キャリア教育から歯科衛生士不足を打開 第1回 キャリア教育ってなに?

歯科衛生士不足が蔓延している昨今。

その一つの要因として、日本社会における歯科衛生士の認知度の低さが挙げられるのではないかと思います。

もし、進路を決める時期の子どもたちが、歯科衛生士という職業を知っていたら?

私たちができることのひとつに、「キャリア教育」があります。

この連載では、歯科衛生士の仕事をよく知らないであろう学校教員や子どもたち、またそのご両親へどのように伝えていけば良いのか、具体的な方法やポイントをお伝えしていきます。

キャリア教育から歯科衛生士不足を打開

「キャリア教育」ってなに?

「キャリア教育」は、子どもたちが将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するために、文部科学省が提唱している取り組みです。
(参照:キャリア教育-文部科学省

そのひとつとして教育委員会が実施している「ゆめ・仕事ぴったり職場体験」は、企業や役所などで働く人に密着し、仕事の一部を体験することで、その職種の社会における役割を学ぶために行われています。

将来の仕事や、学校で学ぶことの意味を考えるきっかけとなる「キャリア教育」に、私たち歯科医療従事者が携わることで、歯科衛生士不足を打開する一手となるのではと考えています。

「キャリア教育」に携わるきっかけ

小学校勤務時代、市内の小中高校生が参加していた「特定非営利活動法人日本PBL研究所」 というプロジェクト学習の発表に参加する機会がありました。その中で聞いた、すぐに仕事を辞めてしまう若者をテーマに扱った中学生の発表に、衝撃を受けました。

「すぐに仕事を辞めてしまうのは、職場でコミュニケーションが取れないことが問題のひとつ。だからぼくたちは駅であいさつ運動をしてみよう」という内容でした。

知らない人に声をかけるのは勇気がいることだけど、継続していくうちにだんだんと気持ちがさわやかになってきた・・そんな経過内容が、ずっと心に響いていました。

その後、主人の歯科医院開業の年に、中学2年生を対象とした「ゆめ・仕事ぴったり職場体験」の案内が送られてきたため、ぜひと受け入れをさせていただくことにしました。

実習中の様子
実習中の様子

歯科医院全体で「キャリア教育」を

今回、中学生を受け入れるにあたって、スタッフにまず協力を求めました

この人みたいになりたい、素敵だと思ってもらえるような社会人としての姿を見せてあげてほしい。もちろん、指導にあたるスタッフにもプラスの効果があるだろうとも考えました。

この取り組みでは、実習前に生徒さんと職場スタッフとの打ち合わせの時間が設けられています。この打ち合わせも、そのための電話も、すべて学びのひとつであることをスタッフに周知させます。

こちらも初めての経験で、「何人ぐらいくるのか。男子生徒さんか女子生徒さんか・・。」と期待いっぱいで待っておりました。

「打ち合わせ」の前の電話から体験学習ははじまっているはずです。きっと緊張しながらかけてきてくれたことでしょう。一生懸命に受け答えしてくれました。

スタッフに、「しっかりとした生徒さんだから、こちらも恥ずかしくないように振る舞ってね。」と軽く発破をかけておきました。

打ち合わせ当日、近くの学校の生徒さんが、夏休みに行われる「職場体験」の打ち合わせにやってきました。約束の時間の少し前に、生徒さんは到着しました。

どきどき・・どきどき・・

心臓の音が聞こえそうなくらい緊張していましたが、しっかりと必要なことを質問し、さわやかな笑顔を残して帰っていきました。

どんな体験をさせてあげられるのか、医療に従事することをどう捉えてくれるのか、こちら側も新鮮な気持ちになれました。

それにしても、あのさわやかな笑顔・・・・
もう遠い昔にどこかに置いてきてしまったなぁ~。

もう一度、中学生に戻って、「職場体験」とやらを味わってみたいです。
これから、夢いっぱいの中学生。こちらまでどきどき、わくわく・・・。
ただのお手伝いではつまらない、なるべく体験させてあげたい。

そんな強い気持ちでキャリア教育に関する書籍に目を通し、中学生になにをしてあげたらいいかを考え、カリキュラムを練ろうと思いました。

患者様には以下の内容を、ブログにてお伝えしました。

8月9日から11日までの三日間、市内の中学二年生が職場体験学習を当院にて行ないます。

当院で働くスタッフは歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・受付です。それぞれが、どんな風な役割を担っているのかを見てもらうつもりです。

「体験学習」ですので、見学だけでなく「体験」も予定しています。

患者さんへの配慮は、事前指導で行なっております。

みなさま、どうぞ温かい目でお守りくださいますようお願い申し上げます。

キャリア教育には、職場のスタッフだけでなく、患者さんへの周知も、実習を成功させるポイントになります。

はじめての試みに全員がどきどき、そして新鮮な気持ちでその日を迎えました。

(次回につづく)