お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No5.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!パン編

こんにちは、お砂糖博士®︎です。おさトーークの時間がやってまいりました。

このコラムでは、皆さんの身近な「お砂糖」について、お砂糖博士®︎が自由に語ります。

「お砂糖の摂り過ぎ→むし歯」は小さな子どもだって知っていますが、もう一歩二歩深いお砂糖のことをお伝えしたいと思います。

明日の臨床に直接役に立つかは分かりませんが、昼休みの雑談には役に立つでしょう(笑)。

前回までのおさトーークはこちら

No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.清涼飲料編 ②炭酸飲料について

お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」No5.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!パン編

日本人は菓子類、清涼飲料、パン類の加工食品の3品目で、国内消費量の半分以上の砂糖を摂取しています。

これらの3品目は砂糖使用量で言えば、「三大加工食品」と言っても過言ではありません。

国内の砂糖の用途別消費量(精糖工業会のデータを元に筆者編集)
国内の砂糖の用途別消費量(精糖工業会のデータを元に筆者編集)

前回までにチョコレートを中心に「菓子類」と、「清涼飲料」についてお伝えしました。

加工食品シリーズでは最後になりますが、今回は砂糖の消費内訳第3位の「パン類」について、「おさトーーク」していきたいと思います。

パン大好き! 日本人は米よりパンにお金をかける!?

「あなたの主食は何ですか?」と聞かれたら…「お米です!」と皆さんは自信を持って答えられるでしょうか?

「そう言えば“朝”は食パン食べて、“昼”も近くのベーカリーでパンを買って食べたし、“夜”は多分ご飯かな?でも、外食だったらパスタにしちゃうかも」なんていう方も結構多いのではないでしょうか?

きっと患者さんも同じく、パン食の人は意外と多いはずです。

約3,000年前の縄文時代以降、日本では伝統的に米を主食としてきましたが、小タイトルにもある通り、日本人は2011年を境に、米よりもパンにお金をかけるようになりました。
(参照:家計調査(家計収支編)時系列データ-財務省統計局

最新の令和3年の年間支出額では、米が21,862円、パンが31,456円と、その差は開く一方。パンは米の1.5倍も支出されていることが分かります。

2011年以降、日本人は米よりパンにお金をかけている(総務省統計局「家計調査(家計収支編)時系列データ」より)
2011年以降、日本人は米よりパンにお金をかけている(総務省統計局「家計調査(家計収支編)時系列データ」を改編)

パン食の注意点①、日本の「パン」には砂糖が多い!?

「パンだって原料は小麦だし、主食にしてどうしていけないの…?」と疑問に思う方もいるかもしれません。

どうしてパン食は注意が必要か?お砂糖博士®︎的な観点から解説します。

まずこの写真を見て下さい。

この写真、それぞれのパンの横にスティックシュガー(3g)が置いてあります。

アンパンやメロンパンなどの菓子パンは砂糖が入っていると覚悟?の上、食べていると思いますが、食パンやロールパンなど、一見砂糖が入っていないように見えるパンでも、かなり量の砂糖が添加されていることが分かります。

食パン一枚(4枚切り)にはスティックシュガー1.8本=5.4gの砂糖が入っています。ロールパン3個(100g)にはスティックシュガー2.2本=6.6gの砂糖が入っています。
(参照:「日本のパンには砂糖が多い」展のお知らせ-お砂糖博士®の情報発信サイト

食パンにジャムなどを塗ったら、パンと合わせて10g以上の砂糖を一度に摂取することになります。栄養士の幕内秀夫先生は、これを「恥(砂糖)の上塗り」と表現されていました(笑)。

また、日本のパンには砂糖だけでなく油脂も添加されています。代表的な食パンの成分表をみても、小麦粉に次に砂糖、続いてショートニングとマーガリン(油脂)と記載されています。

日本の食パンは小麦粉に対して砂糖と油脂の合計が10%以内に収めなければいけない決まりがあり、それ以上多い場合は菓子パンとして分類されます。

推定ですが、図に示した代表的な食パン(○○○ソフト)は小麦粉に対して砂糖は7.2%、油脂は2.8%程度入っているのではないかと思われます。

「成分表の3つ目までに砂糖が入っていればそれはお菓子」であると言われていますが、日本の食パンはお菓子に近いと認識して食べる必要があると考えています。

一方でパンを頻繁に食べる国の、日常的に食べられるパンには砂糖が入っていません。

フランスパンやドイツの黒パンなど、現地の人が日常的食べているパンの原料は「小麦粉、塩、イースト」であり、砂糖は入っていません(上図の参考)。

日本でも人気のあるフランスのクロワッサンは砂糖たっぷりの甘いパンですが、本来は祭事の際に食べられていた特別なパンでした。甘いパンを毎日食べ続けていては、味覚的にも飽きてしまうということもあるでしょう。

「砂糖が多い日本のパンを日本人が毎日食べていること」は視点を変えてみると、「米」主食の我々日本人が毎日3食「おはぎ」を食べているような感覚ですね。

これでは砂糖摂り過ぎで体を壊しますし、すぐに飽きてしまうでしょう。

菓子パンは「パン」なのか?「菓子」なのか?

