日本の歯科業界にはたくさんの資格制度が存在します。キャリアアップのために、資格の取得を検討している歯科医療従事者の方は多いのではないでしょうか。
本記事では、数ある中から歯科衛生士の方におすすめの資格をピックアップしてご紹介します!資格ごとの難易度や費用についても解説するので、参考にしてみてください。
歯科衛生士になるためには国家資格の取得が必要
まず前提として、歯科衛生士として働くためには国家資格の取得が必要です。歯科衛生士養成機関(専門学校・短期大学・大学)を卒業し、「歯科衛生士国家試験」に合格する必要があります。
“国家試験”と聞くとむずかしいイメージがあるかもしれませんが、近年では試験の合格率は9割を上回っており、養成機関で学んだ内容が頭に入っていれば十分に合格を狙える難易度です。
試験合格後に指定機関へ申請を行い、歯科衛生士名簿への登録が完了すると免許証が交付されます。
専門分野に強くなりたい方におすすめ!各学会が定める歯科衛生士の認定資格7選
ここからは、歯科衛生士におすすめの資格をご紹介します。専門分野に強くなりたい方は、各学会が定める歯科衛生士の認定資格を検討してみると良いでしょう。
また、認定資格を取得することで歯科衛生士としての市場価値が高まるため、給料アップやキャリアアップが見込めます。
- 日本歯周病学会認定歯科衛生士
- 日本口腔インプラント学会認定歯科衛生士(インプラント専門歯科衛生士)
- 日本歯科医学振興機構臨床歯科麻酔認定歯科衛生士
- 日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士
- 日本顎咬合学会認定歯科衛生士
- 日本小児歯科学会認定歯科衛生士
- 日本成人矯正歯科学会認定矯正歯科衛生士
1.日本歯周病学会認定歯科衛生士
日本歯周病学会認定歯科衛生士とは、日本歯周病学会が設けている学会認定資格です。歯周病への対応を的確かつ効率的に実施し、国民の健康管理への貢献を目的に制定されました。
取得後は、歯周病患者に対する検査や処置、メインテナンスなどを任され、長期間にわたって歯周組織の予後を確認します。
取得には歯周病臨床に5年以上たずさわる必要がありますが、取得難易度が高いため希少価値があり、キャリアアップに繋がりやすい認定資格であるといえるでしょう。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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2.日本口腔インプラント学会認定歯科衛生士(インプラント専門歯科衛生士)
日本口腔インプラント学会認定歯科衛生士とは、日本口腔インプラント学会が設けている学会認定資格です。「インプラント専門歯科衛生士」とよばれることもあります。
口腔インプラント治療の介助およびそのメインテナンスを通し、歯科衛生士の口腔インプラントに対する専門的知識と技術を確保することを目的に制定されました。
資格取得後は、主にインプラント治療の術前・術中・術後の患者さんのケアを行います。
取得難易度は高めですが、高齢化により口腔の健康が重視されつつある昨今、今後の需要が見込まれるインプラントの資格として注目されています。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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(参考:日本口腔インプラント学会認定歯科衛生士(インプラント専門歯科衛生士)ってどんな資格?)
