日本の歯科業界にはたくさんの資格制度が存在し、その代表格が歯科医師免許・歯科衛生士免許・歯科技工士免許です。
これらの資格は「国家資格」といって、国で認められている認定制度です。しかしその他にも、「協会認定資格」「学会認定資格」など、自身のスキルアップのための資格がたくさん制定されています。
今回はたくさんある資格のうち、とくに日本歯科衛生士会認定歯科衛生士の資格について、徹底解説しますよ!
1.日本歯科衛生士会認定歯科衛生士とは?
2.日本歯科衛生士会認定歯科衛生士の業務
3.認定資格の種類について
4.認定資格の申請に必要な条件
5.資格のとりかた・費用について
1.日本歯科衛生士会認定歯科衛生士とは?
公益社団法人 日本歯科衛生士会が設けている認定資格で、2020年2月現在、全国各地47都道府県で2,870名の方が取得されています。
歯科衛生士業務の特定分野において、水準の高い業務を実践できる歯科衛生士を育成し、歯科衛生士の資質と業務の質の向上を目的に制定された、歯科衛生士の認定制度です。
2.日本歯科衛生士会認定歯科衛生士の業務
それぞれの専門分野において水準の高い歯科衛生業務を行うだけでなく、技術指導なども行います。
また、保健医療や福祉の分野においては、歯科衛生業務に関する相談や企画の調整を行ったり、教育の分野においては、歯科衛生士の教育研修に関するプログラムの立案や企画、臨床実地指導も行ったりすることも、業務のひとつです。
3.認定資格の種類について
日本歯科衛生士会の認定資格には、認定分野A・B・Cと、大きく分けて3つの分野があります。
認定分野Aについては、以下の6つの分野があります。
- 生活習慣病予防(特定保健指導-食生活改善指導担当者研修)
- 摂食嚥下リハビリテーション
- 在宅療養指導・口腔機能管理
- 糖尿病予防指導
- 医科歯科連携・口腔機能管理
- 歯科医療安全管理
また、認定分野Bには、以下の4つの分野があり、各関連学会との連携によって認定されます。
- 障害者歯科
- 老年歯科
- 地域歯科保健
- 口腔保健管理
- う蝕予防管理(2020年度より新設)
さらに、認定分野AまたはBの認定資格を取得し、一定の条件を満たした場合、認定分野C「研修指導者・臨床実地指導者」の認定資格を取得することができます。
この記事では、取得する人がもっとも多い、認定分野Aについて詳しくご紹介します。
4.認定資格の申請に必要な条件
日本歯科衛生士会には、生涯研修制度専門研修というものがあり、以下の4種類の研修があります。
- 基本研修
- eラーニング研修(DH-KEN)
- 特別研修
- 指定研修
① 基本研修には大きく分けて3つのコースがあり、全国各地でさまざまな研修会が開催されています。専門的な分野を学べる研修が多く、細かく分けると13のコースが存在します。
(参照:日本歯科衛生士会 研修会情報)
② eラーニング研修では、「DH-KEN」というサイト上で著名な講師陣による講義を受講することが可能です。
(参照:歯科衛生士のためのeラーニングサイトDH-KEN(ディーエイチケン)って?)
これらの研修を受講すると、研修に応じた単位を取得することができます。
さらに、③ 特別研修では、日本歯科衛生学会の学術大会や関連学会への参加または発表、論文投稿を行うことで単位が取得可能です。
そして、④ 指定研修では、4年制の大学や大学院を卒業した方、または専門学校などを卒業したのちに、専攻科および病院等の臨床研修課程を修了した方が、必要書類を提出することで単位を取得できます。
基本研修とeラーニング研修による取得単位は、各コース15単位を上限とし、特別研修と指定研修による取得単位も15単位が上限です。
そして、以下の各分野共通の条件を満たすと、認定資格を取得するための認定研修を受けることができます。
- 生涯研修制度専門研修において2コース、30単位以上取得していること
※分野によっては、受講するコースが指定されている場合があります - 歯科衛生士業務経験が3年以上(うち、各認定分野の実務経験1年以上)であること
- 歯科衛生士教育における実務経験は、専任教員として認定分野に関する学生教育を1年以上行っていること
- 歯科衛生士賠償責任保険に加入していること
5.資格のとりかた・費用について
日本歯科衛生士会認定歯科衛生士になるために必要なステップは以下の3つです。
STEP1生涯研修制度専門研修を受け、所定のコースと30単位を取得する STEP2認定研修を受講し、認定申請書を提出する STEP3認定歯科衛生士審査会で合格をもらう |
会員の場合、認定申請料および認定審査料はすべて無料で、認定登録料のみ10,000 円を納める必要があります。
ただし、各認定研修については、30,000〜55,000円の受講料が必要です。
それでは、認定分野Aの認定研修を受けるために必要な、それぞれの条件について細かく解説します!
