こんにちは。歯科衛生士の古家と申します。
この連載では、これまで私が学んできた知識や経験から、コミュニケーションについてお話ししていきたいと思います。
今回は「相手に合わせた話し方」について考えていきましょう!
前回の記事はこちら
第一回 まずは自分を整えよう!
第二回 相手に合わせた話し方を知ろう!
相手と自分の違いを意識して話そう!
コミュニケーションをとるときに、いちばん悩むことは何でしょうか?
それは、「相手と心や話が通じ合わない」ことかと思います。
たとえば、歯周病の治療についてお話しするとき。
上記のようなシチュエーションでは、ジリジリとした気持ちになるかと思います。こんなとき、あなたはどう考えますか?
- なぜあの人はこちらの話を聞いてくれないんだろう?
- なぜ何度説明しても理解してくれないんだろう?
- 普通わかることじゃないの?
上記のように考えてしまっていませんか?
しかしここで大切なことは、「自分と相手は違う」ということです。
- むずかしい専門用語をできるだけ使用しない
- 相手と話の前提を合わせる
- 相手に伝わりやすい表現を使う
患者さんとのコミュニケーションでは、上記3つのポイントを意識してお伝えするようにしてみましょう。
1.むずかしい専門用語をできるだけ使用しない
歯科衛生士学校に入学した頃のことを思い出してみてください。
たくさんの専門用語を覚えること、歯周組織を理解することにとても苦労しませんでしたか?
歯科について知らないことばかりで、右も左もわからなかったあの頃に戻ってみましょう。
患者さんは「歯」というものがあることは理解していても、歯周組織のことなど考えたこともない方が大多数です。
まずはわかりやすい言葉や図を使いながら、できるだけ専門用語を使わずに説明していきましょう。
2.相手と話の前提を合わせる
次に、患者さんの主訴について考えてみましょう。患者さんはそもそも何を求めて歯科医院に来院されたのでしょうか?
- 痛いから診てほしい
- 歯ぐきから血が出る
- 噛んだときに違和感がある
- 歯を白くしたい
症状や状態によってさまざまな主訴があると思いますが、いずれの患者さんも「主訴を解決したい」と考えて来院していますよね。
大切なのは、何よりもまず初めに「患者さんの主訴を受け止める」こと。
患者さんの主訴を受け止めずに歯周病の話を淡々と始めた場合と、患者さんの主訴を受け止めた上で「あなたのその主訴を治すために必要なお話なんです」という前提を伝えた上で話しはじめる場合、どちらが聞いてもらいやすいでしょうか?
患者さん側に「歯周病治療というものが必要なんだ」と納得して話を聞いてもらえるよう伝えてから話すことで、患者さん側に話を聞く心構えができますし、コミュニケーションのすれ違いを避けることができるのです。
たとえば、歯周病の症状が強く出ているけれど患者さん本人はあまり気にしておられず、「とりあえず受診すれば治るだろう」と思っておられる場合。
歯周病治療にはセルフケアが不可欠ですから、歯科衛生士としては、患者さんに病態を理解してもらった上で、一緒にお口の健康を守っていってもらいたいですよね。
しかし、患者さんは「診てもらえば治る」と思っている方がまだまだ多いのが現状です。そんな相手に対して、いきなり「歯周病が〜」と話しはじめても、相手からすると「何か小むずかしい話がはじまったな」と身構えてしまい、「いいから早くやってくれよ」と思って心が離れてしまうばかりです。
患者さんが来院した理由である「主訴を解決したい」という気持ちに対して必要なお話であることをまずは伝え、それから説明をはじめてみましょう。
3.相手に伝わりやすい表現を使う
物事を理解しようとするとき、人によって「理解しやすい方法」が違うことをご存じでしょうか。
説明を聞いて理解しようとするタイプや、画面や紙など文面として読んで理解するタイプ、実際にやりながら理解するタイプなど、人によってさまざまです。
これは、人によって“五感”の感じやすさの度合いが異なるためです。
人は、五感によって世界を認識しています。五感とは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のことです。
五感の中でも、「この感覚が特に感じやすい・理解しやすい」というものがあるのです。
その感じやすさ・理解しやすさを分類した「VAKモデル」というものがあります。
VAKモデルを活用することで、相手に伝わりやすいモデルがどれなのかを考えることができます。
これにより、相手のVAKモデルによって説明の仕方を変えることができるのです。
モデルごとの特徴と説明の仕方で意識したいポイントは以下の通りです。
視覚👀(Visual)タイプ
- 視線が上方に向く傾向がある
- 頭に描いたイメージに基づいて考え、身振り手振りで説明する傾向がある
- 出来事を映像で記憶していて、図やイラストにまとめるのが上手
- 話の展開が早く、比較的早口
- 前のめりで呼吸が浅い
- 発想力が豊かな反面、行動に移すのは苦手
- 視覚にまつわる表現を用いる傾向がある
例:話が見えない、見通しが良い、明るい、暗い、はっきりしている、注目、焦点 - 手で頭の中にあるイメージを描こうとする
コミュニケーションで意識したいポイント
- 絵や写真などを見せながら話す
- 術前・術後などを写真を見せて比較する
- 初めに全体像や結論を示す
聴覚👂(Auditory)タイプ
- 視線を左右に動かす傾向がある
- 物事を論理的に分析して、発展・構築させるのが得意
- ゼロから発想することが苦手
- 音や耳から入る情報を記憶しやすく、BGMが流れていると集中できない
- 擬音語や擬態語を使って表現することが多い
- 腕組みをしやすい
- 独りごとが多く、感嘆詞をよく使う
- 胸全体で呼吸をする
- 聴覚にまつわる表現を用いる傾向がある
例:あの人とはリズムが合わない、〜のように聞こえる、耳触りがいい、聞き捨てならない
コミュニケーションで意識したいポイント
- 静かな環境でじっくり話をする
- 擬音語や擬態語を用いて表現する
- 情報を整理し、方法や手順を示す
身体感覚👋(Kinesthetic)タイプ
- 目を下方に動かす傾向がある
- 行動力があるものの、論理的に計画を立案したり分析したりするのが苦手
- 話の情報量が多いとたまについていけない
- 肌触りの良いものが好きで、匂いや味に敏感
- スキンシップをとってコミュニケーションを図る
- 感情や気持ちを身振り手振りで表現しようとする
- 話す速度と動作は比較的ゆっくり
- 猫背になりがちで、お腹で深い呼吸をする
- 身体感覚にまつわる表現を用いる傾向があり、体の感覚を手で表現しようとする
例:鳥肌が立つような感じ、〜と感じられる、おいしい話だ、腑に落ちる、軽い/重い、手応えがある
コミュニケーションで意識したいポイント
- 商品や説明したいものを実際に触ってもらう
- ワクワクする感覚を言葉に表すと伝わりやすい
このように、相手の言葉や視線、手の動きなどに注目することで、相手がどのVAKモデルを代表にして使っているのかを予想することができるのです。
いかがでしたか?
ぜひ明日から、相手が使う言葉や話し方の特徴をヒントにして相手のタイプを探ってみましょう!
そして相手とより円滑なコミュニケーションをとっていくために、そのタイプにあった伝え方を心がけてみてくださいね。
コツを学んで心を掴む!明日からできるコミュニケーション術
第一回 まずは自分を整えよう!
第二回 相手に合わせた話し方を知ろう!
第三回 相手との違いを理解した コミュニケーションを目指そう!