3.日本歯科医学振興機構 臨床歯科麻酔認定歯科衛生士
臨床歯科麻酔認定歯科衛生士とは、一般社団法人 日本歯科医学振興機構が2020年に設立した、比較的新しい認定資格です。
臨床現場において、歯科衛生士による麻酔を導入するために必要な知識と技術を提供し、安心して麻酔に取り組める環境を整備することを目的に制定されました。
歯科医師法や歯科衛生士法、厚生労働省の過去の通達などにより、ある一定の条件を満たすことで、歯科診療の補助としての麻酔を行うことが可能となります。
歯科衛生士免許取得後2年を経過していれば取得が可能ですが、実際に歯科衛生士が臨床現場で麻酔を行うには、勤務先の院長先生の理解が不可欠です。講習会では、臨床歯科麻酔管理指導医の認定講習および試験も同時に行われるため、院長先生と一緒に受講するのも良いでしょう。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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4.日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士
日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士とは、歯周病の予防と治療の為の専門的知識と技術を有する臨床歯科衛生士を育成し、地域医療への貢献を目的に制定された、歯科衛生士の認定制度です。
歯周病患者に対する検査やTBI、SRPといった歯周治療全般を任されるほか、メインテナンスでは、患者さんと関わりながら口腔および全身の健康を維持します。
経験年数や多くの取得条件を満たす必要があるため、取得難易度は高めですが、歯科衛生士から人気の高い資格です。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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5.日本顎咬合学会認定歯科衛生士
日本顎咬合学会認定歯科衛生士とは、歯科補綴をはじめ、顎咬合学分野に関する専門知識や技能の獲得を示す学会認定資格で、日本顎咬合学会により制定されました。
取得後は咬耗や骨隆起、頰粘膜圧痕など咬合にまつわる症状を含めて、患者さんの口腔内に異常がないかどうかの確認を行い、咬合のトラブルを防ぎます。
取得条件に必要な経験年数は2年ですが、加えて2名の指導医または認定医からの推薦が必要となるため注意しましょう。う蝕や歯周炎だけでなく、咬合に関する分野を学びたい方におすすめの資格です。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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6. 日本小児歯科学会認定歯科衛生士
日本小児歯科学会認定歯科衛生士とは、小児歯科医療に必要な知識や技能を認定する学会認定資格です。
主な業務内容としては、小児患者に対する蝕予防処置やメインテナンス、MFT(口腔筋機能療法)により、小児の口腔機能発達不全症の予防や、歯列不正の改善に努めます。
取得条件として、通算3年以上歯周治療にたずさわる必要があります。
平成30年の診療報酬改定により、口腔機能発達不全の小児の診断や治療が保険診療で行えるようになってから、口腔機能の異常を早期に発見できる歯科衛生士はますます求められています。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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7.日本成人矯正歯科学会認定矯正歯科衛生士
日本成人矯正歯科学会認定矯正歯科衛生士とは、矯正歯科臨床に必要な専門的知識や技術、経験の備わった歯科衛生士を認定する制度です。
1級と2級に分類されており、1級の申請には2級を有している必要があるため、まずは2級から取得する流れとなります。
取得には矯正歯科専門医療機関等にて3年以上の勤務経験が必要ですが、矯正歯科に力を入れている歯科医院や、審美歯科クリニックなどでは特に重宝される認定資格でしょう。
2級の概要
主な取得条件 | 費用の目安 |
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1級の概要
主な取得条件 | 費用の目安 |
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(特定非営利活動法人 日本成人矯正歯科学会公式HPより抜粋)
その他歯科衛生士のキャリアアップにおすすめの資格8選
続いて、歯科衛生士のキャリアアップにおすすめの資格をご紹介します。各分野で人気の資格をピックアップしたので、参考にしてみてください。
- ホワイトニングコーディネーター
- トリートメントコーディネーター
- 歯科感染管理者
- 滅菌技師(士)
- 歯並びコーディネーター
- 歯科食育士
- 糖尿病療養指導士・支援士
- 認知症サポーター
1.ホワイトニングコーディネーター
ホワイトニング コーディネーターとは、歯科審美学の中でも、特にホワイトニングの専門的知識や臨床技能をもっていると認定された歯科衛生士に与えられる資格です。日本歯科審美学会により、歯科衛生士向けの資格として制定されました。
ホワイトニング自体は歯科衛生士であれば誰でも行えますが、患者さんの中には資格の有無を重要視して歯科医院選びを行う方もいるため、取得により勤務先の評判アップに繋がる可能性があります。
また、ホワイトニング コーディネーターは臨床経験年数を問わず取得が可能なため、比較的目指しやすい資格の一つです。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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2.トリートメントコーディネーター
トリートメントコーディネーターとは、歯科治療や歯科予防の説明を行うプロのことで、「TC」ともよばれています。現在の日本では資格がなくても「TC」を名乗ることができますが、資格を取得することで、より適切なカウンセリングのスキルを身につけられます。
TCの資格扱っている団体として代表的なのが「日本歯科TC協会(JADTC)」と「TCマスターカレッジ」です。
各講義は歯科医療関連業務に従事していれば誰でも受講可能なので、気軽に取得を目指せるところが魅力です。
日本歯科TC協会(JADTC)で取得する場合
主な取得条件 | 費用の目安 |
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TCマスターカレッジで取得する場合
主な取得条件 | 費用の目安 |
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3.歯科感染管理者
歯科感染管理者は、日本・アジア口腔保健支援機構が設けている認定資格で、「第一種歯科感染管理者」と「第二種歯科感染管理者」の二種類があります。
第二種歯科感染管理は、歯科に特化した感染制御知識の習得を目的としています。それに加え、第一種歯科感染管理者は臨床現場での実務のスキル向上を目的としており、取得後には「感染管理マニュアル」を作成し、実践できるようになります。
取得に学歴などの制限はなく、誰でも受講が可能です。第一種の取得には、第二種の資格を保有していることが条件となります。
第二種歯科感染管理者
主な取得条件 | 費用の目安 |
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第一種歯科感染管理者
主な取得条件 | 費用の目安 |
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(参照:歯科感染管理者ってどんな資格?)