菓子パンにいたってはもはや申し上げるまでもなく、「砂糖が多い」ということですね(笑)。

皆さんに注意してもらいたいのは、菓子パンは砂糖や油脂の量から考えるとケーキに近い食品ですが、これを食事のつもりで食べている人が多い点です。

菓子パンは語尾に「パン」とついているためか、おにぎりなどと同じく主食とされがちです(「パン菓子」と名前を変えればいいのに…とお砂糖博士®︎はいつも呟いていますが…)。

毎日食事の代わりにケーキを食べていたら罪悪感を感じると思いますが、菓子パンはネーミングのせいか、どうもそういう意識が生じにくいのです。

う蝕の多い患者さんで「ジュースもお菓子もあまり摂らないのですけど…」という方がいましたら、「パンや菓子パンはよく食べてませんか?」と聞いてみてください。意外とパン食中心の人は多いはずです。

パン食の注意点② 「パン」は副菜(おかず)にも砂糖が多い!?

もう一つの注意点は、意外な盲点かと思いますが、パン主食に合わせる「副菜」に砂糖が元々含まれているものが多いことです。

朝ごはん実行委員会が2002年に実施した「作り手の意識から見る朝食実態調査」によると、朝食はパン食メイン派(48.6%)が、ごはん食メイン派(36.1%)よりも多い結果に。
(参照:農政.農協ニュース-農業協同組合新聞

ここで、洋食メニューの内訳を見ていただきます。

ごはん、みそ汁、漬物(野菜)、ひじき、豆腐、焼き魚 食パンスクランブルエッグベーコン、野菜(ドレッシング)、バター、コーヒー(ミルク

パン食の中で「砂糖と油脂と精製小麦」が含まれている食品を赤文字にしました。パン好きの皆さんは、主食と副菜の合算で、知らずに砂糖摂取が多くなるのです。

“パン依存症”脱却の鍵は「米」。米食は日本を救う!?

日頃の砂糖摂取量を減らすために、砂糖を多く含む加工食品の一つである「パン類」について特集しました。

日本のパンには砂糖が多く、そうとは知らずに砂糖を摂取してしまっていることへの注意は、患者さんやご自身の砂糖摂取を減らすポイントになるはずです。

パン食を減らすことのもう一つの大きな意味をお伝えします。

令和4年現在、世界情勢もあり、「小麦、砂糖、食用油」などの輸入価格が高騰し続けています。これらはパンの原材料であり、日本のパン業界は企業努力も虚しく値上げをせざるを得ない状態です。

また、日本の食糧自給率(カロリーベース)は現在38%程度です。しかも、パンの主原料である「小麦」「砂糖」「油脂類」は特に自給率が低く、ほとんど海外依存です。
(参照:日本の食料自給率-農林水産省

小麦 野菜 果実 魚介類 砂糖 油脂類
97% 15% 80% 38% 55% 36% 13%

令和2年度の品目別自給率(農林水産省「食料自給率の推移」を一部改編)

もし何らかの事情で輸入が途絶えた場合、我々の食は一体どうなってしまうのか?このような視点も食生活を考える上では意識しておかなければいけません。

「パン食を少し控えて、米食中心に切り替える」は、国内での自給率が高い「米」「野菜」「魚介類」の消費を増やすことになります。あなた自身の健康だけでなく、日本の食糧事情改善にも繋がると思えば、「一石二鳥」ということですね。

教えて!お砂糖博士®︎Questionコーナー

マーガリンやショートニングに含まれる「トランス脂肪酸」の危険性は以前からよく指摘されていますが、バターについては問題ないのでしょうか?

油博士ではないので(笑)、ちょっと調べました。バターは80%近くが油脂です。マーガリンやショートニングはバターを模倣して作られていますので、こちらも油脂量80%程度とバターと同じです。

近年問題とされているトランス脂肪酸は、バターにも含まれていますが、マーガリンやショートニングの「5分の1」程度です。
(参照:トランス脂肪酸の低減について-日本マーガリン工業会

したがってよほど取り過ぎなければ問題ないと思います。また「バター」は高価ですし、また砂糖と同じく“単体で大量に摂ることはない”と思います。

一方、「マーガリンやショートニング」は現在の加工食品に大量に含まれており、気づかず摂取していることが多いので注意していただきたいと思います。

離乳食でパン粥を与えるのも、避けた方が良いでしょうか?

まず本日の内容からお分かりのように、日本のパンは砂糖を含むのであまり推奨はしません。

また「小麦アレルギー」の問題、煮込むのに「牛乳」を使用するなど、子どもによっては注意が必要になるかもしれません。

お米のストックがない時など、たまの機会にパン粥を与える程度であれば問題はないのではないかと思います。

***

数回に渡り、砂糖を多く含む加工食品についてお話ししてきました。

次回は少し肩の力を抜いて、お砂糖の雑学について「おさトーーク」したいと思います。

お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」

No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ②炭酸飲料について
No5.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!パン編