こんにちは、アメリカで歯科衛生士として働いているグリフィス友美です。
みなさんは、「アメリカ×歯科業界」と聞いて何を思い浮かべますか?
最新の情報が飛び交っていそう、歯科医療従事者のレベルが高そう、などさまざまかと思います。
本連載では、みなさんに最新のアメリカの歯科事情をお届けできればと思います。
前回の記事はこちら
#01 アメリカで普及中!デンタルセラピストとは
#02 アメリカにおける歯科衛生士の魅力とは
#03 アメリカの予防システム「プロフィラキシス(プロフィー)」とは
今回は、前回解説した「プロフィラキシス(プロフィー)」とは異なる、歯肉炎に対する新たなアプローチ「ジンジバルスケーリング」についてお伝えします。
歯肉炎に対する新たな治療「ジンジバルスケーリング」とは?
アメリカでは今まで、患者さんの歯肉炎の重症度に関わらず、「プロフィラキシス(プロフィー)」が行われていました。
(参照:グリフィス友美のアメリカ歯科界ニュース #03 アメリカの予防システム「プロフィラキシス(プロフィー)」とは)
しかし近年、中等度以上の歯肉炎に対しては、新しく「ジンジバルスケーリング」という治療を行うようになりました。
ジンジバルスケーリングとは、アタッチメントロスや歯槽骨の吸収がなく、口腔内の30%以上に中等度または重度の歯肉の炎症を認める場合に行われる治療のことを指します。ただし、歯肉炎の割合と歯石の量が比例しないケースもあります。
歯肉炎のレベルについては、Löe&SilnessのGI(歯肉炎指数)により診断します。
歯肉炎指数 | 歯肉の状態 |
---|---|
0 | 正常な歯肉 |
1 |
軽度な炎症:わずかな色の変化とわずかな浮腫があるが、プロービング時の出血はなし |
2 | 中等度の炎症:発赤や浮腫、プロービング時の出血がある |
3 | 重度の炎症:著しい発赤と浮腫や潰瘍形成、自然出血の傾向あり |
Löe&Silnessの歯肉炎指数(ADA Code of Ethicsより改編)
ジンジバルスケーリングの具体的な治療は、歯の露出面および非露出面の歯面からプラークや歯石、着色を除去し、歯周組織の治癒を促すことです。そして、治療後2〜4週間後にフォローアップの予約を取り、治癒状況を再評価します。
再評価時に歯肉炎が治癒していれば、その後は定期検診としてのプロフィーによる予防ケアに移行します。
炎症が治癒し、健康な状態に戻ったので、これから予防ケアを定期的に行って、炎症が再発しないようにしていきましょうという流れです。
プロフィーとの違いは?
ジンジバルスケーリングは治療であり、予防ケアではありません。まず、これがプロフィーとの大きな違いです。
また、ジンジバルスケーリングで行うスケーリングは、炎症が治癒することを目的としています。そのため、歯科衛生士は歯科衛生課程に沿って、きちんとしたプランを立て、患者さんにも理解や協力を促します。
ジンジバルスケーリングにおいて重要視される点は、以下の2点です。
- 患者さん自身に歯肉の疾患をもっていると自覚してもらうこと
- 患者さんに治療計画を理解してもらい、ホームケアに対するモチベーションを向上させること
前回と今回の内容をまとめると、アメリカの歯科衛生士が歯周病に対して行うアプローチは、「プロフィー」「ジンジバルスケーリング」「SRP」の3つがあります。
これらの治療の選択は、以下のデシジョンツリーを元に行います。
日本の歯科衛生士の方は普段、歯周病の患者さんにはどのようなアプローチを行っていますか?
もし歯周治療の指標となるものをお探しの場合は、ご参考にしていただけると嬉しいです。
次回は、「睡眠時無呼吸症候群の治療」について詳しく解説します。
参考文献:
ADA Code of Ethics: Veracity, ADA Guide to Reporting D4346. American Dental Association, 2018
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#01 アメリカで普及中!デンタルセラピストとは
#02 アメリカにおける歯科衛生士の魅力とは
#03 アメリカの予防システム「プロフィラキシス(プロフィー)」とは
#04 歯肉炎に対する新たな治療「ジンジバルスケーリング」とは