お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No10.糖質制限ダイエットの前に知っておきたい“糖類・糖質・炭水化物”

こんにちは、お砂糖博士®︎です。おさトーークの時間がやってまいりました。

このコラムでは、みなさんの身近な「お砂糖」について、お砂糖博士®︎が自由に語ります。

お砂糖を摂り過ぎ→むし歯は小さな子どもだって知っていますが、もう一歩二歩、深いお砂糖のことをお伝えします。

明日の臨床に直接役に立つか分かりませんが、明日の昼休みの雑談には役に立つでしょう(笑)。

前回までのおさトーークはこちら

No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.清涼飲料編 ②炭酸飲料について
No5.パン編
No6.乳製飲料の砂糖量
No7.フルーツの“甘さ”は歯や体に良いの?雑学編
No8. バナナ、りんご、みかんに含まれる糖類は?100%ジュースの秘密
No9. ハチミツは砂糖よりも体に良いって本当?

お砂糖博士の「おさトーーク」

「糖質制限ダイエット」「低炭水化物ダイエット」「低糖質食」「糖質制限食」「炭水化物制限食」「ローカーボ・ダイエット」…言い方はいろいろとありますが、10年ほど前から続くブームの中で、何度も目や耳にしたことでしょう。

もしかして、みなさんも一度は挑戦して失敗していたりして…(笑)。

また、コンビニに置いてあるカロリーオフの飲料の缶に、「糖質0」や「糖類0」と表示されているのを見かけることがあるかと思います。これらには、どんな違いがあるのでしょうか?

糖質ゼロと糖類ゼロ
糖質0(左)と糖類0(右)のアルコール飲料

今回は、知っているようで意外と知らない「糖類」「糖質」「炭水化物」についてお話しします。お砂糖博士®︎としてこのコラムでお伝えしたいことは、「言葉の定義をしっかり知ること」と「言葉に囚われすぎないこと」です。

何だか禅問答のようで分かりにくいと思いますが、詳しく解説していきます。

お砂糖の所属はどこ?糖類・糖質・炭水化物の分類

まずは、私たちの身近な糖質の代表である「砂糖」と「デンプン」を例にしてみましょう。

炭水化物・糖質・糖類の分類
炭水化物・糖質・糖類の分類(お砂糖博士®︎による作図)

図にあるように、砂糖は糖類の中の「二糖類」に分類されます。そして砂糖は糖類であり、糖質でもあり、炭水化物でもあります

それに対して、お米や小麦に含まれるデンプンは糖質であり、炭水化物でもあります。しかし、糖類とはいいません

炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたもので、もっとも広いくくりです。そのうちの糖質とは、食物繊維を除く、エネルギーになるもののことを指すのです。

改めてこの炭水化物分類の図を眺めてみると、砂糖をはじめとする糖類は炭水化物のくくりの中でも限られた種類のものであり、元来自然界においてとても貴重なものであることがわかります。

かつては大変貴重な存在だった糖類をたくさん含むハチミツや果実は、現在では気軽に食べられる食品となりました。

今でこそ各家庭の台所には砂糖のストックがあり、スーパーやコンビニには砂糖を含む加工食品が棚にぎっしり陳列されています。

しかし、日本国内で砂糖が身近に存在するようになったのは、「砂糖の自由販売制」がはじまった昭和27年(1952年)以降の、ほんの70年ほど前からのことなのです。

お砂糖消費の推移については、「おさトーーク」No.1にまとめてあります。ご興味のある方は、あわせてご覧ください。
(参照:お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?

