こんにちは、お砂糖博士®︎です。おさトーークの時間がやってまいりました。
このコラムでは、皆さんの身近な「お砂糖」について、お砂糖博士®︎が自由に語ります。
「お砂糖の摂り過ぎ→むし歯」は小さな子どもだって知っていますが、もう一歩二歩深いお砂糖のことをお伝えしたいと思います。
明日の臨床に直接役に立つかは分かりませんが、昼休みの雑談には役に立つでしょう(笑)。
前回までのおさトーークはこちら
No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.清涼飲料編 ②炭酸飲料について
No5.パン編
2022年7月現在、「ヤクルト1000」の売れ行きが好調です。1日に100万本以上売れていて、生産が追いつかず、一部ではプレミア価格が出ているなどネットでも話題になっています。
お砂糖博士®︎もぜひ賞味してみたいとコンビニやスーパーを探し回りましたが、一度も目にすることはありませんでした(涙)。
「乳酸菌飲料」の売り上げが食品スーパーマーケットで前年同月比14.4%伸長、ドラッグストアで同29.0%伸長し、伸び率TOP20の上位にランクインしました。食品スーパーマーケットでは、2021年10月に発売され、メディアでも話題になっている「ヤクルトY1000」が乳酸菌飲料カテゴリの売り上げをけん引しています。
(参照:乳酸菌飲料の売上金額が大きく伸長!「ヤクルトY1000」の影響も-PRTIMES)
と、記事にあるように、「乳製飲料」全体の売上が伸びており、気になりましたので今回は「乳製飲料」について調べてみました。
- 乳製飲料の消費量(生産量)はどのくらいなのか?
- 乳製飲料の砂糖量はどのくらいなのか?
今回のコラムでは「乳製飲料」の疑問点を二つに絞り解説したいと思います。
乳製飲料のシェアはわずか2.4%、氷山の一角
全国清涼飲料連合会で公開されている最新データ(2020年版)を見てみると、清涼飲料全体の生産量が21,579,000kLに対して、乳製飲料は523,900kL。乳製飲料の生産量シェアは全体の2.4%と小さいため「その他飲料」に含まれます。
(参照:清涼飲料水の品目別生産量シェア(2021年)、品目別生産量推移(2017~2021年)-一般社団法人 全国清涼飲料連合会)
炭酸飲料やコーヒー飲料、果実飲料、スポーツ飲料など、砂糖を多く含むメジャーな飲料に比べると、乳製飲料のシェアの小ささが分かります。
これは「無視できるレベル」ともいえますし、はたまた清涼飲料業界の「氷山の一角」と捉えることもできます。
2016年~2020年の推移を見てもそのシェア率に大きな変化はないことが伺われますが、「ヤクルト1000」の影響が乳製飲料全体のシェア率をどのくらい伸ばすのか、2022年の結果を注目しているところです。
ヤクルトは健康にいいのか?
お砂糖博士®︎としては、ヤクルトは比較的健康志向の高い人が飲むものと捉えていますので、そこまで目くじらを立てる注意する必要はないかと思います。
しかしヤクルトに類似した製品として、その他の多種類を含む乳製飲料(カルピス、ピルクル、ビックル、グングングルトなどなど)も販売されており、これらはすべて大量の砂糖が含まれています。
特にお子さんに頻繁に飲ませている親御さんには、注意喚起が必要かと思います。「健康のために」飲ませている方も意外と多くいらっしゃるようです。
乳製飲料の砂糖量はどのくらいなのか?
