歯科助手目線でとらえる!患者さんのカウンセリングポイント vol.4 問診票から得る新患対応のヒント

こんにちは、歯科助手歴10年目の八木菜々子です。

私はこれまで、歯科助手として多くの歯科医院をみてきました。臨床現場ではさまざまなアシスタント方法や患者対応力を磨き、スキルアップやキャリアアップのために医療事務やトリートメントコーディネーターといった資格も取得しました。

現在では診療のアシスタント業務だけでなく、患者さんとコミュニケーションをとる中で、補綴物のカウンセリングやクレームの対応など、あらゆる業務を任せてもらえるようになりました。

前回までは、補綴カウンセリングやクレームをもつ患者さんへの対応ポイントについて解説しました。

前回までの記事はこちら

vol.1 補綴カウンセリングで確認するべき項目
vol.2 補綴カウンセリングの具体例
vol.3 クレームを回避するコミュニケーション

最終回では、問診票から得る新患対応のヒントについてお伝えしたいと思います。

問診票で推測する力を養おう!

歯科医院で働く上で、“推測できる力”は非常に重要です。

仮説を立てることで危険予知やトラブル回避ができるだけでなく、その患者さんについてよく考えることは、より高度な接遇にも繋がります。また、それが杞憂に終わったとしても、患者さんと深く向き合うことは自分の糧となります

問診票は、そのきっかけを与えてくれる重要なアイテムです。多くの問診票を観察して、自分の歯科医院の来院患者さんの傾向をつかんでみましょう!

具体的に見るポイントとしては、以下の4項目です。

  1. 住所
  2. 文字の書き方
  3. 職業
  4. 家族・友人(紹介者)

1.住所

患者さんの住所は、問診前にチェックしておくべき項目の一つです。住所からは、大体の通院時間や、遠方から来院していることなどを把握できます。

職場が近いという患者さんであれば、通院する日は必然的に出勤日になり、来院時間も限られるでしょう。

出張などで急患として、単発で治療してほしい方には、回数のかかる処置を提供する必要はありません。しばらくの間滞在するなら、「いつまでに」「どこまでの」治療を終わらせるのかを初診時に決定する必要があります。

住所を少し見るだけで、患者さんが申告するよりも前にこちらから質問することができますし、速やかに治療計画を立てることが可能になります。

また、住所がわかると、待ち時間などのちょっとした雑談にその地域について話すことができます。相手の知っていることや知っている場所について話すことは、親しくなるきっかけにもなります。

2.文字の書き方について

続いて、問診票に書かれた文字を観察してみましょう。

個人的な考えと、これまでの傾向からの印象ですが、文字の書き方には個人の性質がでると感じます。

四角い整然と並んだ字を書く方は、几帳面だったり、繊細だったりする方が多いように思います。

たとえば、問診票にキッチリとした文字で記載されていた患者さんの中には、「前院に不信感をもったから」と記入している方がいらっしゃいました。

セカンドオピニオン的に受診する方であれば、整然とした説明も必要ですが、その方が納得する言葉選びは慎重にすべきです。言葉選びの際も、文字の特徴からある程度の推測を立てることが可能です。

几帳面そうな方であれば、端的ではっきりとした言葉選びの方が伝わりやすいだろうと推測できるでしょう。

逆に、流れるような字で記入する方は、治療を早くしてほしいという方が多い傾向にあるように思います。仕事が忙しかったり、せっかちだったりと、文字にはその人の性格や、そのときの状態が少なからず反映されると思います。

あくまで、私がこれまで何百枚と問診票を見てきた印象ですが、新しい視点として心理的な見方も含めると、推測できることも増えるのではないでしょうか。

3.職業

次にかならずチェックしてもらいたいのは、職業欄です。

たとえば、「主婦」と書いてある方はどんな人と推測できるでしょうか。日中の時間が来院しやすいでしょうか。小さなお子さんや、習い事や塾のお迎えを待つお子さんがいるかもしれません。

では「学生」の方だとどうでしょう。高校生以下の場合は本人だけの意思で治療は進められませんが、大学生や大学院生の方に高校生と同じ対応は適切でしょうか。

他にも、一般企業の「会社員」の方と、「看護師」「薬剤師」の方に、同じ内容の説明を行うことは適切でしょうか?

上記のように、その人の社会カテゴリーから、適切な対応を推測して導き出しましょう。来院時間などもカテゴリーごとの傾向があるので、職業欄をチェックしておくことで治療計画を立てるヒントになりますよ

4.家族・友人(紹介者)

来院理由に「家族が通っているから」というように、紹介者の方が「家族」や「友人」となっている場合は、差し支えない範囲で紹介者のお名前を聞いてみましょう。

紹介者の方が家族の場合、カルテ検索で同じ住所の方が見つかるはずです。歯科医師が複数いる歯科医院であれば、家族の方と同じ歯科医師が担当する方がスムーズだったり、安心感を与えられたりする可能性が考えられます。

紹介者が友人だった場合も、その方のお名前を聞いておくことで、次回の来院時にお礼の言葉をかけることができます。他にも、患者さんと友人の方が鉢合わせない時間にあえて誘導したり、逆に同じ時間で予約をとったりと、歯科医院側にとってもコントロールできる部分が増えます。

歯科診療所は、地域に密接した社会貢献の場所です。このように、患者さんをはじめとした家族や近隣企業の歯科衛生をトータルで支援することは重要です

***

単に問診票に記入されていることを見るだけではなく、そこからさまざまな考えを巡らせ、患者さんを観察することで「書かれてはいないことを推測して感じとる」ことができます。

患者さんについて考え続けることは、私たち歯科医療従事者にとって一生涯の学びです。

医療人としても人間としても、良いコミュニケーションをとるために、ぜひ、多くの視点から問診票を読み進めてみてください。

歯科助手目線でとらえる!患者さんのカウンセリングポイント

vol.1 補綴カウンセリングで確認するべき項目
vol.2 補綴カウンセリングの具体例
vol.3 患者さんからのクレームを回避するコミュニケーション
vol.4 問診票から得る新患対応のヒント