砂糖とデンプンの違いは?もう一歩深く解説

糖の分類について
糖の分類について(お砂糖博士®︎による作図)

砂糖は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が一個ずつくっついた「二糖類」です。それに対して、デンプンは多数のブドウ糖が鎖状に連なった構造をしています。同じ糖質でも、姿形が全然違いますね。

また、砂糖は砂糖、デンプンはデンプンのままで私たちの体内に吸収されるわけではありません。それぞれが「単糖」になるまで、バラバラに分解されてから吸収されるのです。

二糖類の砂糖は、多糖類のデンプンに比べて体内で吸収されるスピードが早く、口腔内細菌にも利用されやすいため、う蝕や肥満になりやすいといえます。

以上のことから、酒類の飲料などの製品に表示されている「糖質0」や「糖類0」の違いはなんとなくおわかりになったのではないでしょうか。

具体的によくある事例としては、「糖類0」の缶酎ハイなどの場合、糖質に分類される糖アルコール(ソルビトール、還元水あめ、キシリトールなど)が甘味料として含まれていることが多いようです。

とはいえ、「糖質0」と「糖類0」では、いずれの製品も砂糖などの糖類はほとんど含まれず、不足する甘味は非糖質系甘味料(アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなど)で補っています。そのため、糖類を含む「糖質由来のカロリーがとても低い」という意味では、さほど大きな違いはないといってよいでしょう。

ただしアルコール飲料の場合、アルコール由来のカロリーはそれなりに高いのでご注意を。

「糖質オフ」よりも「糖類オフ」?

さて、同じ糖質でも砂糖とデンプンではだいぶ違うものであることがわかりました。糖質を摂るのであれば、砂糖よりもデンプンを摂った方がいろいろな意味で身体に良いといえます。

体重増加やう蝕など、身体の健康面を考慮した場合、本来控えるべきなのは砂糖などの糖類であるため、「糖質オフダイエット」よりも「糖類(砂糖)オフダイエット」の方が適正なネーミングではないかと思います。

実例として、次のような患者さんがいました。

その患者さんは、ダイエットのために糖質オフを心がけている方でしたが、う蝕の発生頻度が高かったため食事の話を聞いてみました。

すると、「一生懸命お米を抜いて糖質オフのパンやカップ麺を食べているのですが、カロリーが不足してお腹が空くので間食でジュースやお菓子を食べている」という、せっかく「糖質オフ」を心がけているにもかかわらず「糖類オン(?)」の食生活を続けてしまっていたのです。

「糖類オン(?)」の食生活を続けてしまっていた患者さん

“健康のため”の糖質制限であるはずが、これでは本末転倒です。

今回お砂糖博士®︎が提案した“糖類オフダイエット”は、口でいうほど容易ではありません。砂糖を使った甘いお菓子やジュースは嗜好品であり、心の栄養として、患者さんだけでなく、みなさんの生活にだって深く入り込んでいることでしょう。

もちろん、謹んで注意を申し上げるのは重要です。しかし現実問題として、依存状況によっては取り上げるのはむずかしいですし、脅したり強要したりするのは、その人の楽しみまで奪う行為になりかねません。

言葉に囚われすぎないことが重要

嗜好品や心の栄養としての“おやつ”についてどうこう言うのは、あまり好みではありません。代わりに、日頃の3食の食事をどのように気をつけたら良いか、最後のワンポイントアドバイスとしてお伝えしたいと思います。

冒頭で述べた通り、糖類、糖質、炭水化物などもしかり、「言葉」に囚われすぎないことが重要です。みなさんは「糖質」や「炭水化物」といわれたとき、何を思い浮かべるでしょうか?

日本人なら古来よりお米を主食としていますから、真っ先に「お米」が思いつき、「糖質オフといったらまずお米を抜く!」という発想になるのは無理のないことかもしれません。

テレビやネットでは、健康や栄養に関する情報が氾濫状態となっています。「お米は糖質(炭水化物)」「糖質や炭水化物は控えるべきだ」といった短絡な情報を鵜呑みにしてしまうと、「糖質オフダイエット」「低炭水化物ダイエット」などの言葉が先行してしまい、惑わされてしまいます。たとえば、コンビニでお昼を買うときに「一体何を食べたら身体に良いの?」と、困惑して立ち尽くしてしまう方は多いのではないでしょうか。

