コツを学んで心を掴む!明日からできるコミュニケーション術 第一回 まずは自分を整えよう!

こんにちは。歯科衛生士の古家と申します。

この連載では、これまで私が学んできた知識や経験から、コミュニケーションについてお話ししていきたいと思います。

コミュニケーションと聞いて、みなさんはどんなことを思い浮かべますか? 苦手だと思う方も、得意だと思う方もおられると思います。

多かれ少なかれ私たちは、常に周りとコミュニケーションをとりながら生活しています。 少しのコツで大きく変わることができますから、苦手だと思っている方にこそ、ぜひ読んでいただきたいです。

コミュニケーションって?

「コミュニケーション」とは、そもそもどういった意味でしょうか?

コミュニケーションとは、互いの考えや気持ち、価値観を伝え合うことをいいます。 話を重ねていく中でお互いのことを知り、そして「わかりあうこと」がコミュニケーションのゴー ルであるともいえるでしょう。

コミュニケーションには、言葉を使った「言語コミュニケーション(バーバルコミュニケーション)」と、言葉を使わずに距離感や雰囲気で伝わる「非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)」の二つがあります。

コミュニケーションの種類
コミュニケーションの種類

①言語コミュニケーション(バーバルコミュニケーション)

言葉のみを使ったコミュニケーションのことで、メールや手紙などがこれにあたります。 言葉のみで伝えるため、正確な言葉を用いて明確に伝えられる一方、気持ちや感情を伝えることがむずかしいことが難点です。

②非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)

言葉以外の要素(視覚・聴覚)で伝えるコミュニケーションのことです。 具体的には、表情やジェスチャー、見た目や身だしなみといった外見的なことだけでなく、距離感や雰囲気といった感覚的な部分も含まれます。

相手に伝わる情報量が多いため、言語コミュニケーションだけでは気持ちをうまく言語化できない場合に組み合わせることで、正確に気持ちを伝えることができます。

あなたの笑顔は本当に笑っていますか?

メラビアンの法則

みなさんは、「メラビアンの法則」を聞いたことはありますか?

1971年にアルバート・メラビアンという心理学者が、「人と人とのコミュニケーションにおいて、言葉と態度に矛盾が生じている場合に聞き手がどのように受け止めるか」という実験を行って提唱された法則です。

これによると、言語情報が7%聴覚情報が38%視覚情報が55%のウエイトで印象に影響を与えるとされています*1

メラビアンの法則
メラビアンの法則

たとえば「楽しい」と口にしてはいるものの、その人の目線がずっと足元を見ていたり表情が暗かったりすると「本当は楽しくないんだな」と感じませんか?

つまり、聞き手は話の内容や使う言葉以上に、声の調子や見た目に影響されて話し手の印象を受け取るのです。

このように、発信者の言っていること(言語コミュニケーション)と発信者の雰囲気(非言語コミュニケーション)が異なっていた場合、受け手側は大きな違和感や不信感を感じてしまいます。

「人は見た目が9割」についての誤解

メラビアンの法則の話において、しばしば誤解されているのが「人は見た目が9割」という捉え方です。

メラビアンの法則が示すものは、見た目(視覚情報)が良ければOKということではありません

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションが矛盾していると、本当の気持ちや意図が伝わりにくくなるばかりか、相手に自分の考えとは違った印象を与えてしまい、誤解されやすくなってしまう、というところが重要なのです。

自分の気持ちを正しく伝えるために

続いて、メラビアンの法則から、「相手に自分の気持ちを正しく伝えるためにはどうしたら良いのか」を考えてみましょう。

「言語情報」「視覚情報」「聴覚情報」に矛盾があると、相手に自分の思いが正しく伝わりにくくなってしまいます。非言語の割合が大きいとはいえ、できるだけこの3つに矛盾がないようにすることが大切なのです。

ここで、何よりもまず大事なのは、あなたの笑顔のメッセージは相手にきちんと伝わっていますか?」ということです。

とくに診療時間中は、歯科医院のスタッフのみなさんはずっとマスクをつけているかと思います。

マスクを着けたまま患者さんにあいさつをしたり、お話をしたりする機会もありますよね。この時、患者さんからはマスクよりも上にある「目元」しか見えていません。

マスクを着けた状態の自分の笑顔は、相手に伝わる笑顔になっているでしょうか?

