日本の歯科業界にはたくさんの資格制度が存在し、その代表格が歯科医師免許・歯科衛生士免許・歯科技工士免許です。
これらの資格は「国家資格」といって、国で認められている認定制度です。しかしその他にも、「協会認定資格」「学会認定資格」など、自身のスキルアップのための資格がたくさん制定されています。
今回はたくさんある資格のうち、特に日本歯周病学会認定歯科衛生士の資格について、徹底解説しますよ!
* この記事は2021年10月6日に更新しました
1.日本歯周病学会認定歯科衛生士とは?
2.日本歯周病学会認定歯科衛生士の業務
3.資格取得の申請に必要な条件
4.資格のとりかた・費用について
5.認定歯科衛生士の働き方
1.日本歯周病学会認定歯科衛生士とは?
特定非営利活動法人 日本歯周病学会が設けている「学会認定資格」で、2021年8月現在、全国各地47都道府県で1,242名の方が取得されています。
(参照:学会と協会の違いって?)
歯周病への対応を的確かつ効率的に実施し、長期間にわたり国民の健康管理に貢献することを目的に制定された、歯科衛生士の認定制度です。
また、日本歯周病学会は数ある歯科関連学会の中でも有数の、厚生労働大臣に届け出がなされている団体でもあります。
2.日本歯周病学会認定歯科衛生士の業務
主に歯周病患者に対する検査や処置、メインテナンスなどを任され、長期間にわたって歯周組織の予後を確認します。
実際に歯周ポケットや骨レベルが改善することによって、やりがいを感じる歯科衛生士さんが多いようです。
また、資格取得のためには、日本歯周病学会の発行するガイドラインに沿った処置を行った症例を提出する必要があります。
そのため、日常の診療時にレントゲン写真や口腔内写真などの各データを記録しておく必要があります。
口腔内写真の撮影には多くのポイントがありますので、そのための訓練はもちろん、歯周病に罹患している患者さんの経過を的確に追う力が必要です。
3.資格取得の申請に必要な条件
日本歯周病学会認定歯科衛生士の認定申請には、以下の条件を満たしている必要があります。
- 歯科衛生士の免許証を有する者
- 通算5年以上の歯周病学に関する教育および研修と臨床経験を有する者またはこれと同等以上の経験を有すると認められた者
- 認定歯科衛生士申請時に実務経験単位と教育研修単位の合計を30単位以上を有する者
- 認定歯科衛生士試験に合格した者
- 認定歯科衛生士申請時に学会会員であること
(特定非営利活動法人日本歯周病学会認定歯科衛生士制度規則より抜粋)
日本の歯科衛生士免許を取得しているだけでなく、5年以上歯周病臨床に携わっていることが前提になります。
それに加えて、申請時には実務経験単位が合計30単位以上と、2回の学術大会への参加(そのうち1回は日本歯周病学会歯科衛生士教育講演の出席でも可)が必要です。
証明として、氏名が記入された参加証などを保管しておきましょう。
取得単位についてはこちら
4.資格のとりかた・費用について
上記の条件を満たせば、歯科衛生士関連委員会による認定歯科衛生士試験を受けることができます。このときに認定申請料として、10,000円(税別)を事務局に支払います。
試験は書類選考の上、年に2回、10分間の発表と5分間の口頭試問を行うケースプレゼンテーションの場が設けられています。これらに合格すると、認定資格を受け取ることができます。
合格後、登録料20,000円(税別)を支払ったら、晴れて認定歯科衛生士です!後日、認定歯科衛生士認定証と生涯研修記録簿が届きます。
書類審査
まず、書類審査に必要な以下の書類を揃えて、事務局に送ります。
- 認定歯科衛生士認定申請書
- 履歴書
- 日本歯周病学会会員証明書
- 実務経験単位証明書
- 在職機関所属長の認定歯科衛生士推薦書
- 歯科衛生士免許証のコピー
- 在職機関所属長の検印を受けた申請患者一覧表
- 症例報告書:症例の「チャート」を印刷したもの
- 症例報告書:症例の「検査値」を印刷したもの
- 症例報告書
- 認定歯科衛生士申請料の領収書のコピー
⑧ 〜 ⑩ の症例報告書については、歯周炎患者を5症例提示する必要があります。
