北欧よりもレベルが高い?!オランダの歯科衛生士事情 vol.2 オランダの歯科衛生士になるには

こんにちは、合同会社LINK CARE代表で歯科衛生士の瀬戸口祐子です。

私は2019年から約3年、オランダに住んでいました。現地の歯科事情について研究を行う中で、日本の歯科衛生士とのレベルやシステムの違いなどに愕然としました。

この連載では、その中から私がオランダの歯科衛生士事情について学んだことを紹介していきたいと思います。

前回の記事はこちら

vol.1 日本の歯科衛生士との違い

今回は、オランダの歯科衛生士教育とその歴史についてお伝えします。

オランダの歯科衛生士になるには

オランダの歯科衛生士学校の変遷

オランダには、歯科衛生士学校が4校しかありません

歯科衛生士学校には毎年300人の学生が入学し、4年間の教育期間を経て歯科衛生士資格とともに学士号を取得することができます。

歯科衛生士教育の開始時期はオランダで1968年、日本で1948年、歯科衛生士発祥の地アメリカでは1914年と、世界的に見てもオランダは比較的歯科衛生士の歴史が浅い国といえます。

オランダで最初に歯科衛生士免許を取得した人は、オランダ国内に養成機関がなかったため、アメリカやカナダ、イギリスで歯科衛生士教育を受けたといわれています。

その後1968年からは、国内初の歯科衛生士トレーニングコースがオランダのユトレヒトで5人の学生から開始されました。

教育期間については、1992年に2年制から3年制の高職業教育学位へと延長され、さらに2002年には4年制の学士号へと延長になった経緯があります。

教育期間が延長になった背景には、オーラルケアの発展や、歯科医療でもっとも重要なことは予防であると証明されたことが関わっています。

各国の研究で口腔の健康が全身の健康に影響することが実証され、口腔内疾患の予防と早期発見の重要性が明らかとなり、歯科衛生士の役割が社会的に大きく変化したとみられます。

オーラルケアの発展

オランダの歯科衛生士学校ではどんなことを学ぶ?

オランダの歯科衛生士学校の大まかな教育内容は以下の通りです。

1年生
基礎分野の知識を取得する。歯科医療の専門家として、口腔健康管理における歯科衛生士の立場についての勉強と、歯石除去や掘削などの歯科技術を学ぶ。
2年生
理論を深め、歯科衛生士行為や役割を学ぶ。実際に患者さんの治療を開始し、コミュニケーション能力も学びながら経験を積む。
3年生
専門職の練習へと移行し、患者さんに合ったケアプランを作成する。実践的な経験と研究を行い、スキルの向上を目指す。さらにエビデンスに基づくオーラルケアや、卒業論文の制作を行う。
4年生
実習を積み重ねる。口腔ケアまたはその他の分野の総合的な実習で、最終プロジェクトを経て、専門家へと成長し卒業となる。

オランダの歯科衛生士においては、技術はもちろんのこと、コミュニケーション能力や周りのスタッフと協働・協力する能力が重要視されています。

そのため2年生からは、実際に患者さんの口腔内の治療を開始します。技術の向上とともに、コミュニケーション能力についての学びも早い段階から取り入れていることが特徴です。

オランダの歯科衛生士の教育課程では、患者さんおよび近親者の方との効果的なコミュニケーションや、多職種の医療関係者とのコミュニケーション、患者さんの行動と治療に関する情報提供などが重要視されています。

患者さんによって口腔内の状態や既往歴、さらにはコミュニケーションの取り方も違うため、早い段階から実際の患者さんに携わり、技術やコミュニケーション能力を養います。

また、地域包括ケアシステムが構築されているオランダでは、多職種の医療関係者とのコミュニケーションがとても重要とされています

卒後、臨床現場で即戦力となる教育システムが日本以上に整っているといえるのではないでしょうか。

オランダの歯科衛生士学校ではどんなことを学ぶ?

それに加えて、予防的オーラルケア分野におけるデータを取得することや、そのデータを問題分析することも学びます。分析後は診断を確定し、問題解決ができる治療計画の立案を、歯科衛生士自身が行えるよう教育されています

これは患者さんに正しく説明するためでもありますが、患者さんにさらなる治療が必要になった場合や、全身疾患と口腔疾患との関連性がみられた場合、歯科医師や内科医に紹介するケースもあるからです。

そのため、オランダの歯科衛生士には、治療計画を立てて、それを正確に伝達する能力も必要とされています

このようにオランダの歯科衛生士においては、座学や技術だけでなく、それ以上にコミュニケーション能力が重要視されています。

学生の早い段階で一人ひとりの患者さんに合わせた実習が行われ、現場で即戦力となる人材に育つ、実践的な教育カリキュラムが組み立てられているようです。

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私はオランダに住んだことで、現地の医療システムや歯科衛生士の活躍ぶりにとても感動しました。

しかし私たち日本の歯科衛生士も、法律や制度は違えど、諸国に負けない「歯科衛生士力」をもっています。幅広い視野をもち、たくさんの知識を得て、自分自身がなりたい「歯科衛生士像」に近づけるよう頑張りたいものです。

次回は、オランダの歯科衛生士の仕事内容についてご紹介します。お楽しみに!

北欧よりもレベルが高い?!オランダの歯科衛生士事情

vol.1 日本の歯科衛生士との違い
vol.2 オランダの歯科衛生士になるには