みなさんこんにちは!歯科衛生士の岡崎由依です。
私は歯科医院にて、約一年間の契約社員として「産休代替歯科衛生士」の職に就きました。
その際に産休代替歯科衛生士の需要や課題を感じたので、体験談としてみなさんにシェアできればと思います。
本記事が、この働き方自体の認知が広まるきっかけの一つになれば幸いです。
契約社員・派遣社員の歯科衛生士とは
みなさんが「歯科衛生士の働き方」と聞いて思い浮かぶのはどういう形態でしょうか?
求人などを見ると、主に正社員やパートが大半を占めていると思います。では、実際の歯科衛生士の雇用形態の分類はどうなっているのでしょうか。
おおまかには、以下のようにまとめられます。
- 正社員(常勤)
- パート(非常勤)
- アルバイト
- 契約社員
- 派遣社員
- 嘱託社員
今回は上記の中でも、歯科衛生士における「契約社員」や「派遣社員」としての働き方についてお話ししたいと思います。
それぞれの大きな違いについては以下の通りです。
雇用形態 | 区分 | 雇用期間 | 雇用元 | 勤務時間 |
---|---|---|---|---|
正社員 | 正規雇用 | 無期雇用 | 就業先 | フルタイム |
契約社員 | 非正規雇用 | 有期雇用 | 就業先 | 主にフルタイム |
派遣社員 | 非正規雇用 | 有期雇用 | 派遣会社 | 主にフルタイム |
産休代替歯科衛生士の需要
みなさんは、「産休代替」の求人を見たことがありますか?
産休代替歯科衛生士に関しては、契約社員・派遣社員ともに勤務が可能です。
近年は産休への理解も深まり、妊娠や出産に際して辞職するのではなく、産休を取得するという流れが社会全体として広まってきました。
産休を取得するスタッフは一定の期間休職になりますが、その後復帰することを前提としています。その間の補充要員として役割を果たすのが「産休代替スタッフ」です。
日本国内における現在の産休取得率は、女性が約80%、男性が約17%であり、以前と比較すると上昇傾向にあります。
また、「第一子出生年別にみた、第一子出産前後の妻の就業変化」は、出産退職が約24%、出産後継続就業率が約53%です。
この数値を見て、あなたはどう考えますか?
確かに以前と比べて産休に対する社会の見方や、女性の働き方は大きく変わってきました。しかし、現状出産のために退職せざるをえない環境がなくなったわけではありません。
また、産休代替のスタッフを探すには時間がかかることが多く、産休代替の求人自体も全国的にまだ少なく感じます。
しかし、私は実際に産休代替スタッフとしての勤務を体験して、産休代替の働き方は医院側にも歯科衛生士側にも良い影響があるように感じました。
産休代替歯科衛生士(契約社員)の体験談
私の場合、産休に入る方から約一ヶ月ほどの引き継ぎをしていただき、産休代替で約一年間勤務しました。産休や育休の期間には個人差がありますし、予定通りにはいかないことも多いかと思います。
そこで、院長やスタッフとのコミュニケーションがとても重要になるため、些細なことでも相談し合えるような環境づくりが両者に必要だと感じました。
私の勤務した歯科医院では、歯科衛生士はメインテナンス業務が主で、歯科助手がアシスタント業務を行ってくださいました。
定期的なメインテナンスは担当制でした。そのため、産休に入られる歯科衛生士に私のことを患者さんに説明してもらったり、先生から紹介してもらったりと、患者さんへの配慮があることでスムーズに施術できたように思います。
処置に関しては、今までのカルテを見て、指導内容や施術に矛盾が生まれないように努めました。最初のうちは説明や施術も不慣れでしたが、今までの担当歯科衛生士との信頼関係がすでに構築されていたので、患者さんにもよく助けられました。
患者さんへも担当歯科衛生士の代替であることを説明し、自己紹介を初回時に行うことで、安心して通院を継続していただけるように意識しました。
また、患者さんが代替の間に通院から離脱してしまったり、担当の歯科衛生士と築いてきた信頼関係が崩壊してしまったりしないように、「何を話したか」「どうしてその話をしたのか」といったことを、できるだけカルテに記載するように心がけました。
