みなさん、こんにちは。歯科衛生士歴16年のYota Morisakiです。現在は訪問歯科で働きはじめて7年ほどになり、業務としては、主に有病者や高齢者の方に対する口腔ケアを行っています。
そんな訪問歯科の現場では、一般歯科とは異なるアクシデントやインシデントに見舞われることがあります。
この連載では、訪問歯科現場で働く中で実際に起きた「ヒヤリハット」体験をご紹介します。
誤嚥に関するヒヤリハット
有病者や高齢者の方は、嚥下に関する機能が働きにくい状態にあります。
また、長く同じ患者さんの口腔ケアを担当していると、嚥下の機能が少しずつ落ちていくのを目の当たりにすることもあります。
診療中は誤嚥に関するヒヤリハットが起こることが多いため、十分に注意して口腔ケアを行っています。
① うがい時
患者さんがうがいをきちんと行えるかどうかは、嚥下の機能を測る大切な指標です。
そのため、“なるべく自身でうがいを行ってもらいたい”というのが本音ですが、無理にうがいをさせると、強い「むせ」が出てしまうことがあります。
先週までは大丈夫だったのに、今週同じことをしたら強くむせてしまう、ということもあるため、その瞬間はとてもヒヤリとします。
そのときの患者さんの体調によるむせもあるため、うがいから拭掃に切り替えるかをその場で判断するのはむずかしいところですが、非常にドキッとする瞬間であることは確かです。
② 異物の誤嚥
患者さんの自宅での口腔ケアは、一般歯科での口腔ケアに比べ、視界の悪い状態で行います。
また、一般歯科の患者さんよりも開口がむずかしいケースも多いため、さらに視界が悪くなってしまうこともあります。
そのような状態の中、口腔内で何かを見失ってしまうと、非常にヒヤリとします。
気をつけなくてはならない異物としては、「噛んで切れてしまったスポンジブラシの欠片」「はがした乾燥淡の一部」などが挙げられます。
体調に関するヒヤリハット
有病者や高齢者の方は体調が変わりやすいため、無理な口腔ケアは行わないようにしています。
中には、突然痰がつまったり、無呼吸になったりする患者さんもいるので注意が必要です。
微熱があったり、様子がいつもと違ったりする場合は、ご自宅に訪問しても何も行わずに帰ることもあります。
① 無呼吸になる
座位がとれず、普段から側臥位や仰臥位の体勢が基本の患者さんは、舌根が沈下しがちで、意識レベルが低いと呼吸が苦しそうになることがあります。
エビデンスの有無は不明ですが、それに加え、顎の下あたりや首周りの筋肉が硬く緊張していることが多いため、呼吸がしにくそうな様子が見られることもあります。
中には1分以上無呼吸になる方もいるため、場合によっては看護師さんやキーパーソンの方を呼んで対応することもあります。
「いま無呼吸だな…」と思いながら準備などを行っていて、その時間がだんだん長くなるときは、本当にハラハラします。
② 痰がつまる
痰の吸引は介護担当の方に随時行ってもらっていますが、それでも口腔ケア中に痰がつまってしまうことがあります。
私は痰吸引の講習などを受けていないため、つまりそうだなと思っても吸引を行うことができません。
喉の奥がゼロゼロと音を立てていて苦しそうな場合は、口腔ケアを中断して痰吸引を先にやってもらうことがあります。
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今回は、訪問歯科現場での「ヒヤリハット」エピソードをご紹介しました。
有病者や高齢者の方の口腔ケアを行うときは、基本的に無理はしません。
訪問歯科では、患者さんのもとへ毎週訪問しているため、機材や材料の間違いなどは起こりにくいです。一方で、誤嚥や呼吸に関するヒヤリハットはとても起こりやすいといえるかもしれません。
今回紹介したようなことが起こると本当にヒヤリとしますが、訪問歯科での口腔ケアは、とてもやりがいのある仕事です。
ご興味をおもちの方は、ぜひ訪問歯科の世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。