高齢者のメインテナンスにおいて、さまざまなトラブルを引き起こす「口腔乾燥」。
唾液の分泌が減少し口腔内の自浄作用や緩衝作用、再石灰化作用などが低下することで、う蝕や歯周病のリスクが高まります。
また、歯科医院での治療やメインテナンスにおいても「バキュームを入れられるのがつらい」「頬粘膜を引っ張られると痛い」といった不快感を感じる原因になります。
おそらく患者さん自身がその都度不快感を訴えるようなことはできず、知らず知らずのうちに、歯科医院での処置が苦痛と感じてしまっている方もいるかもしれません。
そんな口腔乾燥に悩む患者さんのメインテナンスで使いたいのが、「コンクールマウスリンス」と「コンクールマウスジェル」!
今回はこの2つの製品について、一般歯科でのおすすめ活用法や、患者さんのセルフケアに落とし込む方法をご紹介します♪
コンクールマウスリンス&マウスジェルのここがすごい!
何といってもこの2つの製品のすごいところは、ここまでかというほどに唾液と類似した成分でできているところです。
唾液の主な成分と、マウスリンス&マウスジェルに含まれている唾液類似成分を比較してみます。
唾液成分 | マウスリンス&マウスジェルに含まれる唾液類似成分 | 作用 |
---|---|---|
ラクトフェリン | ラクトフェリン | 抗菌作用 |
ラクトペルオキシターゼ | ラクトペルオキシターゼ | 抗菌作用 |
リゾチーム | リゾチーム | 抗菌作用 |
免疫グロブリン | 免疫グロブリン | 感染防御作用 |
成長因子 | 成長因子(EGF) | 治癒促進作用 |
含有成分がこれだけ唾液と類似しているため、生体親和性も良く、洗口剤や保湿ジェルが苦手な患者さんにも使用しやすいところが大きな魅力の一つです。
マウスリンスの殺菌剤には塩化セチルピリジニウム(CPC)、甘味剤にはキシリトールが含有されているところも、歯科衛生士としては嬉しいポイントではないでしょうか。
また、CPCは歯面への着色が起きにくいため、洗口後にお茶の摂取を控えるよう注意を促さなくてもOK!
患者さんにとっても嬉しい成分で構成されています。
メーカーおすすめの使い方とは?
メーカーがおすすめするコンクールマウスリンスとマウスジェルの基本的な使い方は、大きく分けて2つ!
まずは、患者さんが口腔内の乾燥を感じた時に、セルフケアとしてマウスリンスによる洗口とマウスジェルによる保湿を行う方法。
2つ目は、顕著な口腔乾燥を認める患者さんに、私たち歯科医療従事者がプロフェッショナルケアとして、口腔内の汚れをマウスリンスで除去した後、マウスジェルで保湿を行う方法です。
いずれも訪問歯科や介護の現場では広く使われている方法で、ご存じの方も多いかもしれません。
しかし、コンクールマウスリンスとマウスジェルはこれらの使い方以外にも、一般歯科で活用できる使い方がまだまだあります!
高齢者のメインテナンスでマウスリンスを活用する方法
冒頭でもお伝えした通り、患者さんが歯科医院での治療やメインテナンス中に不快感を感じたとしても、先生やスタッフには伝えにくかったり、伝えるタイミングがなかったりする場合がほとんどです。
そのため、あらかじめ患者さんの口腔内の状況や特徴を理解した上で、患者さんが求めていることを先回りして考える必要があります。
口腔乾燥に関しては、「口が乾燥して口臭が気になる」という患者さんや、副作用に「口渇」が含まれる薬を服用している方、長時間開口していても咽頭に唾液がたまってこない方には、特に注意が必要です。
そういった方々のメインテナンスを担当する際は、以下のようにマウスリンスを使用してみてください。
- 院内で使用しているガーゼ類(外科用ガーゼや不織布ガーゼなど)を広げて棒状にする
- 棒状のガーゼにコンクールマウスリンスを浸み込ませる
- ガーゼを歯肉頬移行部に挿入する
マウスリンスやマウスジェルを口腔内に直接塗布するよりも、ガーゼを挿入することでマウスリンスがしっかりと停滞するため、唾液や水で流れにくくすることができます。
口腔乾燥が気になる程度の患者さんには上顎のみに挿入するだけでも十分かもしれませんが、口腔乾燥の自覚症状が強い方や、術者から見ても顕著に乾燥している方には、下顎にも挿入しましょう。
うがいのためにチェアを起こす際には、挿入したガーゼを取り除く必要がありますが、この一手間を加えることで、患者さんの不快感は大幅に軽減されるのではないかと思います。
メインテナンス中に何度かチェアを起こす場合は、あらかじめガーゼを3〜4個作っておくのも一つの手です。
ぜひお試しください!
