キャリア教育から歯科衛生士不足を打開 第2回 職場体験から学べること

歯科衛生士不足が蔓延している昨今。

その一つの要因として、日本社会における歯科衛生士の認知度の低さが挙げられるのではないかと思います。

もし、進路を決める時期の子どもたちが、歯科衛生士という職業を知っていたら?

私たちができることのひとつに、「キャリア教育」があります。

この連載では、歯科衛生士の仕事をよく知らないであろう学校教員や子どもたち、またそのご両親へどのように伝えていけば良いのか、具体的な方法やポイントをお伝えしていきます。

中学生の歯科医院体験実習の様子
中学生の歯科医院体験実習の様子

「キャリア教育」はいつから行われていたの?

ところで、中学生の職場体験はいつ頃から行われていたのでしょうか。現在、30代前半のスタッフは、行った経験があると話しております。

どのスタッフも一様に「緊張した」ようですが、当たり前だと思います。中学生が関わる大人って、家族親戚や学校、習い事の先生、近所の方ぐらいですよね。

こちらにも経験がなかった分、試行錯誤を繰り返し、体験内容や指導内容は年々改良を重ねています。

キャリア教育から学べること

当院がキャリア教育をはじめた当初は、私や一部の衛生士が事前指導などを行なっていました。しかし現在は、こまかく分担をして、全員で指導にあたっています。

中学生に多くの大人と接する機会を得ることのメリットを感じてほしいというのもありますが、スタッフにとっても、指導の難しさと喜びを体感してほしいと考えてのことです。

その中には、「着替え担当」というのもあります。

中学にとっては初めての白衣。それもエプロン付きのワンピースです。エプロン自体はじめてかもしれません。そのため、こざっぱりと着こなせるように確認する担当を配置しています。

また、清潔感が必要なので、「着替え担当」のスタッフから、長い髪は束ねてくるように伝えています。それが自分自身の身だしなみを振り返るきっかけになるかもしれません。

颯爽と着替えた後は、全体の前で簡単な挨拶をしてもらいます。

大人がたくさんいる中で、話をするという第一関門。なにか発話できたら、それだけで素晴らしいことです。学校側でも想定していることだと思います。

患者さん同様、生徒さんも多様です。毎回全員に同じことをしてもらう必要はありません。

性格や手先を使うことの得手不得手。適応力に合わせて、できそうなことを見つけてあげ、自信に繋げてほしいと思います。これは、スタッフ同士の教育にも通じるところなのです。

若手スタッフが中学生にレクチャーする様子
若手スタッフが中学生にレクチャーする様子

実習で学んでもらうこと

たとえばガーゼ折り。実習では、外科に使うガーゼを畳んでもらいます。

普段は効率化を図るため、折らないものを使用したりしているのですが、中学生が体験している間はあえて折っています。ずーっと立っているのが疲れてしまう人もいますので、そんな時は座って折ってもらいます。

それは滅菌されて、外科の止血に使われます。実際に折ってもらって、滅菌工程を見せ、外科処置を見ることで、自分の行なったことが患者さんの役に立っているということを感じてもらっています。(血が苦手そうな人には見せません。)

そうした工程を繋げ、人のために働くことの喜びを伝えることが、キャリア教育の一つだとも思います。

実習中に疲れたと言う生徒がいたら、「おうちの方も仕事から帰ったら同じように疲れていると思うけれど、みんなのために食事の支度をしたり片付けをしたりしているんじゃないかな」というようなことも付け加えます。

ガーゼ折り体験の様子
ガーゼ折り体験の様子

また、様子を見に回ってくださる学校の先生にもいろんな方がいらっしゃいます。

先生が、「歯医者苦手なんです」とキョロキョロして舞い上がってしまうこともあります。他にも、先生の姿を見て、安心したような笑顔を見せる生徒さんに信頼関係を垣間見ることも…。

私たちは果たして修業してこい!と、知らない医院さんに放り込まれたとき、自分らしく振る舞うことができるでしょうか。

そんなことを想像しながら、生徒の心境を慮り、でも若い世代に伝えなければいけないことがあることをスタッフにも感じてほしい!それも、「キャリア教育」の狙いです。

(次回につづく)

キャリア教育から歯科衛生士不足を打開

第1回 キャリア教育ってなに?
第2回 職場体験から学べること