グリフィス友美が解説!アメリカの歯科衛生士事情 #02 就職活動、臨床編

はじめまして、アメリカで歯科衛生士として働いているグリフィス友美です。

みなさんは、異国で働いてみたいと思ったことはありますか?

私は、日本で歯科衛生士として勤務した後、自分の思い描く歯科衛生士像を実現するため渡米しました。

インタビューはこちら:わたしのDHスタイル #44 グリフィス友美さん

この経験から、アメリカで働く歯科衛生士について、みなさんに詳しくお伝えできればと思います。

今回は、アメリカの歯科衛生士の就職活動や、臨床についてお話ししていきます。

前回の記事はこちら

#01 歯科衛生士学校編

就職活動〜勤務までの流れ

まずは、アメリカの歯科衛生士の就職活動についてお伝えしたいと思います。

1.仕事を探す

アメリカで職場を探すには、以下の方法があります。

  1. 求人サイトで探す
  2. 友人や知人からの紹介
  3. 派遣勤務の際にスカウトされる

2.履歴書を送る

働きたい職場が決まったら、履歴書を送ります。

履歴書は、日本のように決まった形式はありません。職種によって内容は変わりますが、歯科衛生士は主に、以下の内容を記入します。

  • 卒業した歯科衛生士学校名
  • 勤務経験がある場合、前職の歯科医院名と業務内容
  • 局所麻酔、もしくはレーザーの認定資格の有無
  • 使用できる歯科用ソフトの種類(アメリカでは、ほとんどの歯科医院がDentrix、もしくはEaglesoftという診療用ソフトを使用)
  • 自分がアピールできる内容

まれに、履歴書の他に、自己紹介文や経歴などを1ページにまとめた「カバーレター」を提出するよう求められる場合もあります。

3.面接

履歴書での書類審査が通ったら、次は面接です。面接では、業務内容や給与などの詳細について話し合いを行います。

アメリカでは、歯科衛生士の業務内容や、給与は売上の何%が反映されるのかなど、希望を明確に伝えることが肝心です。

その代わり、採用側も雇用者としての希望をしっかりと伝えてきます。

このようにオープンな関係を築くことで、同じ目的をもつことができるのだと感じています。

4.ワーキングインタビュー

アメリカでは面接後に、「ワーキングインタビューはいつできますか?」と聞かれることがほとんどです。

ワーキングインタビューとは、実際に「歯科医院で半日、もしくは1日働いてみる」というものです。

実際に働くことで、採用側は歯科衛生士の仕事ぶりや、患者・スタッフへの対応の確認をしたり、歯科衛生士は仕事の流れや院内の雰囲気などを事前に確認したりすることができます。