鏡で顔を見ながら、にっこり微笑んでみてください。お顔全体が見えると、もちろん笑っていることがわかるかと思います。

では、今度はマスクを着けた状態で、先ほどと同じようににっこり微笑んでみてください。

…いかがですか?鏡に写った自分は「笑顔」に見えるでしょうか。いわゆる「目が笑っていない」状態になっていませんか

実は、笑顔を作る時に口元でしか笑っていない人は多いです。口元でしか笑っていないと、マスクによって表情が隠れてしまうため、「この人は笑っている」と聞き手側に受け取ってもらいにくくなってしまうのです。

では、どうしたら相手に伝わる笑顔を作るにはどうしたら良いのでしょうか?

ポイントは二つです。

一つ目は、目元を細めるようにして、目尻で笑顔を作ること。 そうすると笑顔であることがとても伝わりやすくなり、聞き手にも安心感を与えることができるようになります。

二つ目は、マスクで隠れていても、口角をキュッと上げるように意識することです! 口角が上がることにより自然と頰が上がるため、目元が盛り上がってマスクを着けていても表情が出ます。

ぜひこの笑顔の作り方をマスターして、明日からの診療に活かしてみてくださいね。

身だしなみの必要性とは?

続いて、身だしなみの必要性について考えてみましょう。

たとえば、「髪を切ってイメチェンして素敵な自分になろう!」と意気込んで美容院を訪れた時、次のような状況だったとしたらどうでしょうか。

  • 入り口がなんだか汚れている…
  • 照明が切れかかってチカチカしている…
  • 壁のポスターが剥がれかけている…
  • チェアが破けている…
  • 美容師さんの髪型がボサボサ…

上記のような美容室で、自分の大切な髪を切ってもらいたいと思うでしょうか?

歯科医院へ訪れる方も同様に、少なからず健康になりたいという思いを抱いて来院されます。「健康でキレイな口元になりたい!」と思っている方がほとんどであり、「不健康で汚い口になりたい!」という方は少ないはずですよね。

では、患者さんが歯科医院に訪れて目にしたものが、「健康」のイメージとかけ離れていたり、矛盾していたりしたらどうでしょうか?

「キレイな歯になるよう磨きましょう!」と言っているスタッフの白衣が汚れだらけで、歯がヤニだらけだったら?

自費の補綴物をおすすめされて、手渡された手鏡が汚れてくもっていたら?

健康の大切さについて話を聞いて、出てきた待合室の花が萎れて枯れていたら?

…それぞれに矛盾を感じませんか?

これもまた、メラビアンの法則で紹介された「視覚情報」の影響なのです。

人の印象は、はじめの3秒で決まるといわれています。

いくら高い技術をもっていたとしても、患者さんは見た目の第一印象から「この人はどういった人なのか?」という判断をしてしまうのです。

とくに、目立ちやすい特徴によってその他の判断内容までもがその特徴に引きずられやすいといわれています。これは、心理的効果である「ナロー効果」によるものです。

人が誰かと出会った時にいちばんに入ってくる情報は「外見(身だしなみ)」です。外見の印象により、その人の印象や人間性までもが相手の中で決定づけられるのです。

たとえば、派手な外見の方は明るそうに見えますし、暗い色の服を着ている方であれば落ち着いて見えますよね。これと同じで、服装が乱れたり汚れたりしていると、その人の性格までもが落ち着きがなさそうに見られてしまうのです。

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いかがでしたでしょうか?

まずは清潔感を心がけ、身だしなみを整えるところからはじめてみてくださいね。

自分の髪型や服装はもちろんのこと、歯科医院内の診療室や待合室など、患者さんの目線も意識して清潔感のある印象となるよう心がけましょう!

参考文献:
*1 Albert Mehrabian,Silent Messages.1972.