みんなのメインテナンス事情 #01 福田有花さん『患者さんの口腔内について1番の理解者になる』

歯科衛生士のみなさんは、毎日どれくらいの患者さんのメインテナンスを行いますか?

診療室の状況によっては、時間にゆとりを持って行えるときもあれば、チェアータイムを短縮して行わなければいけないようなときもありますよね。

さまざまなメインテナンス方法がある中、dStyleでは、経験年数10年以上のベテラン歯科衛生士に、普段のメインテナンスについてインタビューを行いました。

このインタビューをきっかけに、ご自身のメインテナンスを見直すきっかけになれば嬉しいです。

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今回は、歯科衛生士歴11年目の福田有花さんにお話を伺いました。

福田さんは、名古屋市内の医療法人TGCたなか歯科クリニックでチーフを務め、毎日多くの患者さんのメインテナンスや、後輩スタッフの教育を行っています。

ご自身の知識や技術の研鑽にも励み、dStyleではさまざまなセミナーレポートを執筆しています。

福田さんの連載はこちら

歯科衛生士 福田有花さん
歯科衛生士 福田有花さん
現在の職場はどんな歯科医院?

当院では常勤と非常勤を合わせて、歯科医師が9名、歯科衛生士6名、歯科助手兼受付7名の、計22名が勤務しています。

幅広い診療を行っている本院に加えて、自費専門の分院が併設されており、精密治療にも力を入れています。

歯科衛生士業務としては歯周治療をメインで行っており、基本治療やメインテナンスを担当制で行っています。

メインテナンスのタイムスケジュールは?

当院のメインテナンスは、保険内で行う場合と、自費で行う場合によってチェアータイムが異なります。

保険内のメインテナンスの場合、チェアータイムは基本的に30〜40分で、とくに患者さんの多い土曜日と平日の16時半以降については、原則30分で行っています。

患者さんの口腔内の状態によって時間配分は少しずつ変えていますが、基本的には、以下のようなタイムスケジュールです。

  1. 導入、問診:3分
  2. P検査:5分
  3. ワンポイントTBI:3分
  4. スケーリング(歯間部清掃も含む):10分
  5. PMTC:7分
  6. カリエスチェック:3分
  7. 患者さんへの説明や提供文書記入、次回予約、片付け:5分

自費のメインテナンスの場合、チェアータイムは基本的に60分です。保険のメインテナンスよりも時間に余裕を持って行えるため、以下のような時間配分で行っています。

  1. 導入、問診:3分
  2. クリーニング前の洗口:1分
  3. P検査:5分
  4. 全顎染め出し、TBI:5分
  5. 術者磨き(歯間部清掃も含む):5分
  6. 歯肉縁上および縁下にエアフロー:20分
  7. スケーリング:5分
  8. カリエスチェック:3分
  9. フッ素塗布:5分
  10. 患者さんへの説明や提供文書記入、次回予約、片付け:5分
    ※下線部は、保険で行わない内容

当院では、年に1回パノラマレントゲン撮影をしています。ただし、メインテナンス時に気になる部位がある場合は、デンタル撮影もそのつど行います。

メインテナンス中の様子
メインテナンス中の様子
患者さんとのコミュニケーションはどのタイミングでとる?

施術前と施術後は、かならずコミュニケーションをとります。それ以外にも、うがいのときや施術中のスキマ時間を使って情報提供を行い、積極的にコミュニケーションをとることを意識しています。

なにげない患者さんとの会話の中に、指導のヒントが隠れていることもあるので、歯科に関係のないような話題でも注意深く聴くようにしていますね。

メインテナンス時にこだわっていること、または気をつけていることは?

長期的に通っていただきたいので、施術中に痛みを与えないことや患者さんが安心して任せられるよう対応することを心がけています。

たとえば、説明をしっかりしてほしいという方には、術前術後のより詳しい説明を。痛みに弱いという方には、可能な限り痛みに配慮した治療を。話をよく聴いてほしいという方には、カウンセリングの時間をしっかり確保するといった対応です。

患者さんの要望は人それぞれなので、一人ひとりの要望を把握し、それに合わせた対応を心がけるように努めています。

そして患者さんにはいつも、“あなたの口腔内のことをしっかり把握していますよ”とアピールすることも意識しています。

経過観察している歯があれば、問診時に「前回からお変わりありませんか?」ではなく、「経過観察している〇〇の歯はお変わりありませんか?」と具体的に伝えることで、“この衛生士さんは私のことをわかってくれている”と思われるように工夫しています。

患者さんとコミュニケーションをとる福田さん
患者さんとコミュニケーションをとる福田さん
メインテナンスに欠かせない器材は?

保険のメインテナンスでは、超音波スケーラーやPMTCペースト、シックルスケーラーなど医院にあるものを使用しています。中でも、フロスは歯肉縁下まで挿入しても痛くないオーラルケア社のフロアフロスがメインテナンスの必需品です。

オーラルケア社のフロアフロス
オーラルケア社のフロアフロス

また、自費のメインテナンスでは、EMSのエアフロー®️パウダープラスを愛用しています。短時間で痛みなくバイオフィルムが除去できるのでお気に入りです。

EMS社のエアフロー®️パウダープラス
EMS社のエアフロー®️パウダープラス
チェアタイムがいつもより短い!そんなときはどうする?

優先順位を決めて、絶対にやらなければいけないことに集中します。たとえば、業務記録などの書き物はすべて後回しにし、その分患者さんに触れる時間を長く持つようにしています。

また、患者さんから、“今日はいつもより短かった”と思われないように、普段のメインテナンス時よりも施術中の会話を多めにしています。

チェアタイムが短いときこそ、こちらが「焦っている」「急かしている」素振りを見せないように心がけていますね。

メインテナンスで悩むことはありますか?

患者さんからの協力が適切に得られていない場合、メインテナンスをしていても口腔内の状態が良くなっている実感がわきません。

定期的にメインテナンスへ通っている患者さんだからこそ、どういったアプローチをすればいいか悩むことがあります。

悩んだときはともに働くスタッフに相談し、自分が行っていないアプローチ方法がないか探っています。

今後の目標を教えてください

スキルアップのために、日本歯周病学会の認定歯科衛生士資格を取得したいと思っています。
(参照:日本歯周病学会認定衛生士ってどんな資格?

症例収集を通して患者さんにじっくり向き合うことで、自分が今まで行ってきた治療についてもより深く向き合うことができます。

自分の仕事を見つめ直し、改善していくことで、より良い治療を患者さんに提供できるようになりたいです。