実は…乳製飲料の砂糖量を計算するのは難しい、というよりできません。
製品の「栄養成分表示」を見てみると、「炭水化物」が何gと書いてありますが、その炭水化物の内訳が記載されていないからです。
ここで、ヤクルト1000の栄養成分表示を見てみましょう。
(引用:ヤクルト1000-株式会社ヤクルト本社)
ヤクルト1000 |
---|
原材料 |
砂糖(国内製造)、脱脂粉乳、ぶどう糖果糖液糖、高果糖液糖/安定剤(大豆多糖類)、香料 |
内容成分・アレルギー表示 |
内容量:100ml 熱量エネルギー(kcal):63 たんぱく質(g):1.5 脂質(g):0.1 炭水化物(g):14.1 食塩相当量(g):0〜0.1 その他の成分: アレルギー特定原材料:乳、大豆 |
原材料名をみると、砂糖、脱脂粉乳、ブドウ糖果糖液糖などが記載されています。含有量の多いものが先に記載されますので、「砂糖が一番多い」ということは分かります。
しかし、脱脂粉乳(牛乳の成分から脂肪を取り除いたもの)にも同じ糖類である「乳糖」が含まれるため、肝心の「砂糖の含有量は何gか?」というのが分からないのです。
コーラや果実飲料やスポーツドリンクにはこの「乳糖」は含まれないため、これらの清涼飲料は炭水化物=砂糖と考えて差し支えないのですが、「乳糖」を含む乳製飲料は計算が少し厄介です。
「そういわれるとますます乳製飲料の正確な砂糖の量を知りたい!」というのが人情というものです。
安心してください、お砂糖博士®︎が良い資料を見つけてきました。「日本食品表示表順成分表2020年版(8訂)炭水化物成分表」です。
この表は、普段食べる食事、お菓子、ジュース、フルーツなどの代表的な食品の、炭水化物の内訳を分析したものです。ここに乳酸菌飲料の炭水化物の内訳が記載されています。
食品名 | 乳酸菌飲料・乳製品 |
水分 | 82.1g |
でんぷん | – |
ブドウ糖 | 4.9g |
果糖 | 4.8g |
ガラクトース | 0g |
しょ糖 | 3.9g |
麦芽糖 | 0g |
乳糖 | 1.5g |
トレハロース | – |
乳酸菌飲料100gあたりの利用可能炭水化物内訳(引用:炭水化物成分表編-文部科学省)
商品名までは分かりませんが、これを参考に、ヤクルトの炭水化物の内訳を推定して解説したいと思います。
ヤクルト1000に含まれる砂糖
表の炭水化物の内訳を円グラフにしてみました。
ショ糖はブドウ糖と果糖が結合した二糖類です。円グラフ上に赤丸をつけたショ糖、ブドウ糖、果糖の3つの糖類はむし歯やその他生活習慣病のリスクも高いものとしました。
この3つの糖類を合わせたものを大まかに「砂糖」として換算しますと、乳製飲料の内訳の不明な炭水化物のうち約90%が「砂糖である」と考えることができます。
ヤクルト1000であれば「炭水化物」表記は14.1gなので、その90%が砂糖だと考えると一本あたり約12.7gの砂糖が含まれていると予測ができます。
また、乳製飲料の炭水化物のうち、10%を占める「乳糖」はブドウ糖と脳糖(ガラクトース)の2つの単糖が結合した二糖類です。乳糖は牛乳(無調整)にも5%ほど含まれている糖類です。お口の中でほとんど分解されませんのでショ糖に比べむし歯のリスクは低いとされています。
日本人をはじめ、古くから牛乳を飲まない民族は乳糖の分解酵素を持たないため、大量に摂取するとお腹がゴロゴロします(緩くなります)。
読者の皆様の中で、牛乳をたくさん飲むとお腹が緩くなる方はいませんか?何を隠そうお砂糖博士®︎もその一人です(笑)。
今回は乳糖の説明は割愛しますが、乳糖についての詳細はこちらのサイトをご覧下さい。
教えて!お砂糖博士®︎Questionコーナー
まず、ヤクルト1000はあくまでも「砂糖入りの清涼飲料」であると再確認していただきます。
そのため、飲んだ後は歯ブラシなどで通常通り清掃を行ってもらう必要があります。
飲むタイミングについては、まずヤクルトのHPを確認してみました。
- 「いつ飲んでも良い」という旨が書いてあります。乳酸菌シロタ株は胃酸や胆汁酸などの消化液に負けないように強化培養されているため、生きて届く。
