インプラントを腐食させない?!ジェルコートIPの本当に正しい使い方

歯科衛生士のみなさんは、インプラントの患者さんにどのようなメインテナンスを日々行っていますか?また、どのようなセルフケア用品をすすめていますか?

数年前、発売と同時に歯科界で大きな話題となった「ジェルコートIP」。

ジェルコートIPは、インプラントの腐食リスクを減らすために開発された、フッ化物無配合の歯磨剤です。

一方で、たとえインプラントを埋入している患者さんであっても、天然歯を有する場合は「フッ化物配合歯磨剤を使用するべき」といった意見もあります。

ではフッ化物無配合歯磨剤は、どのような使い方をするのが患者さんにとってベストなのでしょうか?

今回は、ジェルコートIPの正しい使い方について紐解いていきたいと思います!

ジェルコートIP

フッ化物によってインプラントのどの部分が腐食する?

フッ化物がインプラントを腐食させるリスクがあるといわれているのは、インプラントの材料に含まれる「チタン」との相性が悪いためです。

また、フッ化物のpHが5以下になると、チタンが腐食しやすくなるといわれています*1

インプラント構造の中でチタンが使用されているのは、「インプラント体(フィクスチャー)」の部分。さらに近年では、フィクスチャーと上部構造をつなぐ「アバットメント」にも使用していることが多く、種類は純チタンやチタン合金などさまざまです。

インプラントアバットメント

フィクスチャーについては、健全なインプラントであれば、口腔内に露出することがないため、腐食のリスクはほとんどないといえるでしょう。

一方アバットメントは、上部構造のマージン設定によって口腔内に露出することがあります。アバットメントが腐食すると、アバットメントの破折や、それに伴いフィクスチャーへの過剰な負荷がかかることも危惧されます。

しかし先ほどお伝えした通り、チタンが腐敗しやすくなるのは、フッ化物のpHが酸性であるときです。

そもそも歯磨剤によく含まれている「フッ化ナトリウム」や「モノフルオロリン酸ナトリウム」、「フッカ第一スズ」などは、pH6〜8と中性または弱アルカリ性です。そのため、アバットメントにおいても、腐敗のリスクはほとんどないといえるでしょう。

ただし、同じフッ化物の中でもpHが低い「リン酸酸性フッ化ナトリウム」には注意が必要です。プロフェッショナルケアでよく使われる、フッ素濃度9,000ppmのフッ化物は、インプラント周囲への使用を避けるべきだといわれています*2

「フッ化物配合歯磨剤」と「フッ化物無配合歯磨剤」を正しく使い分けよう!

では、どのような患者さんに「フッ化物配合歯磨剤」または「フッ化物無配合歯磨剤」を使用するべきなのでしょうか?

私が考える、フッ化物配合歯磨剤を推奨するべき患者さんは、以下の通りです。

  1. インプラントを埋入していない天然歯列の患者さん(補綴歯含む)
  2. 天然歯と健全なインプラントを有する患者さん

① については、みなさんが普段からフッ化物をおすすめしている患者さんだと思います。

② については、健全なインプラントを有する患者さんであれば、フッ化物による腐食のリスクはかなり低いため、天然歯に対するフッ化物の効果を優先して取り入れるべきだと考えています。

フッ化物配合歯磨剤

続いて、フッ化物無配合歯磨剤を推奨するべき患者さんは、以下の通りです。

  1. 経年変化でフィクスチャーが露出したインプラントを有する患者さん
  2. オールオン4またはインプラントオーバーデンチャーなど、口腔内に天然歯がない患者さん

インプラントは、経年変化によってフィクスチャーが露出してくることがあります。

歯周炎と同様に、炎症と力のコントロールを定期的に行っていなければ、インプラント周囲炎や過剰な咬合負担によってインプラント周囲骨が吸収してしまうのです。

アバットメントは再製が可能な材料かもしれませんが、フィクスチャーが腐食すると、最悪の場合、インプラント撤去にいたってしまいます。

そのため ① のような患者さん対しては、万が一の腐食リスクを考え、インプラント部分への積極的なフッ化物の使用はおすすめしないようにしています。

続いて ② については、「天然歯がない=フッ化物による恩恵を受ける必要がなくなる」ため、とくにフッ化物配合歯磨剤を推奨する理由がないのではと考えています。

この場合も、少しでも腐食リスクが軽減されることを優先して考え、患者さんにも同様に伝えると良いでしょう。

最強のフッ化物無配合歯磨剤「ジェルコートIP」!

数あるフッ化物無配合歯磨剤の中でもジェルコートIPをおすすめする理由は、ズバリその成分にあります!

これまでに紹介した「ジェルコートF 」と「リペリオ」の良いとこ取りといっても過言ではない、さまざまな有効成分が豊富に含まれています。

ジェルコートFとリペリオ
ジェルコートFとリペリオ

ジェルコートIPに含まれている、歯科衛生士にとって嬉しい有効成分はこちら!

  • 塩酸クロルヘキシジン
    口腔内細菌への殺菌作用
  • β―グリチルレチン酸
    歯肉の抗炎症作用
  • OIM加水分解コンキオリン
    線維芽細胞を活性化し、歯周組織の回復を促す効果
    *OIM加水分解コンキオリンについて詳しくはこちら

他にもビタミンCやEといった抗酸化成分も含まれている、とても贅沢な歯磨剤です。

とくにインプラントにおいては、周囲粘膜のメインテナンスが非常に重要です。他にOIM加水分解コンキオリンが含まれる歯磨剤はほとんどないため、“天然歯がない患者さんには絶対に使いたい!”と思う歯科衛生士も多いのではないでしょうか。

また、ジェルコートIPはその名の通りジェル状の歯磨剤のため、流動性が高く作られています。歯ブラシだけでなく歯間ブラシなどの清掃用具にも使用しやすい流動性なので、ぜひセルフケアやプロフェッショナルケアにも取り入れてみてくださいね♪

歯間ブラシにジェルコートIPをつけている様子

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「フッ化物無配合」というだけでなく、さまざまな魅力をもつ「ジェルコートIP」。

今まではフッ化物無配合であることばかりが注目されていたイメージでしたが、今回他の有効成分まで詳しく調べることで、新たな魅力を知ることができました。

インプラントの患者さんを担当する歯科衛生士には、ぜひ一度使ってみてください!

ジェルコートIPの詳細はこちら
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参考文献:
*1 吉成正雄(2017)『インプラント材料Q&A 臨床の疑問に答える マテリアル編』医歯薬出版株式会社
*2 眞木吉信、石塚洋一(2019)『月刊「デンタルハイジーン」別冊 エビデンスを臨床に! 齲蝕予防マニュアル』医歯薬出版株式会社