歯科助手だからこそできる!感染管理のプロへの道 第3回 学んだ感染管理の知識は現場でどう活かす?

こんにちは、杉並区の山下スマイル歯科で歯科助手をしている定光祐美です。

私は2020年の2月に「第二種歯科感染管理者」を、同年12月に「第二種滅菌技士」を取得しました。

前回までは、歯科助手が学ぶことの大切さをお伝えしてきました。

前回までの記事はこちら

第1回 「歯科感染管理者」と「滅菌技士」の違いって?
第2回 歯科助手が感染管理を学ぶメリットとは?

今回は「学んだ感染管理の知識を、自分の働く歯科医院でどう活かすか」をお伝えしていきます。

資格を取得しても、「せっかく得た知識をいまいち歯科医院で活かしきれていない」と、もどかしさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

私が大切にしていることは、できることを探して取り組んでみることです。セミナーで学んだ知識をそのまま医院で活用できることもありますが、実際にすべてがそのようにいくわけではありません。

医院によって環境や導入している機器が違うため、学んだことを工夫して取り入れる必要があります。

「100%安全」な感染対策は存在しない?

私が実際に感染管理を学んで最初に驚いたことの一つに「グローブは完璧ではない」ということがあります。

学ぶ前は、治療のアシスタントについて、不潔な器具を触ってもグローブを装着していれば安心だと思っていました。

ですが、グローブには顕微鏡などで見ないとわからない無数の小さな穴が空いており、グローブを装着しているから安心とはいえないということを、感染管理について学ぶ中で知りました。

そのため、グローブの装着前と装着後には、きちんと手洗いをする必要があります。

新型コロナウイルスが流行し、スーパーなどでレジの店員が素手でなくビニール手袋をして対応する姿をよく見かけるようになりました。お金の受け渡しがあるため、感染対策の一つだと思います。

店員側の感染対策の視点から考えると、以下のことに気をつけると良いでしょう。

  • 一度お金を触ったグローブで清潔なものに触らない
  • グローブをした手で自分の顔周りや髪の毛を触らない
  • グローブを外した後は、すぐに手洗いをすること

上記のことを歯科医院にあてはめて考えると、受付周りに置くものや配置を工夫すること、崩れないような髪型にすることが重要といえます。

それでは無意識に顔や髪を触ってしまわないようにするにはどうしたらよいでしょうか?自分で思いついたことをやってみましょう。

感染管理は「できる範囲」でやることも大切

感染管理は、突き詰めようとするとどこまでも話が進んでいきます。そのため、実践と同時に「落としどころ」を決めることも大切にしましょう。できる範囲で効果的な取り組みを行うのが良いですね。

知識が増えると、グローブ一つとっても、「どう取り扱うのか?」と疑問が生まれてきます。

勤務先の歯科医院で一人だけが感染管理を学んでいる場合は、セミナー報告を全体に行う時間を確保することをおすすめします

そして学んだことや、そこから実際に歯科医院で取り組めそうなことをいくつか提案しましょう。

最初に考えることは、その器具はどの分類にあてはまるのか?です。これは「スポルディングの分類」を基準に考えます。
(参照:洗浄・消毒・滅菌の基準『スポルディングの分類』って何?

分類のどこにあてはまるのかによって使用済みの器具の仕分けを行います。再生処理の工程は分類によって異なります。

歯科医院全体で感染管理の意識を高めよう

私が実際に参加した、2022年12月開催の「グローバル医科歯科感染管理研究会」では本当にたくさんの学びがありました。

このセミナーで学んだことをどのような流れで勤務先の歯科医院に落とし込んだのか、具体的にご紹介させていただきます。

新型コロナウイルスの研究も進み、術前のうがいがとても効果的であること、CPC配合の洗口液がもっとも有効であることがわかりました。*1

それまで当院では、ポピドンヨード系の洗口液を使っていたのですが、セミナーで学びを得たことにより、使用していた洗口液を変更しました。

まずは一緒に参加した歯科衛生士に相談して、CPC配合の洗口液をリストアップ。そして、どの製品を使用すべきか、費用面も含め検討しました。その後は院長に報告し、洗口液変更の許可をもらい、医院全体に共有しました。

私が働く山下スマイル歯科では週に一度全体ミーティングを行います。その際に各自のセミナー報告や、医院の改善点を話し合います。

一方で、こういった話し合いの場がない歯科医院もあるかと思います。そのような場合は、まずはスタッフルームにセミナー報告書を掲示すると、興味をもってくれるスタッフさんもいるのではないでしょうか。

歯科医院での感染管理はスタッフ全員で知識を共有する必要があり、誰もが同じ工程で作業をすることが大切です。

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これまで3回にわたり「歯科助手が感染管理を学ぶことの大切さ」をお伝えしてきました。

この連載を読んでくださった方が感染管理に興味をもったり、歯科助手の仕事にやりがいや仕事の価値を感じてもらえると嬉しいです。

これからも私は感染管理の勉強を続けていきます。みなさんといつかどこかでお会いできるのを楽しみにしております!

参考文献:
*1 塩化セチルピリジニウム(CPC)は市販の濃度でも新型コロナウイルスの抑制効果があると判明-d.Style