グリフィス友美のアメリカ歯科界ニュース #03 アメリカの予防システム「プロフィラキシス(プロフィー)」とは

こんにちは、アメリカで歯科衛生士として働いているグリフィス友美です。

みなさんは、「アメリカ×歯科業界」と聞いて何を思い浮かべますか?

最新の情報が飛び交っていそう、歯科医療従事者のレベルが高そう、などさまざまかと思います。

本連載では、みなさんに最新のアメリカの歯科事情をお届けできればと思います。

前回の記事はこちら

#01 アメリカで普及中!デンタルセラピストとは
#02 アメリカにおける歯科衛生士の魅力とは

今回は、アメリカの予防システム「プロフィラキシス(プロフィー)」についてお伝えします。

グリフィス友美のアメリカ歯科界ニュース

アメリカの歯科衛生士の主力業務である「プロフィー」とは?

アメリカの歯科衛生士が主に行う「デンタルプロフィラキシス(以下、プロフィー)」。

近年は日本でも、この「プロフィー」の概念が広まりつつあるため、何度か耳にしたことがある方もいるかもしれません。

プロフィーとは、歯周病の進行を防ぐための重要な「歯科予防ケア」のことを指します。

現在の健康状態を評価し、疾患の予防に集中するケアのため、口腔の疾患だけでなく、患者さんの総合的な健康維持を目的としています

また、プロフィーの診療はシステム化されており、すべての歯科衛生士が「同じ流れの診療」を患者さんに提供することができるようになっています。

アメリカの歯科衛生士が卒後、どの歯科医院でも即戦力として働けるのは、このプロフィーのシステムや歯科予防ケアについてのすべてを理解し、十分な知識と技術を身につけているからです。

口腔の疾患はさまざまな全身疾患に関連があるとを示す臨床研究は、日本でも多く報告されていますよね。

アメリカ歯周病学会は、プロフィーについて以下のように定義しています。

局所的な刺激因子をコントロールするために、予防診療としてスケーリングとポリッシングを行い、歯の露出面および非露出面からプラークや歯石、着色の除去を行う

(アメリカ歯周病学会より引用、一部改変)

また、アメリカ歯科衛生士協会のポジションペーパーでは、プロフィーについて以下のように述べられています。

歯肉縁上のスケーリングだけでは、健康に害をおよぼす可能性があり、歯肉縁上のスケーリングとポリッシングには治療効果がない。プロフィーは、歯の露出面および非露出面からプラークや歯石、着色などの炎症の元となる要素を除去する

(アメリカ歯科衛生士協会より引用、一部改変)

このようにプロフィーは、炎症の元となるプラークや歯石、着色を除去するといった、予防ケアおよび局所的な治療を行うことを目的としています。

予防診療および局所的な治療

スケーリングとプロフィーの違いは?

よく「スケーリング」と「プロフィー」は同じですか?という質問を受けます。

日本の厚生労働省のホームページには、スケーリングについて以下のように述べられています。

歯に付着しているプラークと歯石を専用の器具で除去すること。歯科医院で定期的に除去することが望ましい。

対してアメリカにおけるスケーリングは、「スケーリング/ルートプレーニング」のスケーリングととらえられることが多いです。

アメリカ歯科医師会の患者さん向けのホームページでは、以下のような説明文が掲載されています。

SRPは2つのパートから成り立っている。
スケーリングは、歯の露出面および非露出面にあるプラークと歯石をすべて除去し、ポケット底まできれいにする。ルートプレーニングは、歯肉と歯が再付着するように、歯根面を滑沢にする。

このように日本もアメリカも、スケーリングはプラークや歯石を除去することが主な目的となっています。

一方でプロフィーは、歯石除去というよりも、主に予防ケアを目的として行うスケーリングといえばわかりやすいかもしれません。

PMTC

実際のプロフィーの流れ

プロフィーは、患者さんのニーズに合うように3〜6ヶ月に1回、定期的に行われます。

診療の基本的な流れは、以下の通りです。 

  1. 患者さんをチェアーに誘導する
  2. 既往歴や投薬内容、患者さんの健康状態を確認する
  3. 血圧測定(毎回測定することで患者さんの基準値を把握する)
  4. X線撮影→気になる所見があれば患者さんに伝える
    ※ 通常は年に1回、咬翼法の撮影を行います。デンタル14枚法の撮影は3〜5年ごとの撮影が推奨されています。
  5. プロービングや口腔がん検診、喫煙指導、栄養指導、口腔清掃指導など、患者さんのニーズに適した指導を行う
  6. プロフィー(スケーリング)
  7. 歯科医師による検診(患者さんの希望や歯科衛生士の所見を歯科医師に伝える)
    ※ 州や歯科医院によっては、歯科医師による検診は年1回の場合があります。また、歯科医師が不在でも歯科衛生士によってプロフィーが行える州もあります。この場合、歯科医師の検診やX線撮影は行われません。
  8. 治療が必要な場合は、治療計画を作成し、患者さんへ説明する
  9. 次回のプロフィーの予約をとる

このように、すべての診療は「歯科衛生士課程=患者のニーズに合った化学的なケア」を考えた上で行われます。

もともと「プロフィラキシス」とは、医療用語で「病気を予防するための処置・手段」と定義されています。

そのため、アメリカの歯科予防ケアとして多くの歯科衛生士が行うプロフィーは、全身の健康状態を確認することからはじまります。

その後X線撮影やプロービングといった一般的な検査だけでなく、早期発見を目的とした口腔がん検診や禁煙指導、栄養指導などが行われるのです。

多くの歯科衛生士が、患者さんの総合的な健康を考えながら、長期的な目線で歯科予防ケアに励んでいます

予防歯科診療

繰り返しになりますが、プロフィーは歯の露出面および非露出面のプラークや歯石、着色を除去することにより、歯周病の進行を防ぐための「予防ケア」になります。また、局所的な歯肉炎などがある場合は、さらなる進行を防ぐための治療を行うこともあります。

今までは軽度でも重度でも、歯肉炎に対する治療としてはプロフィーが選択されていました。

しかし近年、中等度以上の歯肉炎に対しては、新しく「ジンジバルスケーリング」という治療の概念が生まれたのです。

次回は、この「ジンジバルスケーリング」について詳しく解説します。

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#01 アメリカで普及中!デンタルセラピストとは
#02 アメリカにおける歯科衛生士の魅力とは
#03 アメリカの予防システム「プロフィラキシス(プロフィー)」とは