乳歯が鍵!健康なお口育成アプローチ法 #07 将来のためにできること

こんにちは。歯科衛生士の古家と申します。

私は小児期の矯正(顎顔面矯正)を行う歯科医院で小児専門歯科衛生士として従事し、今は前職の経験を活かして一般歯科にて勤務しています。

この連載では、これまで6回にわたり小児の健康な口腔育成を行うためのアプローチ方法についてお話してきました。

最終回となる今回は、永久歯へ生え変わるタイミングである、「10〜12歳のお口育成アプローチ」についてお伝えしたいと思います。

前回までの記事はこちら

#01 プロローグ
#02 いま求められる子どもたちへのアプローチ
#03 乳歯萌出前編
#04 「イヤイヤ期」との付き合い方
#05 乳歯のうちにできること
#06 永久歯への生え変わり

10〜12歳頃の口腔の変化

10〜12歳といえば、「前思春期」とも呼ばれるデリケートな時期です。

学校では高学年として「お兄さん」「お姉さん」とよばれるようになり、実際にできることが広がって本格的な自立へと向かっていく時期です。そのため、本人の「自分なりの考え」や「こだわり」があることを念頭に置いてコミュニケーションを取ることが重要になります。

簡単にいうと、子どもとして接するのではなく、どこか仲間のような雰囲気で話しかけることがキーポイントになるかと思います

では、口腔内の変化はどうでしょうか。

この頃は、続々と永久歯に生え変わる目まぐるしい時期を過ぎて、歯列がすべて永久歯へと生え変わってゆくタイミングです。

永久歯は、萌出しはじめの一年目がいちばんう蝕になりやすいとされています。これは、エナメル質がまだ完全に成熟していないためです。

そんなリスクの高い10〜12歳の時期ですが、親御さんの仕上げ磨きからは離れてしまっていることの方が多いかと思います。

そのため、この時期には本人の予防・健康意識を育て、自ら「歯を守る」という行動をとってもらえるよう伝えることが大切になってきます。

本人にお口の健康を意識してもらうには?

永久歯はもう二度と生え変わることのない、まさに一生涯をともにする大切なもの!

私は永久歯が萌出してきたお子さんと接する時には、決まって「この歯はあなたがおじいちゃん、おばあちゃんになるまで使う大切な歯なんだよ」と伝えています。

子どもにとっては遠い未来でも、それを思い描いてもらうことが健康への関心に繋がる大切なアクションですよね。

目の前のピカピカの永久歯がう蝕になってしまわないよう、お伝えするべきことはたくさんあると思いますが、まず大切なことは『本人がその大切さを理解すること』です。


私は「むし歯になったらどうなる?」とも声をかけて、本人に考えてもらうようにしています。

う蝕になっても、もちろん治療することはできますが、一度削った歯は完全に元に戻ることはありません。

コンポジットレジンやインレーといった修復物は永久的なものではなく、修復物と歯のわずかなステップなどから二次う蝕になってしまう可能性があるのです。

そういった治療を繰り返してしまうと、その度に歯が大きく削り取られ、やがて歯を失うという負のスパイラルに陥ってしまうことになりかねません。

むやみに怖がらせる必要はないですが、この年頃ではもう客観的に物事を考えられるようになっていますから、本人にステップを踏んで理解してもらうことがう蝕予防の動機づけになります。

  • なぜう蝕になるのか?
  • う蝕になるとどうなるのか?
  • う蝕にならないようにするためにどうしたら良いのか?

自力で考えることがむずかしそうであれば、少しずつヒントを出しながら一緒に考えてみましょう。親御さんが同室しているのであれば、親御さんに聞いてみるのも良いと思います。

これからの歯磨きは本人が主役であることをしっかりと伝え、小さな出来事も毎回しっかりと褒めて肯定すること。

染め出しも、悪いところばかり伝えられるとイヤになってしまいますよね。

できているところをまずは一緒に見つけて褒め、「ここはよく磨けてるね!こっちの汚れているところも同じくらい磨いてほしいな」「あとここだけ磨けたら完璧だよ!」など、前向きなお声掛けをしていきましょう。

う蝕予防のチェックポイント

歯科衛生士としては、彼らが普段摂取している食べ物や飲み物についても気になりますよね。

たとえば最近のお子さんは、驚くほどたくさんの習いごとに通っています。その頑張りを聞くと私はいつもとても驚き、そして「頑張っているねえ」と声をかけています。

一方で、習い事の時に甘いものを摂取する習慣のあるお子さんも多いのです。

ここでチェックしておきたいポイントが『歯頚部の白濁』。

甘い飲み物やpHの低い飲み物をちびちび飲んだり、週に何度も飲んだりする習慣があると、「歯頚部」からう蝕になりやすいのです。

そういった所見を見つけた時には、お子さんに「よく飲む飲み物ってなあに?」と確認してみましょう。

もし上記のような飲み物を多く摂取している場合は、飲み物との向き合い方について一緒に考え、今後の予防行動について考えるよう促していきます。

例えば、

  • 甘いジュースは一日1本まで
  • 何かしながらジュースをだらだらと飲まない

など、できるだけ具体的に決めると良いでしょう。

ただし、白濁は先天的なもの(エナメル質形成不全)である可能性もありますから、それについても考えながらお伝えしてみてくださいね。

歯科衛生士だからできること

どの年齢でもいえることですが、こうして誰かの生活に寄り添い、患者さんとともに喜び合える仕事は、歯科衛生士以外になかなかないと思います。

この立場を活かして今後も食習慣を絡めた声かけを行い、患者さんたちの健康増進に一役買っていきましょう!

乳歯が鍵!健康なお口育成アプローチ法

#01 プロローグ
#02 いま求められる子どもたちへのアプローチ
#03 乳歯萌出前編
#04 「イヤイヤ期」との付き合い方
#05 乳歯のうちにできること
#06 永久歯への生え変わり
#07 将来のためにできること