考えてみれば、私たちがデンプン(糖質、炭水化物)を摂取するとき、純粋なデンプン100%の物質を摂ることはほとんどありません。多くはお米や麦、芋などの食物からの摂取が多いはずです。

たとえば糖質の代表とされる「お米」は、本来は植物の種ですから、糖質以外にタンパク質も豊富で、他にも脂質や食物繊維などさまざまな栄養素を含んでいます。お米を食べているだけでも、案外バランス良く栄養素が取れていたりするのです。

「お米」は、本来は植物の種

一方で、砂糖は「ブドウ糖と果糖の二糖類」の純度が99%程度を占めており、他の栄養分がほとんどない珍しい食品であることがわかります。

お米の栄養成分の詳細については、文部科学省の公式HPから確認できるので、興味のある方はあわせてご覧ください。

無理なく砂糖の摂取量を減らすポイント

お砂糖博士®︎のおすすめは、お米を主食とした食生活です。実は、お米を主食とすることで、食事から摂取する糖類の量を減らすことができるのです

仮にも「糖質を控える」としたら、以下の写真の「お米」または「小麦製品」のどちらの糖質を控えた方が身体に良いと思いますか?

糖質制限

パンやラーメン、パスタ、ピザ、シリアルなど、小麦の加工食品には砂糖が多く含まれる可能性が高く、油脂も多く含まれがちです。

これらの食品は、週末に稀に摂取する、もしくは、せめて一日三食のうちの一食分に留めておくことが理想です

つまり、お米を主食とした食事を一日二食にすることで、半自動的に「糖類オフの食生活」を送れるということですね。

みなさんも、「お米=糖質」というイメージから一歩脱して、勇気をもって(?)ご飯をおかわりし、お米でお腹を満たす食生活に切り替えてみてはいかがでしょうか?

同様の内容についてお話ししたYoutube動画もありますので、あわせてご覧ください。

お砂糖博士®︎の気になるニュース「糖質制限?の前に糖類、糖質、炭水化物を整理」(引用:お砂糖博士のお砂糖チャンネル)

教えて!お砂糖博士®︎Questionコーナー

近頃、玄米や全粒粉のパンなどの食物繊維が豊富なロカボ食品がよくメディアなどで推奨されていますが、白米よりもそちらを摂取する方がよいのでしょうか?

確かに玄米は、白米よりも食物繊維やその他の栄養素が豊富で、栄養価として優れています。なので、玄米がお好きな方はそちらを摂取するのもおすすめです。

玄米は、特に食物繊維が豊富で、サラダなどを一所懸命食べなくても、主食の米を食べているだけで食物繊維の摂取量は増えるでしょう。

あえて注意点を申し上げると、一人暮らしの方はその切り替えは簡単ですが、ご家族など食事を共にしている方がいる場合、玄米の独特の風味や食感が苦手に感じる方もいらっしゃいます。

そのため、白米から玄米への切り替えを考える場合は、お子さん(一応ご主人も…笑)の様子を見たり、意見を聞いたりしておくとよいかもしれません。

玄米ご飯

お砂糖博士®︎のおすすめは、「七分づき米」です。白米を10割の精米としたら、七分づきは7割の精米具合です。風味や食感が比較的白米に近く、切り替えたのをわからない方もいるかもしれません。

スーパーでは見かけませんが、街のお米屋さんに「七分づき」で、と注文すると手に入ります。お砂糖博士®︎もこの七分づきを日頃食べています。お米の「分づき」についてはこちらのサイトも参考にして下さい。
(参照:3分精米(3分づき)・5分精米(5分づき)・7分精米(7分づき)・分つき米について-ふくい味覚倶楽部

子どもが白米のみだとなかなか食べたがりません。「ふりかけ」だと「還元水あめ」などが入っているものも多いと思うのですが、お砂糖博士®︎のおすすめのご飯のお供はなんですか?

