歯科衛生士向けおすすめ論文 No.24「染め出しはプラーク除去にどれくらい効果的?」

歯科衛生士のみなさんは、日頃どんな方法で勉強していますか?

歯科衛生士向けの月刊誌や本を読む、講演会やセミナー、学会に参加するなど、さまざまな方法があると思います。その中にはたくさんの「参考文献」が記載されているかと思います。

ところで、その「参考文献」について調べたことはありますか?

「文献」や「論文」と聞くと、むずかしそうなイメージがあると思います。
しかしよく調べてみると、私たち歯科衛生士にとって興味深い資料がたくさんあります。

このシリーズでは、歯科衛生士の方に役立つおすすめの論文を紹介していきます!

歯科衛生士向けおすすめ論文

プラーク除去における染め出しの効果を調べた論文

今回解説するのはこちらの論文です。

専門的なバイオフィルム除去の目安となるプラーク染色剤:無作為化比較臨床試験
『International journal of dental hygiene』

この論文は、イタリアのブレシア大学による研究です。

プロフェッショナルケアにおいて、染色剤を使用する場合と使用しない場合とでは、プラーク除去率にどれくらい差があるかということを調べています。

どんな方法で調べている?

32人の健康な被験者をランダムに以下の2グループに分け、それぞれの施術を受けてもらいました。

  1. 染め出し+超音波スケーリング+歯面研磨
  2. 超音波スケーリング+歯面研磨

その後、再度染め出しを行い、歯面全体と歯頚部、歯冠部の残存プラーク面積を、コンピュータソフトウェア解析によって評価しました。

染め出しした場合のプラーク除去効果は約○倍?!

染め出しありのグループとなしのグループとでは、施術後の残存プラーク面積において、統計学的かつ臨床的な有意差がみられました

部位ごとの残存プラーク面積は、以下の通りです。

部位/染め出し あり なし 減少率
歯頸部 6.1% 12.0% 49.2%
歯冠部 3.5% 9.0% 60.0%以上

よって、染め出しありのグループの方が、約2倍のプラーク除去効果がある結果となりました!

プラーク染色剤

この研究に対する考察

今回の論文では、染め出しを使用すると、約2倍のプラーク除去効果が得られるということが示されました。

これは当然の結果かもしれませんが、他にも注目すべきポイントとして、歯頸部と歯冠部とでは、残存プラークの減少率に10%以上の違いがみられたということが挙げられます。

その理由の一つとして、歯頸部はプラークが残存しやすい部位であるため、術者は染め出しを行っていなくても、注意しながらプラーク除去を行うことが考えられます。

一方で、歯冠部に付着しているプラークについては、視覚的に付着の有無を判断することがむずかしく、とくにスケーリング中の濡れた歯面になると、より困難になることが考えられますよね。

そのため、染め出しの効果が歯頸部よりも歯冠部の方が出やすいのではないかと、私は考えます。

歯冠部に付着したプラークが、直接的に歯周病のリスクを高める可能性は低いかもしれません。

しかし、メインテナンスやPMTCで来院された患者さんの口腔内を、できるだけプラークフリーにすることは、患者さんの爽快感やモチベーションを与える重要なプロフェッショナルケアだと感じます。

今まで染め出しを行っていなかった歯科衛生士の方は、「より良い歯科衛生士業務を行う上で欠かせないアイテム」として、ぜひ日常的に使ってみてください!

***

毎日同じ環境で働いていると、「歯科医院での当たり前」が、自分の中の「歯科衛生士としての当たり前」になっていることがあります。

自分が行っている業務に自信を持つため、客観的な視点で、臨床現場に活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです。

参考文献:Magda M, Eleonora S, Annamaria S, Raffaele A, Stefano C.(2020)「Plaque disclosing agent as a guide for professional biofilm removal: A randomized controlled clinical trial」『 International journal of dental hygiene』2020 Aug;18(3):285-294.

歯科衛生士向けおすすめ論文

No.1「歯ブラシとフロス、どっちから先に使うべき?」
No.2「ストレートVSアングル どっちの歯間ブラシを使うべき?」
No.3「スケーリングで削られてしまうセメント質はどれくらい?」
No.4「スケーリング前に行うブラッシングの効果は?」
No.5「歯磨剤の使用はプラーク除去に本当に効果的なの?」
No.6「プラーク除去に有効な歯ブラシの形状は?」
No.7「う蝕予防に効果がある歯磨剤のフッ化物濃度は?」
No.8「抗うつ薬服用患者はインプラントを喪失しやすい?」
No.9「ホワイトニング歯磨剤の着色に対する効果は?」
No.10「電動歯ブラシと手用歯ブラシどっちが有効?」
No.11「全顎 OR ブロックごと、どっちのSRPが有効?」
No.12「効果的に清掃できる歯間ブラシの新しい形状とは?」
No.13「効果が高いクロルヘキシジン含有洗口剤の濃度とは?」
No.14「新型コロナウイルスと喫煙の関係は?」
No.15「ゴムタイプの歯間ブラシに歯肉炎やプラークを減少させる効果はある?」
No.16「ヨーロッパの歯周病専門医や歯科衛生士が推奨するOHIとは?」
No.17「新型コロナウイルスにクロルヘキシジンやポピドンヨードの洗口は有効?」
No.18「スケーリング後の補綴物にバイオフィルムはつきやすくなる?」
No.19「キシリトールって本当にう蝕予防に効果的?」
No.20「キシリトール製品はガムじゃないと効果がない?」
No.21「アメリカの歯科衛生士が行うインプラントメインテナンスとは?」
No.22「プラスチックキュレットの効果的な使い方とは?」
No.23「PMTCで歯周病予防はできない?!」
No.24「染め出しはプラーク除去にどれくらい効果的?」