復帰後には、元の担当の歯科衛生士がスムーズに診療に戻れるように意識していましたが、お手数をおかけする面も多くあったと思います。
終了間際や最後のメインテナンス時には、患者さんに担当の歯科衛生士が戻ってくることを伝え、復帰を一緒に喜べたことは、私にとって良い時間となりました。
歯科衛生士が契約社員として働くメリット
実際に働いてみて感じた産休代替歯科衛生士のメリットは以下の通りです。
- 歯科衛生士側:短期集中でスキルが身につく
- 歯科医院側:産休育休中の人員の確保
歯科衛生士側のメリット
短期集中でスキルが身につくことは、歯科衛生士にとって大きなメリットであると思います。「期間が決まっている方が集中力が上昇する」というのは、心理学で“締め切り効果”とよばれます。
産休代替のスケジュールは多少変更する可能性があるものの、勤務期間がある程度決まっています。
もちろん同じ歯科医院や職場で長期的に勤務することは個人のスキルや知識もつきますし、歯周病治療に関していうと、特に長期的な経過を見るということは大きな財産になると思います。
しかし、歯科医院によって治療やメインテナンス、指導内容などには特色があります。
契約社員であれば、新しい知識や技術を短期間に習得できると感じました。もちろん仕事として勤務するのですが、研修のような新鮮な気持ちもありました。
仮に自分が気になる分野や働いてみたい歯科医院があったとしても、今の仕事を辞めてその世界に飛び込むのは勇気がいるのではないでしょうか。そういうときに、「産休代替」という勤務体系をとることで、環境や業務内容が自分に合っているか確認できますし、次のステップへの足がかりにもなると思います。
歯科医院側のメリット
歯科医院側のメリットとしては、もちろんですが「産休育休中の人員の確保」です。産休育休中は不測の事態が起きることも多く、急な休みや予定していた期間より休業時期が伸びることもあるでしょう。そのため、何かあったときに頼れるスタッフが近隣にいるということ自体に価値があると思います。
また、新しい人員が増える場合は、従来のスタッフの方のサポートが必須です。しかし、これは必ずしも歯科医院の負担になるだけではありません。
代替スタッフだからこそもっている、その歯科医院にはないスキルや知識を共有することで、医院全体のスキルアップに繋がる可能性があります。
また、教育システムの見直しや、院内環境の改善のきっかけにもなるのではないでしょうか。
歯科衛生士が契約社員として働くデメリット
産休代替歯科衛生士のデメリットは、やはり長期で患者の経過を追えないことではないでしょうか。
特に歯周病に関しては、年齢や生活スタイルの変化に伴い、長い時間をかけて容態が変化していくものです。その経過を追いながらメインテナンスすることは、患者にとっても術者にとっても重要なことです。
また、産休代替では短期的な勤務になるため、即戦力となるスキルや知識が求められることがあります。歯科医院側が求める経験値や知識、コミュニケーション能力を自分がもっているのか、客観的に省みることが必要な場合もあるでしょう。
産休代替歯科衛生士(契約社員)はこんな方におすすめ!
実体験を通して、契約社員歯科衛生士は以下のような方に向いているのではないかと思います。
- 未経験の分野に興味があるけど、自分に合うかわからない
- 今後ライフスタイルが変化する可能性があるけど、歯科衛生士は続けたい
- ブランクがあり、正社員やパートで働くことに躊躇している
もちろん、産休に入る方の代わりに勤務するのですから、即戦力や確かな技術、知識は必要不可欠です。しかし、双方の需要と供給を満たし、歯科衛生士の意欲があれば、お互い気持ち良く勤務期間を過ごせるのではないでしょうか。
このような勤務体系を試したいと思う方は、自分なりの目標を明確に立て、可能な限り周囲へ共有することをおすすめします。
産休代替という働き方を知っている方や、採用している歯科医院、求人はまだ少ないように思います。産休代替や契約社員としての働き方の認知度が広まれば、産休による離職率の減少に繋がるのではないかと感じました。