お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No4.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ②炭酸飲料について

こんにちは、お砂糖博士®︎です。おさトーークの時間がやってまいりました。

このコラムでは、皆さんの身近な「お砂糖」について、お砂糖博士®︎が自由に語ります。

「お砂糖の摂り過ぎ→むし歯」は小さな子どもだって知っていますが、もう一歩二歩深いお砂糖のことをお伝えしたいと思います。

明日の臨床に直接役に立つかは分かりませんが、昼休みの雑談には役に立つでしょう(笑)。

お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No4.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ②炭酸飲料について

前回は、清涼飲料に使われる「異性化糖」についてお伝えしました。

前回はこちら

No3.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ①異性化糖について

今回は清涼飲料編の第二弾として、特に消費量の多い「炭酸飲料」についてお伝えしたいと思います。

「炭酸飲料」は、お茶と水に次ぐシェア第3位

まずはじめに、全国清涼飲料連合会が調査した清涼飲料水の品目別の生産量シェアを見てみましょう。
(参照:清涼飲料水の品目別生産量シェア(2020年)-一般社団法人 全国清涼飲料連合会

2020年の清涼飲料水の品目別生産量シェア(引用:一般社団法人 全国清涼飲料連合)
2020年の清涼飲料水の品目別生産量シェア(引用:一般社団法人 全国清涼飲料連合)

日本ではお茶と水のシェアが合計42.1%と、この二つの品目のシェアが大きく、無糖で健全な飲料が普及しています。諸外国では炭酸飲料が大きなシェア(アメリカではシェアの30%近くが炭酸飲料)を占める中で、実は国際的に特殊な例なのです。

これについて僕は講演などで、ことあるごとに強調しているのですが、「安全な水が豊富」で「伝統的にお茶を飲む習慣」が残っている日本ならではの特徴であり、水を育む豊かな自然とそれを守ってきたご先祖様に感謝の気持ちを忘れてはいけないと思います。

お砂糖博士®︎の考える3大要注意清涼飲料とは?

先ほどの清涼飲料水品目別生産量シェアの円グラフに加え、同団体が報告した『清涼飲料水の生産量・販売金額(2020年)』を元に、こちらの棒グラフを作成しました。

そして、特に砂糖(異性化糖)の使用量が多く、シェアも大きい健康上要注意な3品目をピックアップしました。

清涼飲料水の品目別生産量シェア内訳(一般社団法人 全国清涼飲料連合のデータを元に筆者編集)
清涼飲料水の品目別生産量シェア内訳(一般社団法人 全国清涼飲料連合のデータを元に筆者編集)

お砂糖博士®︎は、炭酸飲料(シェア17.4%)、コーヒー飲料(シェア14.1%)、スポーツ飲料(シェア5.9%)を、3大“要注意清涼飲料”と考えています。

星の数ほどある清涼飲料ですが、患者さんにはこの3つの飲料に対する注意喚起が有効だと思います。

今回は、その中でもシェアの大きい「炭酸飲料17.4%」を特集していきます。

「炭酸飲料」シェアNo.1はコーラ飲料、No.2は○○○ードリンク

先ほどの表より、コーラ飲料は飲料全体シェアの5.4%を占めています。100人清涼飲料を飲んでいる人を見かけたら、そのうち5.4人がコーラを飲んでいるということです。

スーパーやコンビニに行けば「赤いパッケージのコーラ」を見かけないことはないと思いますが、特定の製品でこれだけのシェアを占めているというのはすごいことであり、「◯カ・コーラ」のブランド力が分かりますね。

そしてもう一つ、近年急成長している炭酸飲料がありますが、一体なんでしょう?

正解は、「栄養炭酸飲料」いわゆる「エナジードリンク」です。これに関しても、近年コンビニなどの店頭で広い陳列面積を占めているのにお気づきではないでしょうか?

なんと、コーラ飲料とエナジードリンクの2品目で、炭酸飲料市場の約45%を占めています。炭酸飲料を摂取するという患者さんに「コーラかエナジードリンクにハマってませんか?」と当てずっぽうで聞いても、45%の確率で当たるということになりますね。

ところで皆さん、数ある飲料の中で「炭酸飲料」が、どうしてこんなに人気があると思いますか?

「甘くて冷えてシュワシュワしたものをゴクゴクと飲みたい!」そんな衝動に駆られたこと、皆さんも一度ならず、何度もあるのではないでしょうか?

