こんにちは、男性歯科衛生士の齋藤脩(さいとうおさむ)です。福島県白河市出身、現在は香川県のソフィア歯科クリニックに勤務しています。
以下の記事で紹介している通り、男性で歯科衛生士という職業を選ぶ人は、まだまだ少ない状態です。
(参照:とっても貴重な存在?!男性歯科衛生士について調べてみました!)
この連載では、男性である私が歯科衛生士を目指したきっかけや、歯科衛生士になってから現在にいたるまでの経緯をお伝えしていきます。
これまでの記事はこちら
vol.1「俺、歯科衛生士になる」
vol.2「俺、歯科衛生士に向いてなかった?」
今回は、2年前に舌がんになりかけた時のことをお話ししたいと思います。
順調な生活を送る中、突然感じた舌の痛み
2017年5月のある日、右側の舌縁部に突然痛みを感じました。
鏡を見て、「口内炎のような物ができている。2週間くらい様子をみよう」と思いました。これが最初のできごとです。
この後はしばらく、ほとんど舌を気にせずに生活していました。
しかし3週間経っても口内炎は治らず、おかしいと思い、すぐに理事長に診査してもらいました。
「これはヤバいかもしれないから、口腔外科を受診しなさい」という診断でした。
診断されてから、その翌日に香川県立中央病院歯科口腔外科を受診するまで、
家を建てて1か月、大切な妻もいる。人生これからという時期に舌がんだったら、妻にも迷惑をかける。どうしよう…。
という気持ちでいっぱいで、生きた心地がしませんでした。
口腔外科を受診し、問診されている間、ずっと声が震えていた記憶があります。
この日は細胞診を行い、帰宅しました。
クラスⅢbという細胞診の結果
数日後、担当医の菅野貴浩先生(島根大学医学部歯科口腔外科学講座 講師)から検査結果についての電話があり、検査結果を聞きました。
細胞診の結果は、クラスⅢb。
(参考:日本臨床細胞学会の細胞診専門医研修ガイドライン p.23「パパニコロウ分類」)
病変がある部位を早期切除した方が良いということで、入院、全身麻酔下での手術が決まりました。
手術を受けた夜は、頻繁に看護師さんがきてくれました。しかし「ありがとうございます。」と言いたくても、うまく発音できませんでした。
また、おそるおそる鏡を見てみると、想像していたより舌がなくなっていて、ショックで泣きました。
その日は経鼻挿管していたので、鼻血がたれ、手術着は真っ赤になってしまいました。
翌日は、食事で出てきた卵スープの卵が飲み込めず、また泣きました。
手術から退院までの約1週間、固形物は食べられず、言葉もうまく発音できず、普段はポジティブな私も、さすがに精神的にやられました。
病理検査の結果、「口腔上皮性異形成(Oral epithelial dysplasia)」でした。
退院から臨床現場への復帰までは、ある程度発音ができるようになるまで、さらに約1週間かかりました。
多重がんのリスクがあるので、現在は半年に1回の検診と、年に1回胃カメラをしています。日常生活する上では、左右の舌の知覚が違うものの、それ以外は問題ありません。
この体験から伝えたいこと
もちろん歯科衛生士にとってう蝕、歯周病予防はもちろん重要です。その上で、口腔がん検診もしてほしいということです。
(参考:これって舌がん?歯科衛生士がメインテナンス時に診るべきポイント)
口腔がんは、がんの中で自殺率No.1のがんとも言われています。がんが進行した状態での治療は、QOLが著しく低下するためです。
私のように早期発見、早期治療ができれば、術前とほぼ変わらない状態を維持できます。
口腔がん検診で異常を早期発見し、患者さんの命を一緒に守りましょう。
次回は、今取り組んでいること、今後の目標についてお伝えします。
男性歯科衛生士が語る、シゴトのホンネ
vol.1「俺、歯科衛生士になる」
vol.2「俺、歯科衛生士に向いてなかった?」
vol.3「歯科衛生士の俺が、まさか舌がん?!」