チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩 第5回 なぜ口腔ケアに乳酸菌?

みなさんこんにちは!歯科衛生士の山本典子です。

今回からは、いま話題の健康に良いといわれている食品やサプリメントをピックアップして、体の中でどのような働きをし、どのような効果を期待できるのかを解説していきます。

今回は、乳酸菌についてお話します。

乳酸菌と口腔内の意外な関係

乳酸菌のサプリメントを取り扱っている歯科医院も多いと思いますが、なぜ「体に良い」といわれ、歯科医院で取り扱いをしているのでしょうか?

乳酸菌とは、発酵により糖から乳酸をつくる嫌気性の微生物の総称です。

ヒトの腸内細菌は約1,000種類にものぼり、その数は約100兆個ともいわれます。重さで表すと、なんと1.0キロ~1.5キロにもなるようです。

この腸内細菌には、良い働きをする「善玉菌」、悪い働きをする「悪玉菌」、どちらでもない「日和見菌」と大きく3つに分かれます。

乳酸菌は、このうち良い働きをする善玉菌の代表的なものです。

日和見菌は、善玉菌が増えれば良い働きをし、悪玉菌が増えれば悪い働きをしてしまいます。ですから、できるだけ善玉菌を増やしておきたいですね。

では、この善玉菌である乳酸菌は、どんな良い働きをしてくれるのでしょうか。

乳酸菌

まずは、整腸作用です。

先述した通り、乳酸菌が糖から乳酸を作ることによって腸内が酸性になり、悪玉菌の発生を抑えてくれます。また、腸の働きを活発にする作用もあるため、便通の改善にもつながります。

他にもコレステロールを吸着させたり、血中のコレステロール濃度を下げたりする働きや、免疫力を高める働きもあります。

ヒトは体内にウイルスや細菌が侵入した際、免疫細胞がウイルスや細菌を異物であると認識して、攻撃することで体を守ります。

一部の乳酸菌には、この免疫細胞を活性化させてくれる働きもあることがわかっています。

口腔内でも同様に、細菌叢(フローラ)と呼ばれる口腔内細菌叢が存在します。フローラ悪玉菌が増えると、う蝕や歯周病が引き起こされてしまいます。

そこで、乳酸菌を摂取することで、増えすぎた悪玉菌を減らし、善玉菌を増やす効果が期待されているのです。

このような理由から、歯科医院では乳酸菌のサプリメントが活用されています。

乳酸菌サプリメントの摂取のコツ

腸内では、さまざまな細菌が影響し合い、助け合ってそれぞれの効果を発揮します。そのため、多様性があることが重要です。

乳酸菌のサプリメントを利用する際は、一種類の乳酸菌だけを摂取するのではなく、いろいろな種類の乳酸菌を摂ることをおすすめします。

たとえば、キムチや味噌などの発酵食品を積極的に食べたり、サプリメントもさまざまな種類の乳酸菌が入ったものを選んだりすると良いでしょう。

「乳酸菌を摂取しても胃酸で死んでしまうのではないか?」
「ずっと腸の中にとどまってくれるのか?」
と、疑問に思う人もいるかもしれません。

経口摂取した乳酸菌は、確かに3~4日程度の期間が経つと排出されてしまいます。

しかし、乳酸菌のサプリメントや製品が胃酸などで死んでしまっても、「菌体」と呼ばれる構成要素や成分が腸内に入り、良い効果を期待できます。

ですから、日ごろから乳酸菌が豊富といわれる発酵食品を摂取したり、サプリメントであれば3日に一回程度摂取したりすると良いでしょう。もし悪玉菌が多い場合は、毎日摂ることをおすすめします。

また、乳酸菌を効果的に増やすために、乳酸菌のエサになる「プレバイオティクス」も摂取すると良いでしょう。

これは、食物繊維やオリゴ糖が豊富に含まれる食品のことを指し、消化吸収されずに大腸まで届くため、乳酸菌のエサになってくれます。

話題のあの製品は?

最近、入手することが難しいといわれている人気の乳酸菌飲料があります。

もちろん、これらに含まれている乳酸菌は身体に良い効果が期待できると思います。

一方で、歯科医療従事者としては、これらの製品に含まれる糖質量をチェックしたいところです。原材料を見ると「砂糖」「脱脂粉乳」「ぶどう糖果糖液糖」「高果糖液糖」と、ほぼ糖質でしかありません。

ある製品では、100mlという小さな容器にスティックシュガー4本分もの糖質が含まれています。しかも、寝る前に飲むことが推奨されているため、これが口腔内に与える悪影響はとても大きいと思います。

患者さんに乳酸菌の摂取をすすめると「〇〇でも良いですか?」と、ほぼ糖質だけで作られているような製品について聞かれることがあるかもしれません。

その際は、製品のメリットとデメリットを適切に伝えることが重要です

歯科医院で取り扱っている乳酸菌サプリメントとの違いや、なぜ歯科医院専売のものをおすすめするのかを説明できるようにしておきましょう。

チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩

第1回 歯を守るための栄養指導
第2回 口腔内を診るときのポイント
第3回 口腔内症状と栄養素の関連性
第4回 サプリメントを効果的に使用するには?
第5回 なぜ口腔ケアに乳酸菌?