提出形式は公式HPに記載の「認定歯科衛生士試験申請症例に関する資料の作成基準および送付方法」を満たしていなければなりません。
⑨ ⑩ のチャートや検査値については、学会指定の作成プログラムをインストールして作成する必要があります。
プログラム中にあるサンプルデータを参考にしながら、間違いがないように入力しましょう。
また、2021年度からは、歯周病の新分類への対応がはじまり、診断名の記載方法が変更されました。
「限局型」か「広汎型」であることと、「慢性歯周炎」か「侵襲性歯周炎」であることを記載した後、新分類のステージとグレードを記載する必要があります。
記載方法の例は、以下の通りです。
広汎型慢性歯周炎 ステージⅢ グレードB
限局型侵襲性歯周炎 ステージⅣ グレードC
反対に、これまでにあった「軽度」「中等度」「重度」という分類は、Ⅰ〜Ⅳのステージを記載することで記入する必要がなくなりました。
普段からステージとグレードを考えて歯周炎を分類できていると、資料作成の際もスムーズに診断できるかもしれませんね!
ケースプレゼンテーション
ケースプレゼンテーションは、書類審査で提出した5症例の中から1症例を選び、以下の流れにしたがって行います。
- 申請者は提出した症例のうち、症例1についてケースプレゼンテーションを行い口頭試問を受ける
- ケースプレゼンテーションでは、初診時、メインテナンスまたはSPT移行時、およびメインテナンスまたはSPT時の口腔内写真と検査内容を提示する
- ケースプレゼンテーションでは、初診時と直近、もしくはメインテナンスまたはSPT時のデンタルエックス線写真10~14枚法(パノラマエックス線写真も可)も提示する
- ケースプレゼンテーションの時間は10分間、口頭試問は5分間とする
- ケースプレゼンテーションは、Power Point(Windows用)で行う
(特定非営利活動法人日本歯周病学会認定歯科衛生士試験施行細則より抜粋)
認定申請に向けた症例作成については、学会会誌に毎号掲載されている「歯科衛生士コーナー」や、学会の出版物を参考にして作成するとスムーズです。
歯科衛生士コーナーのバックナンバーはこちら
その他の作成基準や送付方法は、日本歯周病学会に専用ページが用意されています。併せてご覧くださいね。
日本歯周病学会認定衛生士新規申請についてはこちら
認定歯科衛生士になるための手順はこちら
資格の更新について
日本歯周病学会認定衛生士の認定期間は5年間とされています。
更新の申請は、認定失効期日の1年前から行うことが可能。更新申請単位が取得できる研修会の開催日1ヶ月前までに行う必要があります。
更新手数料は10,000円(税別)。認定歯科衛生士の更新を申請するには、以下の書類を提出します。
- 認定歯科衛生士更新申請書
- 認定歯科衛生士生涯研修記録簿
- 更新料の受領証のコピー
更新申請・申請期日の詳細はこちら
5.認定歯科衛生士の働き方
dStyleでは、実際に日本歯周病学会の認定資格を取得した歯科衛生士の方に、インタビューを行いました。
日本歯周病学会認定歯科衛生士の植村さんは、20年前に出会った著名な先生から、インプラント治療における術前術後の口腔管理の大切さを教わったことをきっかけに、歯科衛生士にしかできない役割である歯周治療に興味を持たれたそうです。
また、認定資格の取得は、資格そのものだけではなく、取得までの道のりに魅力があるという植村さん。日々の臨床の振り返りができ、調べて学んだことは自分の財産になるといいます。
記事では、認定資格を取るまでに大変だったことや、普段の診療スタイルなどを紹介しています。
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いかがでしたか?
日々の診療のスキルアップとして、自信にもつながる資格なのではないでしょうか?まずはセミナーや講習会を受けたり、受講生の声を直に聞いてみるのもいいかもしれませんね。
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