診療報酬点数について学ぼう! #12 フッ化物歯面塗布処置とは?

毎年少しずつ内容や点数が改定され、二年に一度、大幅な改定が行われます。

算定項目によっては、算定条件や算定できる期間が細かく決まっているため、完璧に内容を覚えることがむずかしい項目も。

この連載では、算定する機会が多い項目や、複雑な条件が必要な項目について詳しく解説していきます♪

今回は、「フッ化物歯面塗布処置」について紐解いていきます。

前回までの記事はこちら

#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?
#4 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?
#5 歯科衛生実地指導料・歯周病患者画像活用指導料とは?
#6 歯周病検査とは?
#7 口腔細菌定量検査とは?
#8 スケーリング・ルートプレーニングとは?
#9 歯周病安定期治療(SPT)とは?
#10 歯周病重症化予防治療(P重防)とは?
#11 機械的歯面清掃とは?

フッ化物歯面塗布処置

フッ化物歯面塗布処置とは?

フッ化物歯面塗布処置とは、主治の歯科医師または歯科衛生士がフッ化物歯面塗布処置を行った場合に月1回算定できる項目です。

フッ化物の局所応用に使用する薬剤としては、2%フッ化ナトリウム溶液(ネオ®︎バトラーフローデンフォームN®️)または酸性フッ化リン酸溶液(フルオール・ゼリー歯科用2%®️バトラー フローデンフォームA酸性2%®️)が挙げられます。

フッ化物歯面塗布処置は、患者さんの口腔内の状況によって、以下の点数が加算されます。

口腔内の状況 点数
う蝕多発傾向者 110点
初期の根面う蝕に罹患している 110点
エナメル質初期う蝕に罹患している 130点

う蝕多発傾向者とは、歯科疾患管理料に加算できる「フッ化物洗口加算」の対象と同じく、「う蝕に対する歯冠修復終了後においても、う蝕活動性が高く、継続的な指導管理が必要な者」と定義されています。
(参照:診療報酬点数について学ぼう! #3 歯科疾患管理料とは?

年齢と歯冠修復終了歯の本数に応じたう蝕多発傾向者の判定基準は、以下の通りです。

  • 0~4歳:乳歯1歯以上
  • 5~7歳:乳歯2歯以上または永久歯1歯以上
  • 8~11歳 :乳歯2歯以上または永久歯2歯以上
  • 12~15歳:永久歯2歯以上

また、初期の根面う蝕に罹患している患者さんとは、以下のいずれかに該当する方としています。

  • 在宅等で療養を行っている通院困難な患者さん
  • 65歳以上の患者さん

そしてエナメル質初期う蝕とは、「エナメル質に限局した、表面が粗造な白濁等の脱灰病変を有するもの」のことを指します。この患者さんに対するフッ化物歯面塗布処置は、病変部位の口腔内カラー写真の撮影を行う必要があり、撮影した口腔内カラー写真は、カルテに添付または電子媒体に保存して管理します。

2回目以降の算定においては、光学式う蝕検出装置を用いた病変部位の測定結果を、口腔内カラー写真の代わりにしてもよいとのこと。ただしこの場合も、使用した光学式う蝕検出装置の名称と測定結果については、カルテに記載する必要があります。

なお、初期の根面う蝕とエナメル質初期う蝕の両方を認める患者さんについては、どちらかの疾患に対してのみ算定が可能。

すべての患者さんにおいて、2回目以降の算定については、フッ化物歯面塗布処置を算定した月の翌月1日から2ヶ月を経過しなければ算定できないため、注意が必要です。

例:1月15日にフッ化物歯面塗布処置を算定した場合
1月15日→2月1日(翌月1日)から2ヶ月を経過した日以降→4月1日以降

そのため、一度算定すると次の算定までは少なくとも2〜3ヶ月の期間をあけることになります。

どう違う?フッ化物歯面塗布処置と似ている算定項目

フッ化物に関する算定項目として、フッ化物歯面塗布処置以外にも「フッ化物洗口指導加算(40点)」と「エナメル質初期う蝕管理加算(260点)」といった加算があります。

先述した通り、フッ化物歯面塗布処置の対象となる患者さんは、以下の通りです。

  1. う蝕多発傾向者
  2. 初期の根面う蝕に罹患している
  3. エナメル質初期う蝕に罹患している

それに対して、フッ化物洗口指導加算は ① の患者さんのみ、エナメル質初期う蝕管理加算は ③ の患者さんのみに適用されます。また、エナメル質初期う蝕管理加算はかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、か強診)でないと算定できないことも大きな特徴です。

フッ化物洗口指導加算は、フッ化物歯面塗布処置と同時に算定することが可能ですが、エナメル質初期う蝕管理加算は、フッ化物歯面塗布処置・フッ化物洗口指導加算ともに同時に算定することはできません。

そのため、フッ化物歯面塗布処置の対象となる患者さんには、以下のような算定ができると考えられます。

  1. う蝕多発傾向者:フッ化物歯面塗布処置+フッ化物洗口指導加算
  2. 初期の根面う蝕に罹患している:フッ化物歯面塗布処置のみ
  3. エナメル質初期う蝕に罹患している:フッ化物歯面塗布処置またはエナメル質初期う蝕管理加算

少し複雑ではありますが、算定の抜け漏れがないようにしていきたいものです!

フッ化物洗口

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カルテやレセプトは、普段何気なく目に触れるものですが、その内容まで詳しく理解するには時間が必要です。

私たち歯科医療従事者が普段行っている治療について、“この処置は何点なんだろう?”という疑問をもつことや、“患者さんはこれだけの治療費をかけて通ってくれているんだ。”という実感を得ることは大切だと思います。

ぜひこの連載で、普段算定している診療報酬点数についてマスターしましょう♪

参考文献:歯科診療報酬点数表-厚生労働省

診療報酬点数について学ぼう!

#1 診療報酬点数とは?
#2 初診料・再診料とは?
#3 歯科疾患管理料とは?
#4 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料とは?
#5 歯科衛生実地指導料・歯周病患者画像活用指導料とは?
#6 歯周病検査とは?
#7 口腔細菌定量検査とは?
#8 スケーリング・ルートプレーニングとは?
#9 歯周病安定期治療(SPT)とは?
#10 歯周病重症化予防治療(P重防)とは?
#11 機械的歯面清掃とは?

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