストレーションを行いました。

結果は、大好評!「患者さん向けのイベントを行おう!」と意気揚々と企画書を作り、準備に励んでいた矢先…未知のウイルス発生です。

そう、新型コロナウイルスの影響でイベントは中止となり、その後もコロナ拡大によって医院でのイベントは実施不可能となってしまいました。

そんな状況は私だけではなく、他の認定トレーナーたちも同じ。トレーナー同士で何度もオンラインミーティングを重ねました。

そして、新たに浮き彫りになった問題は、高齢者の引きこもりによる、体力と気力の低下や出かけ先のない人々、コミュニケーション不足によるストレス増加でした。

実際に私もその問題に直面した機会がありました。

地元に帰省した際、知り合いが駅のロータリーに座っていたので声をかけると「公民館も図書館も閉鎖、することも行く場所もないからここで時間をつぶしている」とおっしゃいっていました。

思えば医院の患者さんも、よく「話す相手がいない」「久しぶりに話した!」「ずっと家にいる」など、“孤独”に関する話が多かったように思います。

そんな状況下でくちビルディングの当面の課題は、“コロナ禍でいかに高齢者のフレイル予防を行うか”にシフトチェンジしていきました。

そして私自身も、コロナ禍だからこそ、楽しくできる口腔ケアが大切であることを強く感じ、できることを模索する日々がはじまりました。

くちビルディング認定トレーナー養成講座
くちビルディング認定トレーナー養成講座での集合写真