マイクロスコープを活用しよう!最終回 最大限に活用するためにできること

こんにちは、増田梢です。

日本顕微鏡歯科学会認定歯科衛生士の資格を取得し、臨床のさまざまなシーンでマイクロスコープを活用しています。

私にとってマイクロスコープは、日々の臨床で歯科衛生士の楽しさ、大切さ、そして必要性を感じるツールのひとつです。

マイクロスコープの良さのひとつに「記録」があります。術者がただ見て終わるのではなく、情報をフィードバックして治療に活かすことができるのです。

前回の最後にも少し触れましたが、最終回では「記録と説明」について深掘りしながら、マイクロスコープを最大限に活用するためにできることについてお伝えします。

前回までの記事はこちら
第1回 私がマイクロスコープを使う理由
第2回 準備と使い方
第3回 臨床でつまずきやすいポイント

マイクロスコープを活用しよう!

マイクロスコープを使った記録と説明

マイクロスコープから得た情報を患者さんに伝えたい時、私たちは記録された情報をモニターに映します。

しかし、拡大された情報を患者さんはすぐに理解できるのでしょうか

マイクロスコープで得た気づきや情報は、患者さんや歯科医師と共有して治療に活かすことが重要です。

そのため、私は記録をとる時や説明を行う時、以下のように「自分以外の人に伝える」ことを意識しています。

記録のポイント

  1. 何を伝えたいのかストーリーを考え、ポイントをおさえて記録する
  2. 規格性をもたせる(毎回同じアングルで記録するなど)
  3. 術者が見ている視野を、患者さんはすぐには理解できないことを念頭におく

説明のポイント

  1. 何を見せたいのかを先に説明する
  2. 低倍率から高倍率の順序で見せる
  3. before/after」や「正常/異常」を比較して伝える
患者さんへの説明時には、先に鏡で該当部分を確認してもらってから拡大画像を見せる

また、マイクロスコープというと動画を使用するイメージが強いかもしれませんが、静止画も活用できます。口腔内写真では映りきらない場所でも、マイクロスコープで撮影して患者さんに見てもらうことが可能です。

私自身、患者さんに情報を提供することで、より口腔内のことについて深く、一緒に考えられるようになりました

患者さんが自分の口腔内に感心がわき、一緒に治療に参加することで得られる自らの気づきは、改善と継続に繋がっていると実感しています。

とくに、改善を一緒に喜べる時はいちばん嬉しい瞬間です。

マイクロスコープで撮影した歯肉の改善の経過
歯肉の改善の経過を患者さんと視覚で共有できる

歯科衛生士に求められること

私が考える、今後の歯科衛生士に求められることは、以下の5つです。

  • 口腔内の健康から全身の健康を守れる
  • 未病から病気に進行させない
  • 口腔内バイオフィルムの管理を細部にわたって行う技術
  • 患者さんに正しい説明ができる
  • 歯科衛生士の目線で観察し、歯科医師と情報交換ができる

数ある医療職の中で、歯科衛生士は予防の段階から関わることができる職種です

歯科衛生士には結果を残せる技術だけでなく、正しい説明ができる知識も必要とされます。マイクロスコープは、患者さんを「診て治す」ことへ繋がる、一つの良きツールであると考えています。

マイクロスコープの活用は、細かな気づきや情報を患者さんに伝えるだけでなく、歯科医師に伝えたい時にも有効です。撮影記録を見ることで、実際の口腔内を見なくても正確な情報交換が行えるため、時間短縮にも繋がります

歯科医院内における情報共有
認定医の先生と情報共有をしているところ

歯科衛生士がマイクロスコープを最大限に活用するために

歯科衛生士がマイクロスコープを最大限に活用するためには、以下のような環境が整う必要があるでしょう。

  • 歯科衛生士自身がマイクロスコープの必要性を理解している
  • 歯科衛生士がマイクロスコープを使うことを医院のスタッフが理解している
  • 歯科衛生士自身がマイクロスコープを使える環境に感謝している

せっかくマイクロスコープを導入しても、医院としてマイクロスコープの必要性を理解していないと、その良さは半減してしまうかもしれません。

コ・デンタルスタッフの協力はもちろん、歯科医師からの理解は最高の後押しとなります

私がマイクロスコープを使いたいと言い出せなかった頃、院長が「使ってみたら?」と背中を押してくれました。歯科医師の先生をはじめ、スタッフの協力があって今にいたります

マイクロスコープを通じた輪の広がり

私はマイクロスコープという拡大視野の世界に触れてから、たくさんの情報を得ることができ、同時に新たな疑問もたくさん生まれました。

院内で話し合うだけでなく、院外の諸先輩方の治療を見学したり、学会やセミナーで講演を拝聴したりと、自分の学びに大きく繋げることができたと思います。

今でも、マイクロスコープを使う全国の歯科衛生士さんとの交流の場に参加したり、困ったら意見を聞いたりと、常に学びの日々です。わからないことは一緒に考え、教え合っていると、“より良い治療を提供したい”という思いはみんな同じだと感じています。

また、マイクロスコープをきっかけに出会ったみなさんの、自ら学んで考える姿勢には大きな刺激を受けました。マイクロスコープを使いはじめたからこそあった出会いに、心から感謝しています。

私は、「歯科衛生士にはマイクロスコープが必要」そう感じています。

歯科衛生士になって19年。多くの出会いや周囲の協力のおかげで、私がこうして歯科衛生を楽しく続けていられることにも感謝しています。

マイクロスコープを通じて出会った歯科衛生士の方々と

マイクロスコープを活用しよう!

第1回 私がマイクロスコープを使う理由
第2回 準備と使い方
第3回 臨床でつまずきやすいポイント
第4回 最大限に活用するためにできること