メインテナンスの仕上げにマウスジェルでマッサージ!
そしてメインテナンスの最後には、マウスジェルで頬粘膜や歯肉のマッサージを行うことで、患者さんの口腔内は爽快感でいっぱいになります!
グローブを装着した指に直接マウスジェルをつけて使用するのがおすすめですが、ガーゼ類を指に巻いてそこにマウスジェルをつけて使用してもOK。
ただし、口腔乾燥が強い方の粘膜に、乾いたガーゼをいきなり当ててしまうと、痛みが伴う可能性があるためご注意ください。
マウスジェルは垂れにくい粘度のため、まずはたっぷりと口腔内全体に塗り込み、口腔内をしっかり保湿した上でマッサージを開始。
(参考:歯科でエステ?歯科衛生士の新しい可能性「デンタルエステ」part2.歯肉マッサージ編)
その際、唾液腺開口部がある上顎の口腔前庭や舌下小丘をしっかりと指で刺激し、唾液の分泌を促進するようにしましょう。
また、義歯を装着している患者さんの場合は、メインテナンスが終わって義歯を口腔内に戻す際、義歯床の内面にマウスジェルを塗布することで、スムーズに装着することができます。
義歯を水で濡らすだけよりも、口腔内の爽快感が増すため、患者さんから喜ばれること間違いなしです!
他にもこんな使い方ができる!マウスリンス&マウスジェルがもつ可能性
口内炎ができている患者さんや扁平苔癬をもつ方の場合、炎症部位に歯ブラシや歯磨剤が当たると痛みを感じてしまいます。
ブラッシングが困難になるとプラークが停滞しやすくるため、歯肉炎も同時に発症してしまうという負のループが生まれることも。
洗口剤を使用するにしても、アルコール成分が含まれていると炎症部位にしみる可能性があるため、なかなか使用できない患者さんも多いのではないでしょうか。
口内炎であれば一時的な炎症として1〜2週間で治まりますが、扁平苔癬といった難治性の口腔粘膜疾患の場合は、その病態と長く付き合っていくことも大いに考えられます。
そういった患者さんのメインテナンスにも、今回ご紹介したマウスリンスとマウスジェルを活用できます!
扁平苔癬の病変が歯肉辺縁にある場合は、超音波スケーラーやエアブラシなどの機械はほとんど使えません。毛先が非常に柔らかいタイプの歯ブラシを用いて、根気良くプラークを除去していく必要があります。
一方で、強固に付着した分厚いプラークを除去するとなると、毛先が柔らかい歯ブラシではむずかしく、かといって力を入れるわけにもいかないため、対応に困ります。
そんな時は、1cm綿球を作り、綿球にマウスリンスを浸み込ませます。そして、その綿球を使って、プラークを拭うのです。
コンクールマウスリンスにはアルコール成分が配合されていないため、この綿球であれば、炎症部位に当たっても痛みは生じません。
炎症部位に力をかけ過ぎないように気をつけながら行いましょう。
そしてメインテナンスの最後にはマウスジェルを炎症部位に塗布し、粘膜保護を行います。
この2つの製品はセルフケア用品としても取り入れやすいため、患者さんの口腔内の爽快感を増幅させることや、炎症部位の痛みの軽減を図るためにも、ぜひメインテナンスで積極的に使用してみてください!
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高齢の患者さんのメインテナンスには欠かせない、コンクールマウスリンス&マウスジェル。一度使いはじめると使っていなかった頃には戻れなくなるような、病みつきになる製品です。
口腔乾燥は、患者さんの自覚症状として現れやすい症状の一つといえます。生活環境の変化などによるストレスの上昇や、服用薬の追加または変化によって、口腔内の状況は日々変わっていきます。
一般歯科において、口腔乾燥への対応が確立されていないところは、まだまだ多いかもしれません。
唾液腺マッサージを促したり、キシリトール製品をおすすめしたりと、簡単にできる対応もありますが、治療中の配慮やケアもできると、患者さんはより一層安心して治療を受けられるはずです。
メインテナンスで使用した製品の使い心地が良いと感じてもらうことができれば、患者さんのセルフケア用品としても導入しやすくなるでしょう。
どんな患者さんに対しても、歯科医院で過ごす時間が少しでも快適になるような工夫をしていきたいものです。