乳歯が鍵!健康なお口育成アプローチ法 #04 「イヤイヤ期」との付き合い方

こんにちは。歯科衛生士の古家と申します。

私は小児期の矯正(顎顔面矯正)を行う歯科医院で小児専門歯科衛生士として従事し、今は前職の経験を活かして一般歯科にて勤務しています。

この連載では、これまで私が学んできた小児の健康な口腔育成を行うためのアプローチ方法についてお伝えしていきたいと思います。

今回は、2歳児に多い「イヤイヤ期」との付き合い方についてお話ししたいと思います。

前回までの記事はこちら

#01 プロローグ
#02 いま求められる子どもたちへのアプローチ
#03 乳歯萌出前編

2歳児に多い「魔のイヤイヤ期」とは

4回目となる今回は、2歳児についてお伝えします。

なぜわざわざ2歳児だけを切り取ったのかというと…2歳頃のお子さんにはつきものの「魔のイヤイヤ期」があるからです!

早い子では1歳半頃から見られるこのイヤイヤ期は、自我の芽生えの象徴であり、お子さんが順調に育っていることの表れでもあります。

とはいえ親御さんにとっては、喜ばしい成長と分かってはいても何かとイヤイヤと言われてしまい、とってもツライ時期。

その心情を分かった上でお話をしなければ何も伝えることはできませんし、私たち歯科衛生士はお子さんに触れることすらできません。

お口の状態などの話の前に、まずはこのイヤイヤ期との付き合い方を見ていきましょう!

なぜイヤイヤするの?

2歳頃になると、手の動きが発達し、スプーンで食べられるようになったり、ピースサインができるようになったりと、細かい作業ができるようになってきます。

早歩きや小走りもできるようになり、親御さんからするととても目が離せない時期です。

一方、お子さんからすると、自分でできることが増え、自分を認識して自我が芽生えます

「あれをやってみたい!」「これをしたい!」という気持ちでどんどんやろうとしますが、まだ言葉が上手く使えず自分の気持ちが伝えられません。

また、感情のコントロールもまだ上手くできないため、自分の欲求が通らない、自分でやりたいのにやらせてもらえない、という葛藤からイヤイヤになってしまうといわれています。

乳歯が鍵!健康なお口育成アプローチ法

イヤイヤ期へのアプローチ

では、イヤイヤ期のお子さんに対して、どう接するのが良いのでしょうか?

ポイントとしては以下の3つです。

  1. 本人に何をするか選ばせる
  2. 遊び感覚で楽しく♪
  3. 短時間で勝負!

① 本人に何をするか選ばせる

「これはイヤ!」と言われてしまうとどうしたらいいのか悩んでしまいますよね。

そんなときは、本人の「自分でやりたい気持ち」を引き出します。

2歳頃になると、2つの選択肢から1つを選ぶことができるようになってきます。

これは臨床現場でいうと、
「歯ブラシ、青とピンクどっちがいい?」
「歯ブラシとフロスならどっちがいい?」
などです。

「どっちがいい?」と声をかけることで、「自分で選べた」という満足感を持たせられるのです

これは家庭でも使える手なので、ぜひ親御さんにもお伝えしてみてくださいね。

このときに、「イヤ!」と言われたら、無理強いはせずに何がイヤなのかを確認します。

お子さん本人はまだ言葉で上手く伝えることができないため、どの行為がイヤだったのかをこちらから具体的に確認し、代替案を出すようにしましょう。

2歳児本人に選ばせる会話のフロー
2歳児本人に選ばせる会話例

② 遊び感覚で楽しく♪

慣れない場所や知らない人に緊張するのは大人も子どもも同じです。

表情だけでなく、声のトーンや声かけを多く行うなどして気をつけている方も多いと思います。

そこにプラスして、一緒に遊ぶ感覚でやってみましょう!

たとえば、持ちものや親御さんの話から、お子さんの好きなキャラクターや今気に入っているものをチェックして、それに関連する話をしたり、鳴き声を真似てみたり、歌を歌ってみたり。

歯ブラシやフロスをするときも、「歯磨き列車が通りま~す!シュッシュッ」など楽しく声かけを行いましょう

③ 短時間で勝負!

子どもの集中力はおよそ「年齢+1分間」ほどといわれています。

上手くいかない場合は時間をかけて引き伸ばしても機嫌が悪くなってしまうだけなので、手を替え品を替えて飽きさせないようにしたり、お話で気を反らせたりすると有効です。

もしお子さんがぐずってしまっても、「お子さんの集中力って年齢+1分間って言われてるんですよ~!」とお伝えして、親御さんの不安や恐縮されている気持ちを和らげてくださいね。

2歳でお口の中はどう変わる?

2歳頃になると、乳前歯と乳臼歯の間に「乳犬歯」が生えてきます。

乳犬歯は先端が尖っているため、薄切り肉や鶏のささみなど、少し硬いものでも噛み切って食べることができるようになります。2歳後半になると「E」の位置まで生え揃うので、奥歯で噛むことも少しずつできるようになります。

このようにして、徐々に食べられる食材が増えていきます。

2歳でむし歯になりやすい所は、「乳前歯の隣接面や歯頸部」と「乳歯部」です。

イヤイヤ期で上手く歯磨きができない場合は、このポイントだけでも磨くようにお伝えします。上顎の乳臼歯は特に見えにくいため、磨く体勢は膝の上での寝かせ磨きがおすすめです。

寝かせ磨き
膝の上での寝かせ磨き

声かけのコツ

見通しがつかない作業は大人でも辛いものです。

「5つ数える間だけ頑張ろう!」とカウントダウンをしたり、「後は下の歯だけだよ!」と声かけしたりするなど、終わりについて見通しをつけるとお子さんも安心してくれます

そして、何よりいちばん大切なのは褒めること

私はお子さんの診療のときには、「すっごく上手だから先生もよく見えるよ~ありがとう!」とかならず声をかけるようにしています。

一緒に頑張れたことに感謝すると、お子さんだけでなく親御さんも嬉しい気持ちになってくださり、質問をしてもらいやすい空気感が生まれますので、ぜひ試してみてくださいね♪

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#02 いま求められる子どもたちへのアプローチ
#03 乳歯萌出前編
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