グリフィス友美のアメリカ歯科界ニュース #06 アメリカにおける睡眠時無呼吸症候群へのアプローチとは(後編)

こんにちは、アメリカで歯科衛生士として働いているグリフィス友美です。

みなさんは、「アメリカ×歯科業界」と聞いて何を思い浮かべますか?

最新の情報が飛び交っていそう、歯科医療従事者のレベルが高そう、などさまざまかと思います。

本連載では、みなさんに最新のアメリカの歯科事情をお届けできればと思います。

今回は前回に引き続き、アメリカにおける睡眠時無呼吸症候群へのアプローチについてお伝えします。

前回までの記事はこちら

#01 アメリカで普及中!デンタルセラピストとは
#02 アメリカにおける歯科衛生士の魅力とは
#03 アメリカの予防システム「プロフィラキシス(プロフィー)」とは
#04 歯肉炎に対する新たな治療「ジンジバルスケーリング」とは
#05 アメリカにおける睡眠時無呼吸症候群へのアプローチとは(前編)

グリフィス友美のアメリカ歯科界ニュース

OSAを診断するためのスクリーニング方法とは?

OSAやその他の睡眠呼吸障害については、いくつかのスクリーニング方法があります。

今回は、その中でも簡単に行える「STOP-Bang質問票*1」についてお話します。

「STOP-Bang」という名前は、OSAによく関連する症状のそれぞれの頭文字をとったもの。性別や肥満度、頸部周囲径、いびき、疲労、睡眠中に呼吸が止まるかどうかなど、OSAについてより詳細な情報を得るための8つの質問で構成されています。

STOP-Bang質問票の質問は、以下の通りです。

  1. Snoring (いびき): 一緒に寝ている人を困らせるほど大きないびきをかくことがある
  2. Tiredness (疲れやすい):日中に疲れを感じる、眠くなることがある
  3. Observed Apnea (無呼吸の観察):睡眠中に呼吸が止まったり、息苦しさを感じたりすることがある
  4. Pressure (血圧):高血圧である
  5. BMI:体格指数が35以上である
  6. Age (年齢):50歳以上である
  7. Neck Circumference (頸部周囲長):首回りが16インチ(40.64cm)以上ある
  8. Gender (性別):男性である

8点満点中2点以下であれば低リスク、5点以上であれば中等度または重度のOSAであり、高リスクとみなされます。3〜4点の人は、医師がさらにOSAの可能性を評価もしくは判断する必要があります。

歯科衛生士は来院する患者さんに対して、ストップ・バング・クエスチョネアのようなスクリーニングを行うことで、睡眠時無呼吸症候群のリスクや治療方法についての情報を提供することができます。

睡眠時無呼吸症候群のチェックは、患者と関わる時間が多い歯科衛生士だからこそできる、大切な仕事の一つではないでしょうか。

歯科衛生士

OSAはどうやって治療する?

OSAの治療には、まず睡眠活動をモニターし、睡眠障害の重症度を判断することが必要です。

OSAの最初の治療に使う装置としては、経鼻的持続陽性呼吸療法=CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)があります。

CPAPは、睡眠中にホースとマスクを介して気道に空気を送り込み、その空気を加圧することで機能します。安定した空気の流れによって気道が開放され、呼吸と睡眠の質が改善されるという仕組みです。

CPAPの他にも、歯科医師が製作するMAD(Mandibular Advancement Device)という装置が治療に用いられます。これは、気道の閉塞を防ぐために顎を前方に移動させる、マウスピース型の装置です。

MADの利点は、一人ひとりに合わせてカスタマイズされたものであること、口腔乾燥や口腔カンジダ症などの副作用がないこと、CPAPよりも安価であることが挙げられます。

また、CPAPについては、装置の動作音を煩わく感じる患者さんもいるため、MADはそういった心配がないことも利点の一つとして考えられています。

CPAP

睡眠時無呼吸症候群は、小児もかかる?

睡眠時無呼吸症候群は、大人だけがかかる病気と思われがちです。しかし昨今の研究により、小児も睡眠時無呼吸症候群にかかる可能性があることが明らかになりました。

また、睡眠時無呼吸症候群の診断がつかないまま放置すると、口腔機能の発達障害に繋がる可能性があることがわかっています。

小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、上気道の一部または全部が閉塞する疾患で、一般的に扁桃腺肥大や扁桃肥大が原因とされています。

米国小児歯科学会は、小児期のOSAの一般的な兆候や症状として、週3日以上の大きないびきや口呼吸、口渇、喉の痛みによる目覚めなどを挙げています。

小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群

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今回は2回にわたって、アメリカにおける睡眠時無呼吸症候群へのアプローチについてお伝えしました。

全身の健康に寄与できる歯科衛生士であり続けられるよう、口腔から読み取れる疾患や症状を見逃さないようにしたいですね。

次回は「モバイルデンティストリー」についてお伝えします。

参考文献:
*1 STOP-Bang Score for Obstructive Sleep Apnea-SLEEP FOUNDATION

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