チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩 第9回 ビタミンC足りていますか?

みなさんこんにちは!歯科衛生士の山本典子です。

今回は、以前少し解説した「ビタミンC」を掘り下げて解説したいと思います。
(参照:チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩 第3回 口腔内症状と栄養素の関連性

ビタミンCの主な働き

「ビタミンC」と聞くと、なんとなく美容に良さそうというイメージはあると思いますが、美容だけでなく私たちの身体や口腔内にもとても大切な働きがあります

たくさんありすぎて、すべて挙げるとキリがなくなってしまうため、ここではビタミンCの代表的な働きを解説していきますね!

ビタミンCは、本来の名前は「アスコルビン酸」といいます。ビタミンCは壊血病の予防に効果がある栄養素として発見されたことが有名ですが、「スコルビ」は壊血病という意味で、それを防ぐ酸ということでアスコルビン酸と命名されました。*1

ビタミンCの主な働きは、コラーゲンの合成や免疫強化、活性酸素の除去などです。

コラーゲンの合成

コラーゲンは、タンパク質の分子であるアミノ酸が3つ寄り集まって三つ編みのようになっており、引っ張りに強い、強度のある構造がとられています。この三つ編みの構造を作るのに必要なのが、ビタミンCです。

また、コラーゲンが合成されるときには、「プロリン」や「リジン」という栄養素が「ヒドロキシプロリン」や「ヒドロキシリジン」になる必要があります。その際にもビタミンCが必要になります。

また、ヒトの歯肉は、発達した毛細血管に血液が大量に送られてきているため、ピンク色をしています。コラーゲンが不足していたり、何かの異常で炎症が起こっていたりすると、コラーゲンでできている血管は破れやすくなり出血します。

背景を知ると、歯周病で出血しやすい理由がわかりますね。この現象が全身で起こるのが「壊血病」です。つまり、ビタミンCがないと人間は死んでしまうのです!

歯肉から出血しやすい状態は、“プチ壊血病”といってもよいかもしれません。

免疫の強化

風邪をひくとビタミンCを摂ると良い」と聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。

風邪をひくと、くしゃみや鼻水が出るかと思います。これは、異物(ウイルスや細菌)を除去するための免疫反応の一種です。

免疫反応を突破した異物がさらに体内に入ってくると、今度は「好中球」や「マクロファージ」、「NK細胞」などが出動して異物をやっつけてくれます。

このマクロファージやNK細胞を作るのに「インターフェロン」という栄養素が必要なのですが、ビタミンCにはインターフェロンを増やす作用があります

「外からの異物=歯周病菌」と考えると、ますますビタミンCの必要性がわかりますね。

ちなみに、インターフェロンはタンパク質でできているため、タンパク質不足にも注意が必要ですよ!

活性酸素の除去

活性酸素とは「他の物質を酸化させる力が非常に強い酸素」のことをいいます。たとえば、銅と酸素は化合すると酸化銅になります。

電気を帯びた原子のことを「イオン」といいます。そして原子が電気を受け取ると全体としてマイナスの電気を帯びます。「マイナスイオン」といえば馴染みがあるのではないでしょうか。

たとえば、酸素原子(O)の場合、電子を受け取るとO^(2-)となります。逆に電子を失うと全体としてプラスの電気を帯び、プラスイオンとよばれます。

つまり、Cu+O=CuOというのは、Cu^(2+)+ O^(2-) =CuOとなって安定するのです。このとき、銅原子から電子が失われて酸素原子に渡されていることになります。

ですから、酸化とは電子を失うことであり、活性酸素とは、「電子を奪う能力をもった酸素」のことを言います。*2

この活性酸素は、主に4種類あります。

主な活性酸素の種類 各活性酸素を除去する抗酸化物質
スーパーオキサイドアニオンラジカル ビタミンC・SOD
過酸化水素 カタラーゼ・ペルオキシターゼ
ヒドロキシラジカル ビタミンE・αリポ酸
一重項酸素 リコペン・紫外線

この中でとくに有害なのが「ヒドロキシラジカル」ですが、これは非常に酸化力が高く細胞にダメージを与えます。これは、ガンや病気になってしまうということです。

活性酸素は、スーパーオキサイドアニオンラジカル→過酸化水素→ヒドロキシラジカルの順で生成されるので、スーパーオキサイドアニオンラジカルの時点で分解できるのが望ましいです。ですから、ビタミンCの摂取が重要になります。

しかし実は、スーパーオキサイドアニオンラジカルは、ビタミンCが大量にあると逆に過酸化水素を発生させ、さらに過酸化水素が水に分解される過程ではヒドロキシラジカルを発生させてしまうのです。

ですから、ビタミンCだけを大量に摂取するのではなく、ヒドロキシラジカルを分解してくれるビタミンEも同時に摂取することが必要となります。

病気や老化の原因となる酸素ですが、私たちが生きていく上では必要なものなので、活性酸素を除去してくれるビタミンCがいかに重要性かがわかりますね。

ビタミンCを摂取しよう!

ビタミンCは自分の体で作ることができない栄養素ですから、日々の食事やサプリメントなどで摂取しましょう。

ビタミンCには、今回ご紹介した働きのほかにもまだまだ役割があるので、また別の機会にお話しできればと思います。

次回は、活性酸素と関りの深い「鉄」について解説します。

参考文献:
*1 山本義徳,アスリートのためのサプリメント辞典(上).2022
*2 山本典子,歯科でできる実践栄養指導.2023

チェアサイドの栄養指導 はじめの一歩

第1回 歯を守るための栄養指導
第2回 口腔内を診るときのポイント
第3回 口腔内症状と栄養素の関連性
第4回 サプリメントを効果的に使用するには?
第5回 なぜ口腔ケアに乳酸菌?
第6回 意外と知らないコラーゲンの基礎知識
第7回 いま話題のナイアシンの代謝産物「NMN」って?
第8回 ヘムの構成成分「5-ALA」って?
第9回 ビタミンC足りていますか?