さすが美容大国?!意識が高い韓国の歯科医療制度 Vol.1 日本との医療制度の違い

日本からもっとも近い国である「韓国」ですが、日本とは歯科医療制度が大きく異なることをご存じでしょうか。

日本でも韓国料理や韓国コスメ、韓流ドラマ、K-POPなど、数年前に比べて韓国がとても身近に感じられるようになりました。

本連載では、そんな韓国と日本の歯科医療の違いについて、幅広い視点でお届けできればと思います。第1回である今回は、日本と比較した韓国の医療制度について解説します。

韓国にも国が保障する「国民健康保険」がある!

韓国が国として保障している医療保険は「国民健康保険」の一つだけで、保険への加入者は「職場加入者」と「地域加入者」に分けられます。

会社へ所属している国民は職場加入者となり、保険料の50%を負担します。それ以外の国民は地域加入者となり、財産や所得に応じて健康保険料が異なります。

韓国でも国民健康保険に加入していれば窓口での自己負担割合は3割ですが、入院の場合は一律2割であることや、医療機関の規模や種類、所在地によって負担割合が大きく異なります。

また、日本と韓国の医療制度の大きな違いは、韓国では混合診療が許容されている点でしょう。保険適用の治療は自己負担金を、保険適用されない自由診療は全額を支払い、治療を受ける仕組みになっています。

韓国の歯科医療保険制度はどうなっている?

韓国では健康保険が適用される歯科治療の範囲が非常に狭く、一般的なう蝕治療なども保険適用外となります。

韓国の歯科治療で国民健康保険が適用されるのは、以下のような項目です。

  1. スケーリング(歯石除去)
    満19歳以上であれば、年に1回だけ保険適用でスケーリングを受けられる
  2. う蝕治療関連処置
    アマルガム、レジン充填、歯髄処置など(補綴治療は含まない)
  3. 歯周疾患に対する処置、抜歯
  4. 義歯
    満65歳以上の人で7年に1回適用され、自己負担は3割で受けられる
  5. インプラント
    義歯と同様に満65歳以上の人で7年に1回、一人2本まで適用される
    ※ 欠損補綴治療では、インプラントか義歯のどちらか一つを選ぶ必要がある。義歯を選ぶと、保険適用のインプラント治療は受けられない
  6. シーラント
    満18歳以下の左右臼歯部8歯まで適用され、自己負担は1割で受けられる

韓国で保険が適用される範囲は日本と大きく異なり、インプラント治療が保険内で受けられることに驚いた方もいるのではないでしょうか。

一方で、一般的なう蝕治療では補綴物が保険の対象外となるため、費用が高額になるケースがほとんどです。

そのため、韓国では急なう蝕治療に備え、民間の保険会社の「歯科健康保険」に加入する人もいます。日本のがん保険のような位置づけです。韓国では、国民健康保険で保証できる範囲が非常に狭いため、このような民間の保険に加入している人が多いといわれています。

韓国の歯科医院ではどんな人が働いている?

日本と韓国では、歯科医院に勤務するスタッフの職種や働き方も違うのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

ここでは、韓国の歯科医院で働くスタッフについて解説します。

歯科医師

韓国の国民健康保険教団が行った調査によると、2021年時点で韓国内の医師は約11万人、歯科医師は約3万人、漢方医師は約2万人という結果でした。

韓国では、歯科医師の国家試験合格率は95%と高いものの、各大学の医・歯学部への入学が超難関といわれています。そのため、日本やアメリカなどの歯学部へ留学して国家資格を習得した後に、韓国で予備試験・国家試験を受け直す人が増えているようです。

歯科衛生士

韓国で歯科衛生士になるには、3年制の専門学校または4年制の大学を卒業し、国家試験に合格する必要があります。歯科衛生士の国家試験合格率は80%前後と高いものの、日本よりは低い水準です。

韓国の歯科衛生士は、以下のような業務を担当します。

  • フッ素塗布、歯石除去などの歯科衛生業務
  • 矯正用ワイヤーの装着、除去
  • 仮封の充填・除去
  • アシスタント業務

韓国では、診察室で歯科医師のアシスタントを行うのはすべて歯科衛生士です。

受付業務を兼任する歯科医院も少なくなく、特に規模の小さな歯科医院では、受付業務も専門知識をもつ歯科衛生士が担当することが多いようです。

歯科助手

韓国では、歯科助手という職業はありません。先述した通り、診察室で歯科医師のアシスタントを行うのはすべて歯科衛生士のため、国家資格をもたないスタッフは受付業務にとどまります

一方韓国では民間の歯科医療保険があることから、「歯科保険請求士」という資格が存在します。大規模な歯科医院で働く際は、歯科保険請求士資格保有が必要であることも少なくありません。

まとめ

今回は、韓国の医療制度や歯科医療保険について紹介しました。韓国と日本では、医療制度に大きな違いがあることがわかりましたね。

日本の医療制度は充実しており、保険内でほとんどの治療が可能です。一方で韓国では、う蝕治療に多くの費用がかかるため、定期的にクリーニングを受け、オーラルケアに気を使っている国民が多い印象です。

次回は、美容大国である韓国の歯列矯正についてご紹介します。お楽しみに!