歯科助手目線でとらえる!患者さんのカウンセリングポイント vol.3 クレームを回避するコミュニケーション

こんにちは、歯科助手歴10年目の八木菜々子です。

私はこれまで、歯科助手として多くの歯科医院をみてきました。臨床現場ではさまざまなアシスタント方法や患者対応力を磨き、スキルアップやキャリアアップのために医療事務やトリートメントコーディネーターといった資格も取得しました。

現在では診療のアシスタント業務だけでなく、患者さんとコミュニケーションをとる中で、補綴物のカウンセリングやクレームの対応など、あらゆる業務を任せてもらえるようになりました。

前回までは、補綴カウンセリングついてお伝えしました。

前回の記事はこちら

vol.1 補綴カウンセリングで確認するべき項目
vol.2 補綴カウンセリングの具体例

今回からは、クレームをもつ患者さんへの対応ポイントについて解説しますね。

歯科助手目線でとらえる!患者さんのカウンセリングポイント

クレームには歯科医院側が解決できないものがある

クレームというのは、歯科医院側が解決できるものとできないものがあります。

まず、解決できないものは、患者さんの都合だけで伝えられる一方的なものです。 例としては、「他の患者さんより自分を優先してほしい」「少しも待ちたくない」といった要望が挙げられます。

これに関しては、歯科医院の運営に悪影響をおよぼしますので、毅然とした対応をすることが必要です。

しかし患者さんの中には、「スタッフには強く話すけれど、歯科医師には丁寧に話す」など、権威や属性を重んじる方もいます。そのため一人で解決しようとせずに、医院一丸となって対応することがもっとも重要です。

このクレーム対応こそが、院内の結束力が試されるミッションであるといえるでしょう。

院内の結束力が試されるミッション

クレームは事前の対応で回避できる?!

そして解決できるクレームとは、実は予測して事前に回避できるものが多いです。

そもそもクレームというのは、サービスを提供する側がサービスを受ける側の要望を察知し損ね、叶えられなかったことによって起こります。

そのため、大抵の患者さんは少しずつ不満や不安のサインをだしているのです。

そのサインとは、以下のようなことが挙げられます。

  1. 口数が少ない
  2. 受け答えのテンポが遅い、あるいは早すぎる
  3. 声のトーンが低くなった
  4. 表情が以前より暗い など

これに関しては、日頃から私たちが観察力とコミュニケーションの質を向上させることによって、患者さんのわずかな変化を発見し、クレームになる前に対応することができます。

そのため少しでも上記のような兆候や変化が感じられたら、言葉使いや使っているテンション、スピード感などを見直し、相手のトーンに合わせて修正するとよいでしょう。

そして、患者さんとの積極的なコミュニケーションを試み、各々の要望をすくいとることができれば、不満がクレームとして現れることを防げるはずです。

患者さんの中には、もともと ① 〜 ④ のような性質をおもちの方もいます。こういった患者さんは、何かあればクレームとして要望を訴えるか、 不満を伝えず、黙って通院を辞めてしまう方が多いと感じます。

どんな患者さんであっても、日頃からの対応は万全なものにしておきたいですね。

クレームは事前の対応で回避できる?!

初診時の問診でクレーム発生を防止する!

また、初診時の問診においても、クレームの予防線を貼ることができる場合があります。

たとえば、初診時に「歯科治療に関して何かご不安なことはありますか?」と尋ねてみると、「実は治療が怖くて…」「痛みが苦手です」「いま仕事が忙しくて、あまり来られないんです」などと伝えられる方は多いです。

はじめに患者さんの事情や心情を知ることができれば、その直後から患者さんに寄り添った対応ができます。

とくに初診時は、たくさんの不安要素を抱える患者さんもいます。そして私たちも患者さんのことをまだ理解できていないことが多いため、「お互いにわからないことだらけ」といった状況です。

一方で、そういった状況だからこそ、患者さんについて質問しやすい貴重な機会でもあります。患者さんの聞く姿勢や態度を観察しながら、気持ちのよい距離感で接することができるとよいでしょう。

初診時の問診でクレーム発生を防止する!

クレームを事前に防止する!患者さんへの対応実践編

待ち時間が長くなりそうなときはどうする?

待ち時間が長くなることは、ある程度の時点で予測可能です。

予測できた時点で、「急患の患者さんが多く、お待たせしてしまう状況です。この後お急ぎのご用はおありでしょうか?」や、「○分ほどお時間をいただけませんでしょうか?」といった声かけを行えば、患者さんとの対話の中で、不安や不満を解消することができます。

患者さんがの治療部位が多いときはどうする?

人は受け身であると、自分自身が納得いかない出来事が起こってしまったとき、不満をもちやすくなると感じます。

そのため、いくつか治療部位がある患者さんに対しては「どこから治療しましょうか?」「ここから治療しようと思うのですが、他に優先したい部分はありますか?」など、患者さんを主体とした話の進め方にすることもおすすめです。

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私は、クレームがでること自体が、一概にすべて悪いとはいえないと思っています。

一方で、クレームとして患者さんからの要望が現れたときに、私たちスタッフがいかに迅速に対応できるかが、クレームを解決する上で重要なキーポイントとなります。

そのためには、患者さんに対する観察力を養うことと、患者さんの様子が少しでも変だなと感じたときに、院内ですぐに共有できる雰囲気づくりを行うことが大切です。

患者さんからのクレームは、より良い組織づくりのための重要な意見になることに間違いありません。起こったとしても気落ちせず、冷静に向き合える歯科医院が、良い医院となっていくと思っています。

歯科助手目線でとらえる!患者さんのカウンセリングポイント

vol.1 補綴カウンセリングで確認するべき項目
vol.2 補綴カウンセリングの具体例
vol.3 患者さんからのクレームを回避するコミュニケーション