① 生活習慣病予防(特定保健指導-食生活改善指導担当者)
こちらは、厚生労働大臣が定める「食生活改善指導担当者研修プログラム」に基づいて実施される分野です。
共通条件に加えて、以下のいずれかの実務経験を1年以上行っている方が条件を満たします。
- 歯科医院や病院などで、生活習慣病予防の相談や指導、教育の業務を行っている
- 保健所や市区町村、事業所および健保組合などで、地域住民に対する生活習慣病予防の相談や指導、教育の業務を行っている
- 歯科衛生士教育において、生活習慣病予防に関する教育や指導を行っている
② 摂食嚥下リハビリテーション
こちらは、多職種連携による摂食嚥下リハビリテーションの実践に必要とされる、知識や技術を習得する分野です。
基本研修の中にある「摂食嚥下機能療法の基本技術」のコースで、15単位取得することが必須です。その上で、以下のいずれかの実務経験を1年以上行っている方が条件を満たします。
- 医療機関や施設で、摂食嚥下障害者に対して摂食機能療法を行っている
- 歯科衛生士教育において、摂食嚥下リハビリテーションに関する教育や指導を行っている
③ 在宅療養指導・口腔機能管理
こちらは、地域における口腔機能管理の専門家としての知識や技術を習得する分野です。
共通条件に加えて、以下のいずれかの実務経験を1年以上行っている方が条件を満たします。
- 歯科医院や病院、高齢者介護施設などで、在宅療養者および要介護者等の口腔機能管理に関する業務を行っている
- 保健所や市区町村、または高齢者介護施設などで、口腔機能管理または口腔機能向上に関する業務を行っている
- 在宅や施設で、要介護者等の口腔機能管理に関する業務を行っている
- 歯科衛生士教育において、要介護者等の口腔機能管理に関する教育や指導を行っている
また、認定更新を行わなかった方を含め、「在宅療養指導(口腔機能管理)」または「摂食嚥下リハビリテーション」の認定研修を修了している方も該当します。
④ 糖尿病予防指導
こちらは、糖尿病予防の口腔保健指導および管理に関する専門的な知識や技術を習得する分野です。
共通条件に加えて、以下のいずれかの実務経験を1年以上行っている方が条件を満たします。
- 歯科医院や病院などで、糖尿病の患者さんなどに対して、歯周病の予防指導や治療、SPT 等の口腔保健管理、保健指導を行っている
- 保健所、市区町村、事業所および健保組合で、地域住民などに対して、歯周病の予防指導や生活習慣病および肥満予防に関する保健指導を行っている
- 学校保健において、児童や生徒に対し、歯と口の健康づくりに関する保健指導や、生活習慣病および肥満予防に関する保健指導を行っている
- 歯科衛生士教育において、上記の3項目に関する教育や指導を行っている
また、認定更新を行わなかった方を含め、「生活習慣病予防(特定保健指導)」の認定研修を修了している方や、日本歯周病学会または日本臨床歯周病学会の認定歯科衛生士の方、地域糖尿病療養指導士の資格を持つ方も該当します。
⑤ 医科歯科連携・口腔機能管理
こちらは、急性期・回復期等の口腔機能管理に関する専門的な知識や技術を習得する分野です。
共通条件に加えて、以下のいずれかの実務経験を1年以上行っている方が条件を満たします。
- 歯科医院や病院などで、歯周病の予防指導や治療、SPT 等の口腔保健管理に加え、周術期等の口腔機能管理に関する業務を行っている
- 病院などにおける多職種連携のチーム医療において、医科歯科連携の口腔機能管理に関する業務を行っている
- 歯科衛生士教育において、上記の2項目に関する教育や指導を行っている
また、認定更新を行わなかった方を含め、「摂食嚥下リハビリテーション」の認定研修を修了している方も該当します。
⑥ 歯科医療安全管理(2020年度より新設)
こちらは、歯科医療期間における歯科医療安全管理体制の確立に向けて、高度で総合的な業務の実践、指導技術を習得する分野です。
基本研修のうち「歯科診療所等における医療安全管理対策」のコースを、10単位以上取得することが必須です。なお、暫定期間として2020〜2024年度は、6単位以上取得することが条件です。
その上で、以下のいずれかの実務経験を1年以上行っている方が条件を満たします。
- 歯科医院や病院などで、医療安全管理に関する業務を行っている
- 歯科衛生士教育において、歯科医療安全管理に関する教育や指導を行っている
これらの条件を満たし、それぞれの認定研修を修了すれば、認定歯科衛生士審査会の審査が行われます。審査で合格と認められれば、晴れて認定歯科衛生士です!
※ ③ 在宅療養指導・口腔機能管理の認定資格については、認定歯科衛生士審査会で合格したのち、所定の施設実習または勤務先での実務経験を行う必要があります。
資格の更新について
日本歯科衛生士会認定歯科衛生士の認定期間は5年間とされています。
この期間中に、認定分野に関する歯科衛生士実務時間が200時間以上、各研修などによる取得単位の合計が30単位以上あることが満たされれば、更新が可能です。
更新には、手数料として5,000円を納める必要があります。
更新の申請に必要な書類は、日本歯科衛生士会の会員ページよりダウンロードできます。
日本歯科衛生士会 会員ページはこちら
更新についての詳細はこちら
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いかがでしたか?
興味のある専門分野について深く学ぶことができるため、自信にもつながる資格ではないでしょうか?
まずは日本歯科衛生士会に入り、会員の方や認定歯科衛生士の方の声を直に聞いてみるのもいいかもしれませんね♪