みなさんは普段、矯正歯科の分野とどのくらい関わりがありますか?
実際のところ、矯正歯科専門のクリニックに勤めているか、矯正専門の先生が在籍しているクリニックに勤務しているということがない限りは、なかなか詳しく学ぶ機会はないですよね。
そこでこの連載では、矯正歯科で働いていなくてもこれだけは知っておきたい、といった内容をお伝えしていきます。
ぜひ、クリニックに矯正中の患者さんが来院した時、そして矯正歯科専門クリニックで働く機会があった時のために、読んでいただければ嬉しいです。
今回は、固定式装置の種類について詳しく解説していきたいと思います♪
前回の記事はこちら
vol.1 矯正の目的とその必要性とは?
vol.2 可撤式装置って何がある?
固定式装置の種類
固定式装置は、装置が歯に固定されているため、術者のみ取り外しが可能な矯正装置です。
口腔清掃や審美的な面では可撤式矯正装置に劣りますが、その分、効果の確実性が高い矯正方法です。
今回は、そんな固定式装置の中から、よく使用されているものをピックアップしてご紹介していきます。
1.マルチブラケット装置
基本的に全歯、もしくは多数歯にブラケットやチューブを装着し、アーチワイヤーを固定します。このアーチワイヤーを介して歯の移動を行い、不正咬合を改善する装置です。
ブラケットには金属やセラミックの他、結紮の必要がない『セルフライゲーション』という装置もあります。
永久歯列期に使用され、すべての不正咬合に適応します。
2.舌側弧線装置(リンガルアーチ)
上下顎歯列弓の舌側に装着し、補助弾線によりそれぞれの歯の歯列不正の改善や固定源として使用される装置です。
乳歯列期から永久歯列期まで使用され、すべての不正咬合に適応します。
また、顎間固定法における固定源や保隙装置、加強固定、保定装置としても適用できます。
3.歯列弓拡大装置
上顎骨の歯列弓や顎骨基底部を側方に拡大し、上下顎の幅径関係の不一致を改善する装置です。
歯列弓拡大装置には2種類あり、狭窄歯列弓になった原因によって、使用する装置が変わります。
原因が骨格性の場合は急速拡大装置、歯槽性の場合は緩徐拡大装置(クワドヘリックス)が使用されます。
①急速拡大装置
kg単位の顎整形力により、2〜4週間で正中口蓋縫合を離開させ、上顎歯槽基底部を拡大する装置。
患者さん、もしくは保護者が装置のスクリューを回転させることで、1日に0.2〜0.5mmの歯列弓拡大を行うことができます。
急速拡大装置を装着することによって、最大6〜7mmの歯列弓拡大が可能といわれています。
正中口蓋縫合を離開させるため、8〜15歳頃から使用し、正中口蓋縫合が骨化する18歳頃まで適用できます。
②クワドヘリックス
口蓋側のワイヤーにより、歯列の側方拡大を行う装置。
拡大時に弾力を持たせるため、ワイヤーには4つのヘリカルループが曲げ込まれ、側方歯部まで延長されています。
混合歯列期から永久歯列期まで使用し、狭窄歯列弓および固定歯である上顎第一大臼歯の捻転改善に適応します。
4.加強固定装置
不正歯列改善への抵抗力を補強し、大臼歯の近心移動を防ぐために使用する装置です。
①ナンスのホールディングアーチ
維持バンドや主線、レジンボタンから構成される装置。
混合歯列期では保隙を目的として、永久歯列期ではマルチブラケット装置に併用する加強固定として適応します。
②トランスパラタルアーチ
維持バンドと主線から構成される装置。
混合歯列期から永久歯列期に使用し、マルチブラケット装置の加強固定として、大臼歯の捻転改善や挺出防止に適応します。
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いかがでしたか?
学生時代に学んだ歯科矯正学のおさらいになれば嬉しいです。
次回は、矯正歯科における資料収集について詳しく解説したいと思います♪
参考資料:葛西一貴(2005年)『新・歯科衛生士教育マニュアル 歯科矯正学』クインテッセンス出版会社
末石研二(2017年)『歯科衛生士のための矯正歯科治療』わかば出版株式会社矯正歯科の基礎知識