5.契約

ワーキングインタビューを終えて、お互いの条件が合えば契約となります。

採用側の歯科医院は、日本でいうリファレンスチェックを行うところもあります。

そのため、履歴書の最後に推薦人として、前職の歯科医院の歯科医師や歯科衛生士、オフィスマネージャー、友人などの名前と連絡先を記載することも多いです。

求職者の人柄や、勤務状況などを聞くために、前職の歯科医院に連絡することはよくあります。

このようにアメリカは、日本より細かく審査をする傾向にあります。

6.勤務

いよいよ業務開始です。

アメリカの歯科衛生士科では、臨床実習で実際に患者を診て自分で考える力を育てているため、卒業後すぐに働きはじめることができます。

業務内容は、主に予防処置と歯周病治療です。

アメリカで行われる予防処置としては、プロフィーと呼ばれるスケーリングになります。

歯周病治療としてSRPもよくある治療ですが、毎日のように行われているわけではありません。

また、歯科医院によって業務形態は異なりますが、正社員は週4日勤務(月〜木曜日)がほとんど。週5日で働く歯科衛生士もいますが、あまり多くはありません。

歯科衛生士による局所麻酔

ここからは、就職後の臨床における歯科衛生士事情についてお伝えしていきます。

まず、日本の歯科衛生士との大きな違いとして挙げられる局所麻酔について。

ワシントン州では、初めて歯科衛生士の局所麻酔が認められて50年になりますが、残念ながら歯科衛生士による局所麻酔はアメリカ全州で認められているわけではありません。

例えば、ネバダ州、ノースカロライナ州では、歯科衛生士が伝達麻酔、湿潤麻酔を行うことができます。

しかし、ニューヨーク州やサウスカロライナ州では湿潤麻酔のみ。

また、バージニア州では、歯科衛生士による伝達麻酔は18歳以上の患者さんに限られています。

伝達麻酔は、三叉神経支流の根元近くに麻酔を打つため、血腫や生涯に渡る知覚障害、心不整脈、失神などを引き起こす可能性があります。そういった理由で、伝達麻酔の規制を設けているのかもしれません。

ちなみにアメリカでは現在、46州で歯科衛生士による局所麻酔が認可されています。

そして、歯科衛生士が麻酔を打つ際、歯科医師の監視が必要かどうかも州によって違います。

歯科医師の監視状況については、以下の3つに分類されます。

ダイレクト:歯科医師が近くにいる必要がある

インダイレクト:歯科医師がオフィス内、もしくは緊急時に対応できる距離にいる必要がある

ジェネラル:事前に許可があれば、歯科医師不在でも麻酔を行うことができる

キャリアアップ

次に、アメリカの歯科衛生士のキャリアアップについてお伝えしていきたいと思います。

ライセンスの更新

アメリカでは、歯科衛生士ライセンスの更新条件の一つとして、州法で定められた時間数の卒後研修を受講する必要があります。

例えば私は、ネバダ州とノースカロライナ州の歯科衛生士ライセンスを持っています。

ネバダ州では、2年ごとのライセンス更新が必要です。そのため、2年ごとに卒後研修のクラスを30時間、感染対策のクラスを4時間受講しなければなりません。

一方、ノースカロライナ州では、1年ごとのライセンス更新となります。そのため、1年ごとに卒後研修のクラスを6時間、麻酔ライセンスを持っている方は8時間の受講を行います。

このように、ライセンスの更新は、1年ごとから3年ごとまであり各州法によって変わります。

また、ライセンス更新時に、ほとんどの州でCPR(救急蘇生法)のライセンス取得が義務づけられています。

その他、卒後研修として感染対策や倫理、タバコセッション、歯科衛生士法など、州によってさまざまなクラスがあります。

ニューヨーク州では、歯科衛生士を含む医療従事者は幼児虐待のクラスの受講が必須だそうです。

スキルアップ

アメリカでは、日本のような認定資格はあまりありません。

歯科衛生士免許の他に必要となる認定資格といえば、局所麻酔とレーザー治療くらいです。

しかしながら、自分の知識と技術を維持するために、卒後研修として多くのセミナーが受講できるようになっています。

アメリカ歯科衛生士会や歯科事業者、協会などさまざまな分野からクラスが提供されており、無料のものから有料のものまでさまざまです。

卒後研修は、大まかに以下の3つのカテゴリーに分けることができます。

  1. レクチャースタイル
  2. セルフスタディー
  3. 歯科関係のボランティア

例えば、同じオンラインクラスでも、ライブ配信はレクチャースタイルとして、録画配信はセルフスタディーとしてみなされます。

最近では、ハンズオンを行う学会も多くなってきました。

このように、アメリカの歯科衛生士はライセンスを取得したら終わりということはありません。

特に、医療従事者として働く限り、知識や技術の向上に終わりはないのではないでしょうか。

個人的には、切磋琢磨する歯科衛生士仲間が多くいることはとても励みになり、このような卒後研修システムがあることは、モチベーションを保ち続けるにはとても良いシステムだと感じています。

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いかがでしたか?

アメリカの歯科衛生士事情、みなさんのイメージとギャップなどはありましたか?

日本とアメリカの違いについて、楽しく感じていただけていたら嬉しい限りです。