4.滅菌技師(士)
滅菌技師(士)は、日本医療機器学会が認定している制度で、「第1種滅菌技師」と「第2種滅菌技士」の二種類があります。
歯科に特化した感染制御知識を習得し、歯科医院における感染リスクの管理を行います。
取得条件としては、滅菌供給に関わる実務に通算3年携わっている必要があります。院内感染への対策が重要視されている昨今、滅菌対策のPRにもなることから注目を集めている資格の一つです。
第2種滅菌技師
主な取得条件 | 費用の目安 |
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第1種滅菌技師
主な取得条件 | 費用の目安 |
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(参照:滅菌技師(士)ってどんな資格?)
5.歯並びコーディネーター (日本成人矯正歯科学会)
歯並びコーディネーターとは、日本成人矯正歯科学会が認定している学会認定制度で、全国に1,400人以上もいる、人気のある資格です。
患者さんをはじめ、一般の方に矯正治療を正しく理解してもらい、身近な相談相手としてアドバイスできる人材を育成するために制定されました。
日本成人矯正歯科学会の非会員の方も対象であり、矯正歯科に携わっていれば職種を問わず取得が可能なところが特徴です。
主な取得条件 ※以下のいずれかを満たしていること |
費用の目安 |
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(参照:歯並びコーディネーターってどんな資格?)
6.歯科食育士
歯科食育士は、国際食育士協会という団体が運営している資格です。歯科に特化した内容の食育を学び、歯科衛生士であれば患者さんの口腔状態や検査結果に対して、食の知識を絡めて指導を行えます。
また、内容によってベーシック・アドバンスド・エキスパートと3つのグレードに分かれているのが特徴。取得順序は定められておらず、初回でアドバンスドやエキスパートを受講することも可能ですが、ベーシックは比較的費用がかからず難易度も低いため、取得のしやすさが魅力です。
ベーシック
主な取得条件 | 費用の目安 |
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アドバンスド
主な取得条件 | 費用の目安 |
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エキスパート
主な取得条件 | 費用の目安 |
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(参照:歯科食育士ってどんな資格?)
7.糖尿病療養指導士・支援士
糖尿病療養指導士・支援士は、日本糖尿病療養指導士認定機構が制定する「日本糖尿病療養指導士(CDEJ)」と、各地域が制定する「地域糖尿病療養指導士(CDEL)」の二種類があり、歯科衛生士が取得できるのはCDELです。
CDELは生活指導のエキスパートとして、糖尿病患者さんに対して最適な療養指導を行います。
取得条件は地域により異なりますが、「糖尿病療養支援活動の経験が2年以上必要」といったように、実務経験が定められている場合があります。詳しい情報は各団体の公式情報を確認するようにしてください。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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地域により異なる。 ※各団体のお問合せ先はこちら |
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(参照:糖尿病療養指導士・支援士ってどんな資格?)
8.認知症サポーター
認知症サポーターは、厚生労働省が認定している資格です。認知症の方やその家族の「応援者(サポーター)」として正しい知識をもち、できる範囲で手助けを行います。
他の資格と比較して、取得難易度が低いのが大きな特徴。約6時間の養成講座を受けることで誰でも取得でき、費用もかかりません。
歯科医院で働いていると、認知症を患っている方の対応が求められることもあります。特に訪問歯科診療を実施している歯科医院では、実務にも活かしやすい内容でしょう。
主な取得条件 | 費用の目安 |
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(参照:認知症サポーターってどんな資格?)
歯科衛生士の資格は種類がたくさん!興味のある分野を取得して仕事に活かそう
歯科衛生士におすすめの資格をピックアップしてご紹介しました。今回解説した資格の他にも、歯科衛生士向けの資格や認定制度はたくさんあるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
(参考:歯科衛生士・歯科助手向けの資格一覧【2022年版】)
興味のもてる分野を見つけて資格を取得し、日々の仕事に活かしましょう!