- ただし、外から摂取した乳酸菌は腸壁に定着しないため、「毎日続ける」ことが大事。
「毎日飲み続ける」という習慣付けはなかなかハードルが高く、多くの人が挫折するはずです。
「ヤクルト飲んだけどいまいち効果が感じられない…」という消費者の意見に対し、「お客様、本当に毎日飲み続けましたか?」とメーカー側が答えるのか?と、つい妄想が進んでしまいます。
いつ飲んでも良く、毎日飲み続ける。「大人の話」ですが良くできているシステムだと思います(笑)。
話が完全に脱線しましたが、飲むタイミングの指導としては「いつでも良い(らしい)けど、寝る前に飲んだらかならず歯ブラシをして下さい」で良いのではないかと思います。
母乳中や人工ミルクには約7%の乳糖が含まれています(砂糖は含まれません)。この乳糖がむし歯の発生や進行に関わるか?という疑問は古くから研究がされていますが、いまだ不明な点が多いとされています。
日本ラクテーション・コンサルタント協会のHPにも、「母乳中に含まれる乳糖はむし歯の直接の原因にはなりません」とありますが、この表現が的を射ていて、お砂糖博士®︎としても現状では同様に考えています。
したがって他の食品を一切食べず、母乳や人工ミルク「のみ」を摂取している乳児は「う蝕の心配はない」と差し支えないと思います。
よく患者さんにも聞かれる「寝かしつけ時の授乳はむし歯の原因になるか?」という疑問に関していえば、離乳食も始まり砂糖を含む他の食品も食べている子どものう蝕は、母乳が原因というよりも砂糖を含む食品が原因の場合も十分考えられます。そのため、授乳以外の「食事の内容」もしっかり把握する必要があると思います。
ちなみに牛乳には約5%の乳糖が含まれています。牛乳の乳糖自体も、う蝕の直接の原因にはなりませんが、牛乳だけ飲むならともかく、牛乳と相性の良い食事やおやつを考えると、パン(菓子パン)やケーキクッキー、チョコレートなどなど、砂糖を多く含む食品を摂取しがちです。
牛乳に関しても、それに合わせる食事の内容を注意してもらうと良いと思います。
***
最後に…今回の「乳製飲料編」を通じて、皆さんにお伝えしたかったことをお話しします。
食品表示法(平成27年4月1日に施行)には、食品中の「砂糖」含有量の記載義務はありません。
「清涼飲料」も「お菓子」も「菓子パン」もしかり、大手メーカーの加工食品を手にするとき、砂糖ひとつとっても、そのパッケージの成分表をみたときに砂糖がどのくらい入っているか分からないのです。
言い換えれば、ジュースやお菓子などの加工食品を食べるということは、どのくらいの砂糖が分からないものを食べているという覚悟が必要です。
また「タンパク質や脂質、その他の添加物」も同様に、何がどのくらい入っているのか?詳しい内訳を調べる手段はありません。加工食品はパッケージに成分表に細かく書いてある情報では、その食品の本当のところが分からないのです。
どんな美味しそうなケーキでも、道に落ちていたら…皆さんは食べることができるでしょうか?
何かを口に入れるという行為は、本来はその食品への信頼がなければできません。
皆さんは、日本の大手菓子メーカーや清涼飲料メーカーの製造する加工食品を、心から信頼できますか?(いわんや海外食品メーカーも)
お砂糖博士®︎は基本的に加工食品をできるだけ避けるようにするために、用事がなければコンビニに近づかないように日々心がけています(笑)。
「家庭で作ったものを食べる(食べさせる)」という一見当たり前のことが、実は貴重でとても大切なことなのです。
お砂糖博士®︎の雑談コラム「おさトーーク」
No1.あなたは一日に何gの砂糖を食べていますか?
No2.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!菓子類編
No3.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ①異性化糖について
No4.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!清涼飲料編 ②炭酸飲料について
No5.砂糖を減らす鍵は、加工食品にあり!パン編
No6.ヤクルトは健康?乳製飲料の砂糖量