口腔周囲筋ケアセミナー 【2022年12月】山梨プレゼン大会参加レポート

2022年12月3日、高見澤亜衣さん主宰の口腔周囲筋ケア第3期認定歯科医師・歯科衛生士試験が山梨県立図書館にて行われました。

前回のプレゼン大会では、全国から集まったパワーみなぎる歯科衛生士の方から、静かながらも確かな手技力と指導力を有する方まで、さまざまな方の思いに触れられました。この経験は、私の2022年の起爆剤となってくれたように感じています。
(参照:口腔周囲筋ケアセミナー 山梨プレゼン大会参加レポート

今回のプレゼンテーションでは、初めて二名の歯科医師の方の参加がありました。

それでは早速、試験会場での様子やプレゼン発表の内容をお伝えしていきたいと思います。

口腔周囲筋ケアセミナー参加者のみなさんと(下段中央右が講師 高見澤さん、上段左から2番目が筆者)

プレゼン大会の発表内容

前回と同様に今回の試験も、各自のプレゼンテーションからはじまりました。発表者それぞれが歯科医師、歯科衛生士としての目標と口腔周囲筋ケアの活かし方について発表するという内容です。

昨年以上に各々のストーリーが読み取れる内容が展開され、みなさんの仕事への姿勢やお人柄が伺えるような、心に残る発表ばかりでした。

ここでは、とくに印象深かった3名の方のプレゼン内容をご紹介したいと思います。

プレゼンテーションでは、各自が口腔周囲筋ケアの活かし方について発表する。

1.歯科医師の課題に共感

まずは、山梨県の医療法人社団光祥会 山本歯科医院院長である瀬沼祥子先生。

歯周病治療にあたり、炎症のコントロールを行う際には力のコントロールが課題である」という内容の発表でした。

歯科医師の方も、私たちと同じような切り口から口腔周囲筋ケアに興味をもたれたのだという点に強く共感しました。

瀬沼先生は口腔周囲筋ケアを学んでから、患者さんと一緒に振り返ることが増えたそうです。

歯科医師にとって、決められた治療時間の中で、患者さんとコミュニケーションをとることは、時間のやり繰りがむずかしいと感じる状況もあるかと思います。それでも瀬沼先生は、患者さんとの対話を増やした結果、診療が楽しくなったとのこと。

今後は、口腔周囲筋ケアに関する内容をさらに細かく記録に残し、院内全体で共通理解を図ることで、“口腔周囲筋ケアの必要性が広く認知されること”を目標の一つにすると伝えました。

また、先日開催された、「口腔周囲筋ケア×中医学」について学ぶオンラインセミナーで引用されたワード「未病先防(みびせんぼう)」は、瀬沼先生の座右の銘になったといいます。

瀬沼先生の座右の銘「未病先防(みびせんぼう)」

未病先防とは、重篤な病気に発展する前に体の不調を根本から解決し、病気になりづらい身体をつくるという考え方です。

山梨は口腔周囲筋ケア発祥の地。瀬沼先生による幅広い視野からの「未病先防」で、どんな変容が患者さんに起きるのか非常に楽しみです!

2.若手歯科衛生士の頼もしさ

続いて、印象的なプレゼンだったのが歯科衛生士8年目の淡路亜子さん。

淡路さんは、口腔周囲筋ケアにより、お祖母さまが生涯自分の歯で家族と同じものを食べられたというストーリーを紹介していました。

流れ作業のような業務を行っている際には、自分に自信がもてなかったこともあったようですが、高見澤さんと同じ職場で背中を見ているうちに気持ちや行動にも変化が現れたようなのです。

歯科衛生士8年目の淡路亜子さん(左)。セミナーでは、患者さんとの対話による問診を再現。

具体的には、私にとっても懸案事項であった「総義歯の患者さんと口腔周囲筋ケア」についてお話をされていました。

上顎義歯が落ちてしまう患者さんに対し、ドクターの指示により、週に一度の口腔周囲筋ケアを一ヶ月間行ってから印象採得を実施したそうです。挿入しづらかったトレーが入りやすくなったことで、より精密な印象が採れたことが伺えました。

義歯のセット後も口腔周囲筋ケアを継続しながら、自宅でのセルフケアを提案。

その結果、義歯でしっかり噛めるようになり、以前より笑顔が見られるようになったことが嬉しい体験だったと話されていました。

プレゼンテーションの内容

一年前には、認定試験の受付を一緒に行った淡路さんの素晴らしいプレゼン。淡路さんは、「口腔周囲筋ケアは、補綴物のクオリティーを上げるはずだ」と力強く語っていました。

若い歯科衛生士さんの頼もしさにはグッとくるものがありました。

3.同世代歯科衛生士の熱い思いに共鳴

最後にご紹介させていただくのは桂田路子さん。

桂田さんは一般開業医で勤務した後、専業主婦として4人の男の子を育て、やがて行政の仕事にパートタイムで復職。子どもの手がかからなくなってきたタイミングで臨床に戻られたそうです。当時の歯科衛生士としては一般的な働き方のようにも思いました。

筆者と似たキャリアをもつ歯科衛生士の桂田路子さん

そのかたわらで、健康管理士の資格を取得。4人の子育て経験を活かしながら、お子さんが在籍されたサッカーチームで栄養指導を行ったそうです。

そこでの経験を通し、お子さんの「自分で食べ物を選ぶ力を育てたい」といった想いや、「人は食べ物でできている」といった実感が、歯科での臨床にも繋がり、高齢者の食事指導に発展したといいます。

また、その後はケアマネージャーの資格も取得したという桂田さん。みんないずれ高齢者になるが、高齢者が元気だと社会全体も明るくなる」と、力強く語っていました。

患者さん役を務める高見澤亜衣さん(左)と、問診を行う桂田路子さん(右)。

桂田さんのプレゼンには、たくさんのメッセージが込められており、中でも「密になってはいけないとされる時代に密が許された職業に誇りをもち、手のぬくもりから得た情報を大切に、患者さんがどうなってほしいかをともに考えていきたい」という言葉がとても響きました。

まとめ

今回の試験でも、発表者の方々のさまざまなストーリーを聞くことができました。

口腔周囲筋ケアと出会ったきっかけも人によってさまざまで、学んだ内容をどう活かしていきたいかもまた十人十色。でもこうして集うことで、化学反応が起きます。

この日をはじまりに、ゴールなき歯科衛生士の学びへと、さらに深い沼にはまっていくことでしょう。