歯科助手目線でとらえる!患者さんのカウンセリングポイント vol.2 補綴カウンセリングの具体例

こんにちは、歯科助手歴10年目の八木菜々子です。

私はこれまで、歯科助手として多くの歯科医院をみてきました。臨床現場ではさまざまなアシスタント方法や患者対応力を磨き、スキルアップやキャリアアップのために医療事務やトリートメントコーディネーターといった資格も取得しました。

現在では診療のアシスタント業務だけでなく、患者さんとコミュニケーションをとる中で、補綴物のカウンセリングやクレームの対応など、あらゆる業務を任せてもらえるようになりました。

前回は、補綴カウンセリングを行う上で確認するべきポイントについてお伝えしました。

前回の記事はこちら

vol.1 補綴カウンセリングで確認するべき項目

今回は、具体的な補綴物を選択するポイントやカウンセリングの具体例についてご紹介しますね。

歯科助手目線でとらえる!患者さんのカウンセリングポイント

各材料のメリットとリスクを理解する

前回の記事でお伝えしましたが、どの材料にもメリットとリスクが存在します。

補綴物の各材料の特徴については、一度自分で調べて、院長先生などに確認をとるようにすると、情報を自分の言葉として話すことができるようになります。初心者の方は焦らずに少しずつ勉強してみてください。

そして正しい知識をふまえた上で、自分の考えを整理し、患者さんにおすすめする補綴物を決めましょう!

補綴物は保険or自費、どちらをおすすめするべき?

私の場合、一本でも保険適用の補綴物が入っている患者さんには、「自費にしましょう」といきなりお伝えすることはほとんどありません。

よほど審美性に欠ける場合を除いて、まずは「保険の被せ物にしましょうか?」と尋ねています。

自費でも保険であっても、こちらが特定の補綴物をおすすめしたい場合は、「〜〜〜といった理由から、この材質の被せ物を入れた方が良いと思うんですが、ご検討いただけませんか?」というように、理由をつけて伝えるようにしています。

また、患者さんが自費と保険のどちらにするか悩んでいる場合は、まずは保険適用の補綴物を入れてみて、どうしても見た目が気になるようであれば「自費の補綴物に作り変える」という選択を促すケースもあります。

補綴物は保険or自費、どちらをおすすめするべき?

歯科で取り扱う機会が多い修復物・補綴物の特徴

インレー

メタルだと審美的に気になりやすい「MODインレー」や「MOインレー」の場合は、ハイブリッドセラミックまたはオールセラミックインレーをおすすめしています。

今年度からCAD/CAMインレーが保険適用となりましたが、私が勤務している歯科医院では耐久性を懸念し、取り扱っていません。

CAD/CAMインレーを取り扱っている歯科医院であれば、患者さんに十分にリスクを伝えた上で、選択肢の一つとして提案してもよいでしょう。

インレー形成

クラウン

上下顎ともに3〜3番の前歯に補綴する場合は、審美的に満足してもらいやすい「オールセラミッククラウン」や「ジルコニアボンド(ジルコニアセラミッククラウン)」をおすすめすることが多いです。

ただし支台歯が生活歯の場合は、象牙質知覚過敏症(Hys)や抜髄のリスクを伴うことがあるため要注意です。

4・5番の小臼歯の場合は、患者さんの費用負担が少ない「CAD/CAM冠」をすすめることもあります。こちらも生活歯の場合はHysのリスクがあり、さらにクリアランスが少ない場合は、CAD/CAM冠自体が破損してしまう可能性があります。これらのリスクがある患者さんには、事前にしっかりと説明しておきましょう。

また、6・7番の大臼歯は、大きな咬合圧がかかる歯であるため、耐久性を重視した補綴物をおすすめしています。「ジルコニア」や、咬合面をメタルにした「メタルボンド」といった自費の補綴物を選択するのがむずかしい場合は、保険適用のメタルクラウン(FMC)を選択してもらうことが多いです。

また、条件を満たす患者さんであれば、下顎6番はCAD/CAM冠を提案するケースもあります。

欠損補綴

欠損補綴については、支台歯と咬合の状態によって提案する内容が大きく異なります。事前にかならず担当の歯科医師と打ち合わせを行いましょう。

また、カウンセリング時には「治療にかかる期間」を、とくに正確に伝えるべきだと考えています。

たとえば治療方法としてインプラントを選択する場合は、抜歯から上部構造を装着するまでに、半年から1年という期間がかかります。

その期間、通院できる場所に拠点があるか、転勤は頻繁でないか、ご家族の介護はあるかなど、直近のライフプランも視野に入れて考えなければいけません

せっかく治療をはじめたのに、途中で来院できなくなったということほど残念なことはないですよね。そのためにも、患者さんが通院できる期間については、しっかりと確認しておきましょう。

欠損補綴

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患者さんとの会話がなければ、その方が本当に求めていることや、解決してほしいことは見えてきません。

時と場合にもよりますが、補綴カウンセリングや問診には、高度な医療知識よりも「人当たりの良さ」や「話し上手・聞き上手であること」が求められることもあります。

患者さんにとって「知識豊富な友人」のような立場になれたら、歯科医院にとっても患者さんにとっても、これほど頼りがいのある人はそういないと感じてもらえるはずです。

次回は、クレームをもつ患者さんへの対応ポイントについてお伝えします。

歯科助手目線でとらえる!患者さんのカウンセリングポイント

vol.1 補綴カウンセリングで確認するべき項目
vol.2 補綴カウンセリングの具体例