グリフィス友美のアメリカ歯科界ニュース #05 アメリカにおける睡眠時無呼吸症候群へのアプローチとは(前編)

こんにちは、アメリカで歯科衛生士として働いているグリフィス友美です。

みなさんは、「アメリカ×歯科業界」と聞いて何を思い浮かべますか?

最新の情報が飛び交っていそう、歯科医療従事者のレベルが高そう、などさまざまかと思います。

本連載では、みなさんに最新のアメリカの歯科事情をお届けできればと思います。

前回までの記事はこちら

#01 アメリカで普及中!デンタルセラピストとは
#02 アメリカにおける歯科衛生士の魅力とは
#03 アメリカの予防システム「プロフィラキシス(プロフィー)」とは
#04 歯肉炎に対する新たな治療「ジンジバルスケーリング」とは

今回からは2回にわたって、アメリカにおける睡眠時無呼吸症候群へのアプローチについてお伝えします。

グリフィス友美のアメリカ歯科界ニュース

睡眠時無呼吸症候群には3つのタイプがある!

睡眠時無呼吸症候群は、以下の3つのタイプに分類されます。

  1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
    胸部上部や頸部にかかる体重によって空気の流れが阻害されることで起こります。
  2. 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
    脳が横隔膜に収縮と拡張の信号を送らないために、被験者の呼吸に休止が生じる場合に発生します。
  3. 複雑睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
    閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群を併せたものになります。

今回は、私たち歯科衛生士がとくに知っておくべき ① についてお話ししていきたいと思います。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とは?

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、重度の低酸素症、すなわち睡眠中に十分な酸素が得られないことを特徴とする睡眠時の呼吸障害です。

OSAの患者さんがもつ主な症状は、以下の通りです。

  • いびき
  • 寝汗
  • 高血圧
  • 頭痛
  • 気分の落ち込み
  • うつ病
  • イライラ
  • 性欲減退
  • 口渇
  • 呼吸困難
  • 日中の眠気

OSAは、呼吸障害によって空気の流れが止まり、体内でストレスホルモンが分泌されることで、心臓病や脳卒中、高血圧、二型糖尿病、肝臓疾患、メタボリックシンドロームなどのリスクを高める可能性があるといわれています。

また、肥満の人は、気道の周囲にある余分な脂肪が呼吸を妨げるため、OSAを発症する危険性が高くなります。OSAによる睡眠不足が原因でさらに肥満になりやすくなることから、呼吸障害の状況がさらに悪化するという悪循環を生み出している可能性も指摘されているのです。

肥満

その他の危険因子としては、以下の通りです。

  • 男性
  • 喫煙者
  • 家族にOSAの人がいる人

これらの特徴をもつ人も、OSAになりやすいといわれています。

また、歯科に関係する睡眠時無呼吸症候群の危険因子として挙げられる主な項目は、以下の通りです。

  1. 顎の構造(下顎の大きさや舌骨の位置)*1
  2. 首の太さ
  3. 扁桃腺や舌の肥大
  4. 逆流性食道炎

そして、歯科治療中に患者さんを仰臥位にしたときに現れる「閉塞呼吸(上気道が狭くなり、呼吸が塞がる状態)」は、私たち歯科衛生士にも察知できる兆候です。

閉塞呼吸の患者さんは、治療中、呼吸しづらそうにするといった特徴があります。他の危険因子と併せて総合的に判断しましょう。

アメリカでもOSAの診査をしている歯科衛生士はごくわずか!

2018年、ミネソタ州の歯科衛生士750人を対象に行われたアンケート*2によると、89.3%の歯科衛生士は患者の口腔がん検診や血圧測定などを行っていました。

しかし、OSAの診査をしていると答えた歯科衛生士はわずか9.6%だったとのこと。

そして、歯科衛生士自身がOSAに関する知識について自己採点した平均点は、10点中3.5点とあまり高くない結果になりました。

この結果を受け、歯科衛生士は患者さんがもつ睡眠障害のリスクの有無を判断できるように、正しい評価方法について教育する必要があるといわれています。

歯科衛生士

次回は、睡眠時無呼吸症候群の評価に用いるスクリーニング方法についてお伝えします。

参考文献:
*1 L Chi, F-L Comyn, N Mitra, M P Reilly, F Wan, G Maislin, L Chmiewski, M D Thorne-FitzGerald, U N Victor, A I Pack, R J Schwab. Identification of craniofacial risk factors for obstructive sleep apnoea using three-dimensional MRI. European Respiratory Journal. 2011 38: 348-358;
*2 Y G Reibel, S Pusalavidyasagar, P M Flynn. Obstructive Sleep Apnea Knowledge: Attitudes and screening practices of Minnesota dental hygienists. American Dental Hygienists’ Association June 2019, 93 (3) 29-36;

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