炭酸飲料は「人気があり、ついつい飲みたくなってしまう」。これには次の理由があると、お砂糖博士®︎は考えています。

炭酸飲料大人気の秘密は、依存性を引き起こす成分にあり

ここからは、今回お砂糖博士®︎がいちばんお伝えしたいことをお話しします。

炭酸飲料の内訳の中でも2大シェアを占める「コーラ飲料」と「エナジードリンク」には、依存性を引き起こしやすい「3つの共通した成分」が存在しています。

前々回のお菓子編(チョコレート特集)のコラムをご覧になった方はピンときたかもしれません。

答えは、「砂糖」「カフェイン」「炭酸水」の3つの組合せです。

皆さんの中には「“砂糖”と“カフェイン”は分かるけど、“炭酸水”にも依存性があるの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

人間誰しも生きていれば、ストレスを抱えることもあるでしょう。「一難去ったらまた一難」「人生はストレスと共にある」なんて悟りを開いている人もいるかもしれません(笑)。

“お菓子や清涼飲料など特定の食品”や“タバコや酒などの嗜好品”への依存の根本には、ストレス解消を目的とする人間の防衛本能が関係していると考えています。

「キンと冷たくてシュワシュワする炭酸水」は、気分転換、そしてストレス解消効果が高いのです。皆さんも休憩時間に「常温の水道水」では物足りないですよね(笑)?

ということで、「砂糖」「カフェイン」「炭酸水」それぞれの成分は習慣性を発生しやすいのですが、3つが組み合わさることでより強力な作用を発揮します。多くの方は「甘くて(砂糖)」「ドキドキして(カフェイン)」「シュワシュワする(炭酸)」感覚に魅了されてしまうのです。

コーラ飲料やエナジードリンクなどのカフェイン入り炭酸飲料の「嗜好品としての強烈な作用」は、同じ嗜好品である「タバコや酒」に匹敵するのではないかと考えています。

清涼飲料メーカーは消費者に習慣性を持たせて、ヘビーユーザーにすることを目的として商品開発していますので、患者さんも一度ハマった炭酸飲料から抜け出すのは容易ではないのです。

考えてみれば、コーラ飲料やエナジードリンクをついつい習慣的に飲んでしまう人が多いのに対して、「サイダーの依存症」はあまり聞いたことがないのではないでしょうか?

一般的なサイダーは「砂糖」「炭酸」の組合せで、「カフェイン」は入っておりませんので、コーラ飲料やエナジードリンクに比べて習慣性はやや発生しにくいのではないかと思います。

これで、炭酸飲料、特にカフェインの入ったコーラ飲料やエナジードリンクの「人気の秘密」がお分かりいただけたでしょうか?

タバコやお酒の規制が厳しく世知辛い現代、炭酸飲料に心の助けを求める人々が今後も増えていくことが、容易に想像できますね。

砂糖含有量の比較。さらにコーラ飲料やエナジードリンクにはカフェインや炭酸が含まれている
砂糖含有量の比較。これに加え、依存性の高いカフェインや炭酸が含まれている

エナジードリンクは若年者のカフェイン過剰摂取の要因

最後にエナジードリンクに関してお話しします。

街中で、エナジードリンクを飲んでいる若い人を多く見かけるようになってきました。エナジードリンクはカフェインの量が多いため、依存症の若者が増えるのではないかと心配しています。

食品安全委員会の発表によると、エナジードリンクには100mlあたり32〜300mgのカフェインが含まれています。コーヒーが60mg、コーラ飲料が10mgに比較しても、その含有量の多さに驚きます。
(参照:食品中のカフェイン-食品安全委員会「コカ・コーラ」に含まれるカフェイン量はどのくらいですか?-コカ・コーラジャパン

近年では容量が500mlのエナジードリンクが販売されるなど、事態は悪化しているように思えます。

いい歳の大人はともかく、若年者にカフェイン含有の飲料を飲ませるのはあまり好ましくありません。しかし、飲料メーカー側は、カッコいい「スポーツや音楽」を宣伝媒体にし、末長くヘビーユーザーになり得る「若年者」を狙っています。