確かに小さい子どもは白米だけではなかなか食べません。

おかずと一緒にご飯を食べるが理想的なのですが、ご飯をしっかり食べる手段として「ふりかけ」は強い味方です。

お子さんが成長すれば、普通にご飯を食べることになると思うので、ご飯を食べる習慣をつけるという意味では、頼りにして良いのではないかと思います。

次に、ふりかけに含まれる糖アルコールである「還元水あめ」について。

大手メーカの大量生産のふりかけには、品質保持の目的で、砂糖ではなく「還元水あめ」が使用されるようです。

理由は、砂糖よりも加熱に強く、甘みが砂糖よりも控えめであることから他の味を潰さないなど、いくつかあるようです。

還元水あめは糖アルコールの一種ですから、大量に摂るとお腹が緩くなるなど、砂糖とは違う身体の影響がありますので、心配される方もいらっしゃると思います。

しかし、ふりかけの「還元水あめ」の含有量は少量で、そもそもふりかけ自体の容量も小さく、メインで食べるものはあくまでもご飯です。

ふりかけの過剰摂取が起こるとは考えにくく、日常的に摂りすぎてしまうこともないかと思いますので、安心して召し上がれるのではないかと思います。

ふりかけご飯

「ご飯のお供」は個人の好みの問題もあるので、これだ!とはいえませんが、一般的な話をします。

ご飯に合うのはまず塩味、すなわち塩分です。専門的には「対比効果」といいますが、塩味はご飯のデンプン由来の甘味引き立てますので、ご飯が甘くておいしく感じます。

また、塩味で唾液分泌が増えると、唾液中消化酵素の働きでデンプンの分解が進み、単糖であるマルトース(麦芽糖)が増えるため、より一層ご飯の甘みが引き立って、おいしく感じるはずです。

世界の食文化を見てみると、地理や気候的問題で必然的に、温暖な地域は「米と魚」、寒冷な地域は「麦(小麦や大麦など)と肉」という組み合わせが多いというのも興味深いです。

おにぎり具材の人気ランキング不動の一位は「鮭」であり、上位は「塩分豊富な海の幸」が占めています。カルビや唐揚げなどの肉類は決して上位に上がらないことからも、「米と塩分を含む海の幸」の相性が良いことも合点がいきますね。
(参照:【人気投票 1〜32位】おにぎりの具ランキング!みんなが好きなおむすびの具材は?-みんなのランキング

お砂糖博士®︎のおすすめは?ということですが、個人的にはよく販売されている「刻んだ塩昆布」は気軽に食べられるので常備してます。

また、私は静岡県沼津市出身のため、「アジの干物」は大好物です。

アジの干物

なお、地方へ旅行に行った際のお土産で、ご飯の「ベストフレンド」を探すのは、お砂糖博士®︎の趣味となっております。

機会があれば、全国の皆様にもおいしい「お供」を教えていただきたいです!

お砂糖博士®︎の「おさトーーク」がLiveセミナーで開催!

8月31日(火)、9月28日(火)、11月16日(火)13:00〜、お砂糖博士®︎こと新美寿英先生のLiveセミナー「クリニックで共有したい、お砂糖の話」が開催されます。

「私、お砂糖摂り過ぎてないかしら…?」「甘いものは何をどう食べたらいいの?」患者さんはもちろん医療従事者だってふと疑問に思うあれこれを解説します。

これまでのおさトーークの知識を整理したい方は、ぜひご参加ください!

クリニックで共有したい、お砂糖の話
第1回は8月31日(火)13:00〜!お申し込みはこちら

お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」

No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ②炭酸飲料について
No5.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!パン編
No6.ヤクルトは健康?乳製飲料の砂糖量
No7.フルーツの“甘さ”は歯や体に良いの?雑学編
No8. バナナ、りんご、みかんに含まれる糖類は?100%ジュースの秘密
No9. ハチミツは砂糖よりも体に良いって本当?
No10.糖質制限ダイエットの前に知っておきたい“砂糖・糖類・糖質・炭水化物”