毎年少しずつ内容や点数が改定され、二年に一度、大幅な改定が行われます。
算定項目によっては、算定条件や算定できる期間が細かく決まっているため、完璧に内容を覚えることがむずかしい項目も。
この連載では、算定する機会が多い項目や、複雑な条件が必要な項目について詳しく解説していきます♪
今回は、算定条件や算定方法が複雑な「歯周病安定期治療(SPT)」について紐解いていきます。
前回までの記事はこちら
#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?
#4 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?
#5 歯科衛生実地指導料・歯周病患者画像活用指導料とは?
#6 歯周病検査とは?
#7 口腔細菌定量検査とは?
#8 スケーリング・ルートプレーニングとは?
歯周病安定期治療(SPT)とは?
歯周病安定期治療(SPT)は、歯周組織の状態を維持し、治癒させることを目的としてプラークコントロールやスケーリング、SRP、咬合調整、機械的歯面清掃などを主体とした治療を実施した場合に、月1回算定できる項目です。
具体的には、一連の歯周治療終了後の再評価において、歯周組織の多くの部分は健康ではあるものの、部分的に4mm以上の歯周ポケットを認める患者さんに提供する治療のことを指します。
SPTを開始する時は、歯周病検査を行い、症状が一時的に安定していることを確認した後、検査結果の要点や治療方針について管理計画書を作成する必要があります。
管理計画書の内容は、患者さんやその家族に文書で提供し、文書のコピーをカルテに添付します。その他にも、全身疾患への配慮など療養上必要な管理事項がある場合は、患者さんに説明し、その要点をカルテに忘れず記載しましょう。
SPTを算定するときの注意点
もともとSPTは、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の取得の有無によって、(Ⅰ)と(Ⅱ)に分かれていました。しかし、2022年度から算定方法が大きく変わり、残存歯数によって算定できる点数は、以下のように統一されました。
(参照:2022年度からどう変わる?SPTの算定方法)
歯数/点数 | 歯周病安定期治療(SPT) |
---|---|
1歯以上10歯未満 | 200点 |
10歯以上20歯未満 | 250点 |
20歯以上 | 350点 |
SPT(Ⅱ)は廃止されたものの、か強診においてSPTを開始した場合は、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所加算」として、120点を加算することができます。
また、これまでSPT(Ⅱ)に包括されていた「歯周病検査」「歯周病患者画像活用指導料」については、別で算定できるようになりました。
現在のSPTに包括されている治療内容は、以下の通りです。
- 口腔衛生指導
- スケーリング
- SRP
- 咬合調整
- 機械的歯面清掃
2回目以降の算定については、SPTを算定した月の翌月1日から2ヶ月を経過した日以降、すなわち最低でも2〜3ヶ月あけて行う必要があります。
1月15日→2月1日(翌月1日)から2ヶ月を経過した日以降→4月1日以降
ただし次のような、一連の歯周治療においてSPTの治療間隔の短縮が必要とされる場合や、か強診でSPTを開始した場合は、月1回の算定が認められています。
- 歯周外科手術を実施した場合
- 全身的な疾患の状態により歯周病の病状に大きく影響を与える場合
- 全身的な疾患の状態により歯周外科手術が実施できない場合
- 侵襲性歯周炎の場合
SPTを開始すると算定できない項目とは?
SPT開始後に病状が悪化し、歯周外科手術を実施する場合は、所定点数の100分の50にあたる点数を算定することになります。
これに該当する歯周外科手術は、以下の通りです。
- 歯周ポケット掻爬術:80点→40点
- 新付着手術:160点→80点
- 歯肉切除手術:320点→160点
- 歯肉剥離掻爬手術:630点→315点
- 歯周組織再生誘導手術
● 一次手術(吸収性または非吸収性膜の固定を伴うもの) 840点→420点
● 二次手術(非吸収性膜の除去) 380点→190点 - 歯肉歯槽粘膜形成手術
● 歯肉弁根尖側移動術 :770点→385点
● 歯肉弁歯冠側移動術:770点→385点
● 歯肉弁側方移動術:770点→385点
● 遊離歯肉移植術:770点→385点
● 口腔前庭拡張術:2,820点→1,410点
また、手術を実施した日から、歯周精密検査により再び病状が安定したと判断されるまでの間は、SPTを算定することができません。
さらにSPTから「歯周病重症化予防治療(P重防)」に移行する場合は、SPTを算定した月の翌月から2ヶ月を経過した日以降でなければ、P重防を算定することができません。これは、P重防からSPTに移行する場合も同様です。
***
算定するにあたり、制約が多い「SPT」。
管理計画書の作成を行ったり、2回目以降の算定では期間をあける必要があったり、歯周外科手術を行う場合は、算定できる点数が半分になったりと、複雑なルールがたくさんありましたね。
カルテやレセプトは、普段何気なく目に触れるものですが、その内容まで詳しく理解するには時間が必要です。
私たち歯科医療従事者が普段行っている治療について、“この処置は何点なんだろう?”という疑問をもつことや、“患者さんはこれだけの治療費をかけて通ってくれているんだ。”という実感を得ることは大切だと思います。
ぜひこの連載で、普段算定している診療報酬点数についてマスターしましょう♪
次回は、「歯周病重症化予防治療」についてです。お楽しみに!
参考文献:歯科診療報酬点数表-厚生労働省
診療報酬点数について学ぼう!
#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?
#4 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?
#5 歯科衛生実地指導料・歯周病患者画像活用指導料とは?
#6 歯周病検査とは?
#7 口腔細菌定量検査とは?
#8 スケーリング・ルートプレーニングとは?
#9 歯周病安定期治療(SPT)とは?