若年者をターゲットにしたデザインのエナジードリンク
若年者をターゲットにしたデザインのエナジードリンク

現在ではスタイリッシュなエナジードリンクの中身の成分は、日本でお馴染みの「元気ハツラツ!オロナミン○」や「ファイト一発!リポビタン○」とほぼ同じです。

僕が子どもの頃(昭和末期~平成初期)は、栄養ドリンクは“おじさん”の飲み物で「子どもが飲む物じゃない」というのが世間の認識でした。僕自身も子どもの頃、オロナミン◯を飲みすぎて親から注意された記憶があります。

一説によると、海外メーカーが日本の栄養ドリンクの美味しさに目をつけ、若者向けに開発したのが現在のエナジードリンクと言われています。
(参照:レッドブルの元祖は日本だった? 実は二系統ある世界のレッドブル-excite

平成~令和の現在では販売側のモラルが完全に崩壊しており(特に海外大手メーカー)、エナジードリンクのみならず「とにかく売れれば良い」という資本主義の典型的な「加工食品」がスーパーやコンビニには満ち溢れています。

その結果、ご本人の意思と関係なく、むし歯やその他の生活習慣病の発生など健康上の問題となることが多いわけです。

患者さん個人だけの責任ではなく、社会が良くないし、変わっていかないといけないのですが、社会が良くなるとしてもすぐに変わるものではありません。まず我々ができることは、「この食品は一体どんな物だろうか?」という「目」を持ち、いつも製品を見続け自衛することです。

特にカフェイン大量のエナジードリンクを飲んでいる子どもに対しては「ダメなものはダメっ!」と大人が本気で止めてあげる必要があるのではないでしょうか。

今回のおさトーークでは清涼飲料、特に炭酸飲料を取り上げました。

読者の皆さん、診療室でエナジードリンクにハマった若い患者さんとお話しする機会があったら、このように伝えてみてください。

それ(エナジードリンク)は、“元気はハツラツ”な君たちが飲むものじゃなくて、“ファイト一発”が必要な(くたびれた)おじさんが飲むものだから!」と。

教えて!お砂糖博士®︎Questionコーナー

 
清涼飲料消費量は男性の方が多いのはなぜ?指導で気をつけるべきポイントはありますか?

これについては明確な答えを持ってはいませんが、まずは若い男性は活動量が多く、水分やカロリーの消費量が多いことが挙げられます。

また昨今は、急速に喫煙規制が厳しくなったため、清涼飲料に息抜きを求めている男性も多いのではないかと思います。お仕事中はお酒もNGですしね(笑)。手頃な清涼飲料に手が行く気持ちもわかる気がします。

若い男性の指導ですね…正直打つ手はありません。タバコを辞めさせるのと同じくらい大変です。

あえて言うなら炭酸飲料とコーヒー飲料の消費が多いこと考慮して、炭酸飲料は無糖のものに変えてもらう。缶コーヒーをやめて、自分で砂糖の量を決められるコンビニのドリップコーヒーに変えてもらうのは有効な手かもしれません。

ダイエット目的で炭酸水を常飲している患者さんがいます。中性または弱アルカリ性のものであれば常飲しても良いのでしょうか?

そもそも炭酸水がダイエットに効くのか?という疑問もありますが…独自で調べた限り、一般的な無糖の炭酸水はpHが5~4くらいです。
(参照:お問い合わせあった炭酸水を調べてみました-新美歯科オーラルケア公式Facebook

炭酸飲料のpHを下げているのは炭酸水そのものよりもクエン酸、リン酸などの「酸味料」です。酸味料の含まれるコーラやサイダーはpH2くらいまで下がります。

酸蝕症の主な原因は、炭酸水よりも酸味料と考えられており、したがって無糖の炭酸水は安全です、…と言いたいところなのですが、ここからは個人的な意見です。

水代わりに常飲するのは要注意だと思っております。

10代や20代前半の患者さんにおいて、無糖炭酸水の常飲が原因と思われる歯の脱灰を認めるケースを数例見かけたことがあります。乳歯や若い方の幼弱永久歯は石灰化が弱く、酸に対する抵抗性が弱いのです。

国内でこれだけの量の炭酸水が普及してからまだ歴史が浅いため、若年者への影響や長期的な影響は不明な点も多々存在します。また、炭酸の刺激性は依存性があるため、小さな子どもはなるべく飲まないようにしてあげる必要があると思います。

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次回は、食事として食べている「パン」の中には意外と砂糖が入っているという内容で、おさトーークしたいと思います。

お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」

No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ②炭酸飲料について